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帰る約束

ほんの少し前~


「よし、ここでいいか」


ある程度戦地に近く、ある程度高低差がある場所に陣取る。


「それじゃあレオネ、指示を出してくれ」

「りょうか~い」


レオネは大きく息を吸い込み、そして



ガァアアアアアアアアアアアアア!!!



先ほどのレオン同様、大きな咆哮を上げる。


「っふ~~~~」

「伝わったか?」

「ばっちし」


戦地を見るとレオン達は全員が撤退している。


「よし、予想通り」


当然ながら人族の軍はそれを追撃するために魔法の準備をしている。


「超特大の『雷霆槍(ケラノウス)』」


500MPをも注ぎ込んだ巨大な槍を魔法を使うであろう部隊にぶつける。


雷霆槍(ケラノウス)』は何の障害も受けずにそのまま魔法部隊の中心に刺さる。


(やっぱ油断してやがるんだな)


軍には当然ながら防護ようの魔法が張り巡らせているはずだ、だがそれが使われていない。


(理由は獣人にあるだろうな、接近戦のみで遠距離攻撃がないとすれば、防壁を張る必要すらないからな)


「さて、混乱しているうちに、っよっと」


素早く魔力を籠めて『雷霆槍(ケラノウス)』を連発する。


「すごいね、あいつら足を止めたよ」

「まぁもう遅いがな」


個人ならともかく部隊や軍での防壁となると発動には時間が掛かる。


(それまではなんとか守りに徹するしかないからな)


できるだけ広範囲に『雷霆槍(ケラノウス)』をばら撒き足を止める。


「バアル、なんか来るよ?」

「あ?」


レオネの指さす方向を見てみると人影が一つ、こちらに走ってきている。


(一人で突っ込んでくるか、よほどの実力者なのか、勇敢な馬鹿か)


人影を見つめていると見慣れた緑の羽衣を纏い始めた。


「あ~~まぁそうだよな」


あいつの性格だと率先して戦場に出てくる。


『風の羽衣』を纏った状態で風を操りこちらに向かって跳ぶ。


「あぁぁああああぁぁぁ。ようやく見つけましたバアル様」


リンは感極まり、目じりに涙をためている。


「ちょっ!?」


減速することなく突っ込んできたリンを受け止めるが、衝撃を緩和できずそのまま地に転がる。


「お、おい、リン」

「うっ、うぅぅぅぅぅ」


呼びかけるが返事はなく、ただひたすらに抱き着かれて声を殺して泣いている。


「はぁ、心配かけた」


胸に押し当てられている頭を撫でて謝罪する。


「うっ、ぐすっ、本当に、本当に無事でよかったです」


そういって頭をこすりつけ来る。


(………犬みたいだな)


急用で帰れなかった時の愛犬のような反応だ。


「取り込み中悪いんだけどさ~あれどうする?」


レオネの言葉で視線をそちらに向けるとこちらに向かってくる騎馬隊が見える。


「そんなもの決まっている、レオン達は無事に退けたようだし、俺らも戻るぞ」

「だね」



「何を……言っているのですか」


抱きしめられる腕にさらに力が入る。













「*******、******~*****」

「そんなもの決まっている、レオン達は無事に退けたようだし、俺らも戻るぞ」

「***」


目の前でバアル様が獣人と会話を交わす。


「何を……言っているのですか」


長く隣にいたからわかる、バアル様が戻るといった先は私たちの元にではない。


「あ、そうだ」


思い出したようにバアル様が肩を掴む。


「俺に【浄化】を掛けてくれ」

「わ、わかりました」


すぐさま腕輪に魔力を流し【浄化】を発動させ、白い光がバアル様を包みこむ。


「おし、あとで確認するとして、リンこれを持ってろ」


バアル様が『亜空庫』から一つの魔道具を取り出す。


「何を言っているのですか、私と共に帰ってきてはくださらないのです、か」

「あ~すまんが今は無理だ」


そういうとバアル様は立ち上がる。


「今日の夜、それに連絡を入れる、今日の夜はできるだけ一人いろ、あとこれからは前線に出るな」

「*****!」

「わかっている」


そういうと立ち上がる。


「バアル様!脅されているのですか?!」


そうでなければバアル様が獣人に与するとは考えられない。


「まぁ最初はそうだったんだが…今は自分から手を貸しているよ」

「バアル様…自らですか」


一瞬洗脳の可能性を考えたが、【浄化】を自ら頼んできた、これには洗脳だとは考えにくい。


「バアル様、本当に獣人に手を貸すつもりですか?」

「ああ、理由は今夜話す」

「……わかりました」


眼を見てはっきりとわかった。バアル様は獣人に手を貸すことの先に利益を見出している。ならばそれ以上の益を示さない限りバアル様は方針を変えようとはしない。


「バアル様、どうか、今ここで必ず、戻ってくださると約束をお願い、できますか?」


切なる願いを込めて尋ねる。


「もちろんだ、あそこに帰らなければ仕事がたまる一方だ」


そういうと獣人と一緒に走り去っていく。


「そうですよね……仕事が溜まりますからね………」


空を飛ぶつぶやきには喜色を孕んでいた。

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