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一番効果のある敵

特大の咆哮が響き渡ると始まるのは今度はこちら側の蹂躙だ。


「ひっ!?やめ」

「がぁあああああ!!」


あるところでは一人の獣人が兵士の顔面を殴りつけるとまるで果物のように破裂していく。


「ひゃあああああ!!!!!!」

「逃がすか!!!!」


またあるところでは背を向けて走り出した兵士に追いつくと、強引に頭を掴みねじ切る。


「この!!、!?」

「っふ」


剣で攻撃してくるが切っ先を掴み動きが止まった瞬間に爪で首を掻き切る。


戦闘が始まるがほぼすべての場所で優勢、いや、こんな言葉では生ぬるい、もはや人族は憐れな獲物でしかなかった。












「効果的だな」


そんな状況を見ながら手の中にある決定な一撃となったものを見る。


「それが、『ふうまけっかい』ってやつ?」

「ああ、そうさ、そしてこの戦争の重要なカギでもある」


今、手に持っているのは“封魔結晶”という結晶。これはノストニアのエルフ誘拐の件で使われていた物だ。


効果は魔法(・・)を封じる結界を周囲に展開する。


「これやられたらつらいだろうな~」


クメニギスは魔法が発達した国だ、『獣化解除ビーステッドディスペル』を使う前でも互角だったのに、魔法を封じられたらどうなるか。眼前の光景が物語っている。


効果としては結晶を起点に半径50メートル内では体外で魔法を発動させないようにするという物だ。それは奇しくも『獣化解除ビーステッドディスペル』と同じ効果範囲で【獣化】が解けた地点、つまりは使えばほぼ確実に杖の持ち主と接近戦に持ち込めるようになっていた。


もちろん【身体強化】や(アーツ)などは何の影響もなく使うことはできる。だが魔法が発達しているクメニギスだ、接近戦を重きを置いている兵士は少ない、これが使われれれば致命的なのは誰が見ても明らか。


あちらはこちらの弱体化だけではなく魔法での攻撃、強化すらもなくなる。それに対して、こちら側は『獣化解除ビーステッドディスペル』を発動させないだけでも均衡を保てるのに、さらに弱体化がクメニギスの軍を襲うことになる。


「さて………急いですべての魔法杖を壊せよ、じゃないと振出しに戻ることになるぜ」


こちら側にも弱点が存在する。それは封魔結晶が少ないことだ。なにせ、これはエルフの誘拐犯から押収した物でしかなく、総数は約100個。今回大奮発で50個を重要な奴らに持たせている。当然ながらこれの量産方法はもちろん、材料すらわかっていない。


当然ながらこれが尽きれば絶対的なアドバンテージはなくなる、それどころか再び『獣化解除ビーステッドディスペル』を使われ、今度こそ敗けるだろう。


(それに時間ネックだ)


もちろん永続性などあるわけもなく、『封魔結界』の制限時間が存在している。


その時間はおよそ45分から1時間。それも個々で効果時間が違うため正確な時間は割り出せない。


(杖を最優先で壊せ、そう指示したが………)


時間内に杖を壊しつくす、これは戦争を勝つためには絶対条件となる。果たしてその結果はどうなるやら。


「ん?」


レオネの耳がピクピクと反応する。


「どうした?」

「一つ杖を破壊したって」

「!!よし!」


予想通り、『封魔結界』が使える範囲に持ち主はいたようだ。


すると再び耳が動く。


「二つ、三つ、四………七まで破壊したって」


レオネの言葉で早速に杖が破壊されていることが確認された。


「よし!!」


このまま順調にいけば、何も問題ない。











「あちゃ~~こんな手を使ってくるなんてね」

「ロザミア殿!呑気にしている場合ではないですぞ!ここは我らも加勢に」

「魔法が使えなくなるあの戦場に?」

「それは………」


私たちは後方にいることで戦況をより詳しく把握している。本来なら戦線で『獣化解除ビーステッドディスペル』を使用するはずなのに獣人には解除された様子はないし、さらには戦線で飛び交う魔法が一切見て取れない。


(やってくれたね)


私たちクメニギスの兵士は基本魔法を中心に鍛えていく。もちろんそうでない部隊も存在しているが大半が魔法を基軸にした戦法を取っている。そしてこの部隊も例外でない。


「身体能力だけで勝負をつける世界か、私たちにはぞっとする世界だね」

「………」


私の話を聞いた者は、肯定はしたくないが否定できる要素もなく、苦い顔をしている。


「では、どういたしますか」

私たち(クメニギス)と相性が悪いなら、そうでない勢力をぶつけるしかないね」


視線の先でせわしそうに動いている伝令が目に入る。


(さて、さて、次はどう出るのかな?バアル君(・・・・)

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