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エナのユニークスキル

ロザミアと協力関係になった翌日。


『ということで無事に私たちは撤退しているから』

「………みたいだな」


以前ロザミアと話をした山の中腹でクメニギス軍の動向を見ているのだが、急いで陣を撤去し、後退していく様が見て取れる。


「一つ聞くが今回の戦争で捕らえた捕虜はどうしている?」

『ああ、それなんだけどね、撤退の途中に追撃できないように縛ったまま道中に置いていくから拾っといてね』


適当と思うかもしれないが、追撃を避けるという点で言えば十分効果があるだろう。


なにせ捕虜の扱いがいいわけがなく、確実に衰弱している状態になっているはずだ。そんな同胞を見て、レオン達が放っておくはずがない。


「凌辱とかするなよ、そんなことになればさすがに俺でも止められないぞ?」


戦場ではあってもおかしくが、そんな事が発覚しレオン達が激怒してしまえば俺に止めることはできない。


『安心してよ、追撃を止めるための策なのに、怒らせるようなことはするはずないじゃん』

「だといいがな」


末端まで言い聞かせられるのかと思うがひとまずは信じよう。


『大丈夫、元から捕虜は奴隷商に売るためだったからそこら辺の扱いはきちんとしているよ』


売り物に傷をつけてどうするのかとロザミアは言う。


『それで、どう?停戦状況まで持ち込める?』

「後はいくつかの伝手を使えばなんとかな、ただそのためには俺が一度国元に戻る必要があるんだが」


後ろに視線を向けると俺の監視役をしているエナがいる。


「そこはやりようはいくらでもあるさ、それに準備は整ったさ」


これで俺は帰ることができるだろう。


『まぁいいや、戻ってくるときになったら教えてよ』


その言葉を最後にロザミアとの通話が切られる。


「………」

「そう怖い顔をするなよ、エナ」


今はエナに睨まれている状態になっている。


「てめぇ、やりやがったな」

「さぁ~てね」


エナが今にも牙をむき出しそうになっているのには理由がある。


「ふふ」

「グルル」


俺が笑っているのとは正反対にエナは悔しさと怒りがその身を包んでいる。


しばらくするとこちらにやってくるティタとその背に乗っているレオンの姿が見える。


「よっと、それで話ってのはなんだ?」


ティタの背から降りるとレオンが近くに座り込む。


実は事前に話があると呼び出していた。


「いやね、そろそろ俺を解放してもらおうかなと、魔蟲を何とかしたし、人族の軍も引かせただろう?十分契約を履行したと思うがな」

「??オレはやぶさかじゃねぇが、それはエナができないと言っていたが?、???」


レオンがエナの表情を見ると、今までに見たことのない表情に驚いている。


「………バアル何をやった」


ティタもエナの様子を見て半分臨戦状態に移っている。


「なに、言葉の通りだよ、解放してもらおうと思ってさ」


そう言うがエナとティタは警戒を解かない。


「バアル、エナ、俺はそこまで頭がよくない。だからなんでこんなことになっているかを説明してくれ」


レオンの問いかけに笑顔で答えてやる。


「簡単に言えばお前たちの命運は俺の掌の上だ」













まず今回俺が解放される条件だが、魔蟲と人族の軍を何とかすること。そしてその報酬にレオンで言う戦士の身分を与える事、さらには“飛翔石”のとれる地域を縄張りにする協力をエナに取り付けている。


もちろん表面上は穏やかに感じるだろう、だが忘れないでほしい、俺は拉致されてこの場所まで連れてこられたのだ。当然ながら責任は取ってもらう。


だが、ここで問題なのがエナのユニークスキルだ。このスキルの厄介なところが対策がとても取りづらいこと。なにせ行動の先がうっすらと透けるという未来予知に似たような力だ、生半可な策は取りにくい。なにせそれを考えた時点で感づかれる可能性がある。


ではどうすればエナのユニークスキルを掻い潜れるか、それはごく簡単――――




“選択肢を相手側に与えること”。












ではまずエナが俺をにらんでいる理由。それは俺が仕組んだ罠にまんまと嵌ってしまったから。


「エナ、確かにお前のユニークスキルは強力だよ、それこそ賢い奴ほどドツボにはまる」

「お前に言われると嫌味しかねぇよ」


エナの悔しそうなお顔を見れて溜飲が下がる。


「まずクメニギスが退いていった理由は何かわかるか?」

「お前が言う封魔結晶だろう」

「その通り」


クメニギスが退く、詳しい過程をしっているわけではないが、大部分が封魔結晶にあると予想できる。なにせ魔法が使えなくなる結晶などクメニギスからしたら真っ先に対策をしなければいけないからだ。


その次点にバロン達に『獣化解除ビーステッドディスペル』が通用しないなどの理由があるが、こちらは別段問題ではない。なにせ国元で強大な魔物と戦うことと何の違いがない。


「そう、そしてここからが問題だ」


ではクメニギスが退く、これぐらいはまだいい。だが今後はどうなる?


時間がたてば何かしらの対策を立てて再び進行してくるだろう。


「これではただ状況が元に戻っただけ、そう思はないか?」


魔蟲がいないなどの違いはあるが、それの違いは獣人側の人数が増える要因でしかない。


「っち」

「舌打ちどうもありがとう。でだ、クメニギスとの戦争を本格的に終わらせるにはどうする必要がある?」

「お前を国に帰せと言うことだろう」


そう、俺が返れば今持っている手札でクメニギスとの戦争を収束させることができる。


「???ならバアルを返せばいいだけだろう?」

「レオン、そうじゃねぇ」


エナの言う通りだ。


「そう俺が言いたいのは、国元に帰す前さ」


俺がこのまま国元に帰る、それだけで大団円………なんてことはまずありえない。

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