猛獣使い?
「「「「「「「「「「ガハハハハハハハハッハッ」」」」」」」」」」
バロンと対面したあの場所は酒と焼けた肉の匂いが充満している。大人は片手に木の実で作った盃を持ち、悪酔いしている男は全裸でマッスルポーズをしたり、方や酔いつぶれた連中はまるで死体のようにそこらへんに積まれていた。
「ん?おう!バアルようやく来たか!!」
ルウが盃を掲げて声をかけてくるが、正直この集団の中に入りたくない。
「はぁ~、すまん遅くなった」
本当は加わりたくないが話を進めるためには参加しなければいけない。
「おう、こっちだこっち」
レオンが隣に呼ぶのでそちらに座る。
「どうぞ」
「ありがとう」
お酒を配って回っている女性から盃を貰いお酒を注いでもらう。
「それじゃあ、今回の功労者が来たからもう一度!」
「「「「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」」」」
木が打ち合う心地よい音と、水が跳ねる音が盛大になる。
「それでレオン、国についての話なんだが」
「そういうのは後にしろ!!!」
そういって強制的に木の実を口に入れられる。
(レオン……お前もか)
昼間っから酒をカッ食らっている俺たちはさぞダメ人間に見えるだろう。
「お゛い、男ども昼間っから飲む酒はうまいか?」
ビクッ!!!!!
「そうだな~、まさかあたしらに酒のつまみを取ってこさせて自分たちは宴か~もぐぞ、てめぇら」
ビビクッ!!!!!!!
階段からテトとマシラの声が聞こえてくる。
その声に男どもは反応して、青ざめる。中には又に尻尾を仕舞いガタガタ震える物すらいる。
「さて、バロン」
「な、なんだテト」
威厳を保とうとしているが冷や汗ダクダクなのは誰が見ても明らかだ。
「お~い、テンゴ、何逃げようとしているんだ?」
「か、堪忍してくれ」
マシラはマシラでテンゴを捕まえて怖い笑顔を振りまいている。
「お前ら、あたしらが戻ってくるまでに頭冷やしておけよ」
「そうそう、まだバカ騒ぎしていたら、わ・か・って・い・る・ね?」
二人の威圧にここにいる全員が何度も頷く。
そして同時に二人に連れていかれた生贄に全員が憐みの視線を当てる。当の生贄は助けてと視線で語っているが二人に逆らってまで助けようとするものはついには現れなかった。
再びテトとマシラが戻ってくるまでという短い時間で何とかこの場を整える。散らかった残飯や骨をすぐさま片付け、酔いつぶれている連中を無理やり起こし、無理なら柱の陰にひっそり隠す。
誰が見ても綺麗と感じられるようになると階段を上ってくる足音が聞こえてくる。
音を聞いた連中はさっきの騒ぎぶりでは考えられないほどきれいに整列し、バロンの席までの道を作る。
「おう、きちんと片づけたようだな」
「「「「「「「「「「はい!テトの姉御!!!!」」」」」」」」」」
「………………」
これ、国を作るまでもなかったんじゃないかと思うほど統率が取れている。
「ほれ進みな」
「イエッサー」
テトの言葉でバロンは先頭を歩いていくんだが、腫れでひどくなった顔や体中に見ていて痛くなりそうな痣をしている。それを見れば全員が緊張した空気になった。
「あんたもだよ」
「は、はい」
最後尾にテンゴさんも進むのだが、そちらもバロンとさほど変わらないほど重傷を負っている。
バロンとテンゴが対面に座るとようやく話し合いの場が出来上がった。
ただ、ほんの少し二人に同情した。
「それでバアル、国を作るだったか?」
重苦しい空気の中レオンが切り出す。
「ああ、そのつもりで集まってもらったが(この空気でそれを話せと?)」
独裁者の前で反論する気分なんだが。
「ああ、あたしらはその話を聞くためにみんなを呼んだんだが?」
「そうそう、というか簡潔に話してくれじゃないとうちらはよく理解できないぞ」
テトはバロンの横で、マシラはテンダのアグラの上にいながらそう告げる。
「はぁ、了解。まず国を作らないかと問いかけたのは魔蟲や人族軍に対して有効的だからだ」
「ちょっと待て、国を作ったら何が違う?」
当然ながら疑問の声が上げる。
「そうだな………お前らは獲物が大きければ警戒するだろう?」
「ああ」
「だが逆に小さければ容易と思うだろう」
「ああ、それがどうした?」
「人族から見たら今のお前たちは小さい獲物なんだよ」
そういうと誰もがばつの悪い顔をした。
「ほぅ」
「俺たちが弱いと?」
「お前たちは自分たちが弱いと?」
そういうと否とあらわすように闘気が当てられる。
「仮に弱くないとしてもお前らが最大でも氏族でしかない以上、おれ達人族は小さい獲物と考える」
「そして」と続けると最も伝えたい部分を言う。
「だからお前たちはナメられるんだよ」
この言葉を言い切ると、もはや殴られたと錯覚するほどの圧がこの身を襲う。
「吐いた言葉は飲み込めんぞ」
バロンの言葉に同意という風にほとんどの者が『獣化』し牙をむく。
「は、現状を正しく教えて何が悪い。いかに弱い狼であろうとウサギを見つけたら狩ろうとするだろう?」
「っふ、ふふふ」
「はっはははは」
緊張が走る中二つの女性の笑い声が上がる。
「だからこう言いたいわけか」
「あたしらに実力に見合った姿と成れと」
二人は事の本質を理解してくれたようだ。
「ああ、国としての体裁をとり、おれ達に挑む気を起こさせるな」
これはノストニアがいい例だ。あの国は強さを誇示することにより周囲の国に、恐れを抱かせている。
「それとも、お前らはそれすらもできないのか?」
「「「「「「「「「ああ゛?」」」」」」」」」」
挑発に簡単に乗ってくれる。
『お主、猛獣使いにでもなったのか?』
(………言うな)
なんかこいつらの扱いがわかった自分が少し嫌だ。
「お前ら、ここまで言わせて黙っているつもりか!俺達で国を作って人族をあっと言わせるぞ!」
「「「「「「「おお!!!!」」」」」」」」
レオンが纏めたことで団結を促せた。
「お疲れ」
「……おう」
いつの間にか後ろにいるレオネに労われてどんどん話を詰めていく。




