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解き放たれる獣

先ほどの雷で戦争の火蓋が切って落とされた。


「う~~ん、始まったね」

「ロザミア殿、どうしますか?」

「とりあえずこのままだね、この場所じゃどうにもできないさ」


今私たちの部隊が配置されているのはミシェル山脈寄りの後方部隊だ。


魔法が届く距離でもなく、当然ながら剣が当たる距離でもない。ただただ見物のために用意された場所と言い換えてもいい。


「しかし、蛮族は学習しませんね。正面からのぶつかり合いなどもはや意味がないのに」


全ての戦線をカバーできるように『獣化解除ビーステッドディスペル』を仕込んだ魔法杖を持った兵士を配置している。たとえ一か所に攻撃を集中しているとしても、もはや獣人の接近戦など怖くはないと考えている。


現に、この部隊の副長は戦にすらならないと考えている。


「ま、そうなればいいけどね」


あっけなく倒せるならそれでいい。国の国土は広がり、奴隷や資源が手に入る。ほかにもこの地を管理するために新たに貴族なども作る必要が出てくるので需要がさらに増える。


為政者からしたら垂涎の餌だ。


ただ……


(もし彼が洗脳されているのではなく、自身で協力しているとしたらどうだろうか)


リンからの報告では洗脳していると判断したようだが、それすらも演技だったら?リンが虚偽の報告をしていたのなら?


(少し前のスパイの件でもリンが本当はバアルとコンタクトをとれていて、協力したとすれば簡単に説明がつく。それに獣人の行動パターンが変わったのも彼の影響とみるべきだね)


バアルが関与したと考えれば、ここ数日のスパイや罠の件も簡単に想像できる。


(ただ厄介なのが本当にそうだとは言い切れないんだよな)


本人が洗脳されていたと証明するものがない、これでは物的証拠がないためいくらでも言い逃れされてしまう。


「できれば余計な真似はしないでもらいたいんだけど………」


獣人に変な入れ知恵をしてしまっている可能性がかなり高い。


「蛮族にですか?あんな言葉も理解していない連中に回る知恵があるでしょうか?」

「そうだね、彼らだけなら頭が弱いから助かるのだけどね……あっちには私たちの目標がいるから」

「バアル・セラ・ゼブルスですか?ですがわざわざ救出しに来た我々に敵対すると?」

「現にそうなっているそうじゃないか」


そういうと隣にいる副長も顔をしかめる。


「仮に命を握られ脅されるか洗脳されるかして、命令されていると考えましてもどうやって会話を成立させているのですか?」

「そこも謎なんだよね、まぁ彼ならできるんじゃない?」


なにせ齢5歳にして魔道具を作成、少し前には半年という短い期間で多数のスキルについてを解明した。この短期間で獣人の言葉を片言でも話せていても不思議じゃない。


「もしそれができていたとしても、その御仁なら従う振りをして何とかこちらに有利になるように仕向けそうなものですが……」

「そうだね、ただ攫われたなら彼もそうしただろうね。でも、コミュニケーションをとれると考えればほかの考えも見えてこない?」


私の問いに副長は少しだけ考え込む。


「会話ができると考えて……………!?」


どうやら副長も気づいた様子。


「おそらくだけど彼は自分から率先して協力している」

「どちらに転んでもいいようにですか」


頷き肯定を示す。


「私たちとの戦争に協力し、戦いに勝利したら無事に解放してもらう。逆に負けたら何かと理由をつけてこちらに寝返ろうとする」

「ですが、それなら獣人陣営にいるフリをしていればいいだけになってしまいますが?」

「ああ、だからおそらく解放以外にも何かを条件にしているんじゃないかな?命を握られていたり、勝利した報酬を約束させたり、ね」


知り合って少ししか共に過ごしていないが、彼の性格からおそらく正解だと思う。


「まぁ、私たちは戦って勝てばいい話だから問題ないさ」


視線の先では獣人は魔法を耐えて接近してきており、あと少し接近戦に移行する。


「さて、彼はどういう手段をとるんだろうね」










「始めろ!!」

「「「「『獣化解除ビーステッドディスペル』」」」」


接近戦に入ろうとすると指揮官の命令で杖を持っている兵士が『獣化解除ビーステッドディスペル』を発動する。


これにより迫ってきている獣人はうめき声をあげて変身が解けていく。


「……考えすぎたかもな」

「ですな」


私も副長もあっけにとられていると獣人の数人が何かを投げつけてくる。















「序盤は予想通りだな」

「そうなの~?」


獣人は【獣化】の恩恵には耐久力も含まれる。仮に魔法が飛んできたとしても弱い魔法なら気にせず突っ走れるし、やや威力がある魔法でもその属性に耐性がある人物が庇えば影響はほとんどない。


「さて、次は本番だな…………」

「ん」


レオネも何かを感じ取ったのか、少し緊張した様子になる。


(うまく機能してくれよ……)


獣人の最前線がと少しでぶつかる位置にまで近づく。


「あ!」


レオネが見たのは獣人の【獣化】が解けていっている光景だ。


「…………やれ」


聞こえていないはずなのに声を発したタイミングで少し後ろにいた獣人がある物を投げ込む。


投げ込まれた物は人のあいだをすり抜け地面に当たり砕ける。


「ほら吼えろ、お前たちを縛る鎖はなくなったぞ」









ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!

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