バーベキュー
しばらくすると周囲が騒がしくなる。
(……どうしたんだ?)
目を開けてみると人数が増えている。
「……なんでだ?」
「あ、バアル様」
俺の声に反応して近くにいた少女が近づいてくる。
「……たしかセレナ・エレスティナだったな」
図書室で会った、あの少女だな。
「覚えてくれていたんですね」
「ああ」
あの本は面白かったからな。
「それでなんでお前たちがここにいるんだ?」
「それはですね―――」
どうやらセレナたちのテントは俺たちのけっこう近くに張ってあるらしい、で俺たちの班が貴族のみで構成されているのを思い出して、よかったらお裾分け――というなの売名行為―――にということらしい。
「それと、実は友人がこの班にいるので」
ということで遊びにも来ていたらしい。
「にしても意外だな、貴族に友人がいるなんてな」
普通、貴族は平民と友達になどなりたがらない。
「実は少し訳アリな子でして」
話を聞いてみると、その子は貴族ではあるのだが平民の女性が生んだ庶子で少し前までは普通に平民として暮らしていたそうだ。
「なるほどな…………で、なんでこんな状態になっている?」
なぜだがお互いの食材を見せ合っている。
「実は木の実とかは採れたのですが、魚などは……」
「だから物々交換か」
まぁ班の全員に分けると2匹ずつで十分だろう、あとの四匹は木の実や山菜と交換でいいな。
(果物や野菜はこいつらの方が詳しそうだし)
実際、量と種類ではセレナの班の方が豊富だった。
「魚一匹にこんだけ持って行くのか!?」
「当たり前だろ、そっちが手に入らないものを売ってやっているんだ」
「それはこっちだって同じはずです」
……交渉がまとまる気配がない。
「(しかたない)リン、そしてセレナ少し手伝え」
二人を呼び出す。
「どうしましたか、バアル様」
「これの端を持って向こう岸に立っていてくれ、セレナは反対側を持ってこっち側に」
二人に網を持たせると俺は先ほどよりもさらに上流にまで移動する。
「(さすがに数時間ですべての魚が戻ってくるわけじゃないしな、今回は少し強めで)『放電』」
先ほどよりも強めの放電により、多くの魚が浮き上がってきた。
「これで二人の場所まで流れていくだろう」
ということで食料問題を解決したんだが。
「「………」」
なぜだか怒りの表情でこちらを見ている二人。
「……どうした?」
「どうした?ではありません、魚を取ることには賛成ですが」
「ビリって来ましたよ!ビリビリって!!!」
あ~少し電撃が強すぎたのか。
「それは悪かったな、代わりに魚を何匹か譲ってやるからそれで我慢してくれ」
いまだに二人は膨れている。
「それでどれくらい採れた?」
「……見知った魚が30匹ほど」
「そ、なら問題ないだろう」
これなら物々交換でも公平にできるだろう。
それから魚一匹に野菜か果物3個で交換と条件が決まり色々な野菜が手に入った。
それと
「嫌な気配がする、夜は気を付けろ」
「え?」
一応忠告をしておいてもいいだろう。
さて日がいい感じに落ちてきたので飯にしたいのだが。
ハンモックに寝ながら16人を見る。
「……いつまでいるつもりだ?」
目の前で石を積み上げて即席の竈を作り、バーベキューしている。
「あ、起きましたかバアル様」
「セレナ、これは?」
「いえ、寝ている間にお食事の準備を皆さんがなさいまして、それを手伝っていたら自然に」
周りでは貴族平民問わず楽しそうに火を囲んでいる。
(貴族と平民が同じ釜で飯を食うか……)
血統主義の貴族が聞いたら荒れそうだな。
「お目覚めになりましたか」
セレナと会話しているとリンが近づいてくる。
「お食事の用意ができましたが、いりますか?」
「ああ」
「私取ってきますね」
セレナは串焼きの一つを取りに戻った。
「はいどうぞ」
だがリンは片方の手に持っている串を渡してくる。
「お前な~」
「なんですか?」
「持っているなら止めてやってもいいだろうに」
肉の代わりに魚で代用している串焼きにかぶりつく。
「バアル様持ってきまし……た?」
「すでにバアル様の分はご用意してありますよ」
「え?」
「あら、私の串が無くなったわ、代わりにもらえるかしら?」
「あ、はい……どうぞ」
なぜだろう、目の前で火花が散っているように見える。
そんなこんなで楽しい晩餐が終了すると交代で見張りをすることになった。
俺はリンと組み最も遅いタイミングで見張りになることになった。
「バアル君はよくこんな場所で眠れるね」
見張りは二人一組で順番に行うことになっている、ジルはその三番目だ。
「俺らは夜中なんだから眠っておくに限る」
もちろん男女でテントを分けている、こんな場所で不祥事が発覚すればめんどくさいことこの上ないからな。
(さてじゃあもう一つでも動くとするか)




