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人族との激突

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ


太陽が昇る前、大地が震えるほどの軍勢が東に向かって大移動をしている。


木々は揺れ、土が盛り返され草が抜かれる。


「お前ら!!日が昇る前にはたどり着くぞ!」

「「「「「「「「「「おお!!!」」」」」」」」」」


レオンの号令で移動している獣人の速度は一層早くなる。


(にしてもこうなるとはな)


事の発端は一昨日の男だ。


彼は人族の対処をしている軍の一人だと判明。ではそんな彼がなぜここにいるのか、それはなんでも数日前に人族の軍に動きがあったがゆえだった。


彼の口から語ったのは、人族が大規模攻勢に移行したとのこととその顛末だった。


軍ももちろん対処しようとしたがなぜだか戦線を維持できずに被害が広がるばかりだったとのこと。被害は甚大でこのままではいけないと判断し、軍を一度撤退し救援を要請した。


これにレオンはすぐさま答えて、連れて来られる数を率いて戦地へと赴いている。その数は千と多くはないものの、この事態が伝わるようにしたため随時戦力が集結する手はずとなっている。


ちなみに彼のあの傷はこの情報をレオンの元にいち早く伝えるため危険な魔獣の住処を横切った際に襲われてつけられたとのこと。


(しかし、急に前線が崩壊か……あの地形からしてそうそう押し込まれはしないと思ってんだが)


東西を山脈で限られた空間では一定数以上の軍勢は意味があまりない。なのでその数を考慮に入れても十分持つと判断した勢力が置かれているはず、だった。


(まずい状況だが、最悪の状況には陥ってないか)


これが魔蟲共と決着がついていないときに起こらなくて幸いした。なにせただでさえ戦力を分散しているのにさらに減らす必要が出てきてしまう。だがすでに魔蟲は片付いた、それはほとんどの勢力を人族にぶつけられることを意味する。


そしてもう一つ懸念点がある。


(急に前線が崩壊した、ね…………何かが起こっている、か)


獣人の特性上、耐久力はかなりの高さだと見受けられる、なのにそれを突破、もしくは封じる手立てがあるという物だ。


(なんにせよ急がないと、な)


【身体強化】にさらに魔力を回してより早く走る。


「ねぇ、この数で勝てると思う?」


いつの間にか完全にチーターの姿をしたレオネが並走し聞いてくる。


「正直わからん、どれだけ壊滅しているか、どんな手段でこうなったのか、あとどれくらい、どの期間で後続が来るのか不透明すぎる」

「そっか、でもバアルがいるから平気そうだよね」


そういって笑顔を見せて、信用してくれる。


「光栄だが、少しは危機感持った方がいいぞ」

「大丈夫でしょ、こう、ピリピリって感覚があんましないし」


(ピリピリ…ね)


レオネのスキルには【野生の勘】というものが存在していた。おそらくそこから何かを感じ取っているのだろう。


「ほら、レオネ、バアル、もっと速度上げな」


反対側からは完全にハイエナになったエナに声をかけられる。


ここにいるほとんどの獣人は四足歩行となり移動している。中には移動に適していない人もいるのだが、そういう者は速く力がある物の背中に乗せてもらっている。


「無理ならバアルも乗るかい?」

「いや、やめておくよ」


エナの後ろでは二足歩行のティタがいる。仮にエナに乗っけてもらえばやっかみを受けることになるだろう。


「そうかい、なら走りな!!」


そういってエナはさらに加速していく。


「バアル、バアル、もし疲れたら私の背に乗る?」

「いや、それも遠慮しておくよ」


そんな事態に陥れば怖いお兄さんが黙ってはいないだろう。










それからはただひたすら全力で走っていく。


空が赤らみあと少しで日の光が見えるという頃にはウェルス山脈とミシェル山脈に差し掛かる。


「っ、嫌な臭いだな、こりゃ」

「そうだね~塩と鉄の匂いしかないね~」


山脈の内側に入ってすぐ、まだ戦場の後すら見えていないのに鼻が効く獣人からしたらこの位置ですでに血の匂いが漂ってきていると分かるらしい。


(………あれか)


少し高い位置から見下ろすと暁の光で山が照らされて全貌が見えてくる。









長く分厚い人族の軍が群れを成し山道を進む。そしてそれを止めようと雄たけびを上げて何とか止めようとしている獣人の軍が衝突している。


以前の戦闘からある程度は膠着すると思ったが、予想は外れてあっけなく獣人の戦線は崩され、人族の軍は歩みを進める。


「お前ら行くぞ!!」


ガォァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


レオンの特大な咆哮を聞き全員が声を上げ、坂を駆け降りる。


「バアル、すまんが流れが変わった、命が惜しけりゃオレたちに協力しろ」

「……了解」


事前の話では参戦しなくていいと聞いていたが、エナはそれを破ってまで救援を強制している。


(そこまで悪い状況なんだな)


エナの性格から自分たちで対処できる場合は絶対に声を掛けない、ではその逆ということは絶対に手が足りなくなるということだ。


「ティタ!」

「……本気でいいんだな?」

「ああ、存分にやれ!!」


エナの言葉で全身を大蛇に変え、レオンと同様戦線に加わる。


「で、俺に何をしてほしい」


現在進行形で突っ込んでいるレオン達に加われということなら断るんだが?


「今はそのままでいい、お前はまだ動かないほうがいい、もちろんレオネもだ」

「え~~」


レオネは不満そうな顔をする。


「お前が前線に出てみろ、レオンの気が散るだけだ」

「ちぇ~」


確かにレオネが戦場に出た瞬間レオンがうろたえるのがとって見える。


「エナ」

「なんだ?」

「勝算は?」


嫌な答えになろうともこれは聞いておかなければいけない。


「滅茶苦茶悪い、正直、お前がいなければ全員が死んでいた可能性もある」

「俺が?」


魔蟲に続いて人族との戦闘でも俺が重要なキーになるとエナは予想している。


「特に指示は出さない、自由に動け」

「あいあい」


エナは言うことはもうないとレオンの後を追い、坂を下る。


(さてさて、どうなるかな)


そこら辺の岩に腰掛けて高みの見物をさせてもらう。

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