空飛ぶ者の矜持
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「お前らもう少しだけ耐えろ!!!」
「「「「「「おう!!!!!」」」」」」
俺含めてここにいる全員の背筋に冷たいものが走―いや、もっとわかりやすく言おう。対面したら殺される存在が現れた。
そしてこの気配には覚えがある。
「レオン!どうする?!」
「ルウ…………頼めるか」
「おうよ!任せておけ」
俺は立ち止まり宣言する。
「よく聞け!!気づいていると思うが後方に『王』が現れた!!よって前面の『母体』をルウに任せる!!」
「「「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」」」
「そして『王』を放っておけば甚大な被害が出る!!!朋友を見捨てられないもの!!!我こそはという物は俺の元に集え!!!」
「「「「「おお!!!!!」」」」」
号令を聞き、俺の元に余裕がある連中が集まった。
「では行「待てレオン」」
上からエナの声が聞こえてくる。
「どういうことだエナ!あれを放っておくというのか!!」
「なわけあるかい、レオンが行っても死ぬだけだ!!他もな!」
「じゃあどうする!!」
「当然アレに対処できる奴にやってもらうしかないだろう」
視線の先は当然『王』だ。
「だが、だれがアレを殺せる?」
「もちろん、あいつに決まっているだろう」
ドン!!!
音のなる方を見てみると『王』の頭部で放電が起きている。
「あれは………」
眼に力を入れて何が起きているのかを確認すると続けて黄色い棒が同じ場所に飛んでいく。
飛んできた方向を見てみるとバアルがいた。
「つまりはバアルに相手をさせるということか?」
「ああ、それが一番いい」
エナがそう言うが
「まさかとは思うが、囮のために焚きつけたか?」
すると全員の視線がエナに向く。
状況だけを考えれば十分考えられる。
「確かにバアルに時間を稼いでもらっていればオレ達は『母体』に集中できるな」
「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
声が聞こえる範囲にいる奴らはエナに敵意を向ける。
それもそうだろう、すでにバアルは俺たちの仲間なのだ、そんな仲間を売るような真似絶対に許すことはない。
「けど見くびるな、犠牲を出すなら絶対に納得してもらう、それがオレの流儀だ」
エナは今まで一度でも犠牲を強要したことはない、仮に必要な時はあくまで本人が納得して犠牲になっている。そのことはエナに近しい人物しか知らない。そして犠牲を出した元凶にはどんな手段を持ってしても敵討ちを行う、それこそ闇討ち、毒殺、俺たちの中で忌み嫌われている事を依然とだ。
そのことを知らない人物からしたら嫌悪する対象となり、『腐肉喰らい』と呼ばれている。
当然ながらここにいる中でエナのこの言葉が本当かを知る人物は数名だろう。
「だからレオンお前は『母体』に集中しろ」
「エナ、お前はどうするつもりだ?」
「もちろん、オレの隊の奴らでバアルを援護するさ、ハースト!」
「了解だ!」
エナはその後、咆哮を上げてヨク氏族を連れて『王』に向かっていく。
「だとよ、どうするレオン」
ルウがそう言うがこうなればやることは一つ。
「お前らさっさと片付けて『王』に向かうぞ!!」
部下と共に咆哮を挙げて、より苛烈に攻め込む。
(エナが良いと言っているから大丈夫だと思うが、死ぬなよ)
小さき友の無事を祈り、より前へと進む。
「『雷霆槍』」
特大の『雷霆槍』を大岩窟殺戮百足の眼に向けて発射する。
(たく、時間が必要なのかよ)
イピリアの話では最低でも10分、確実に仕留めるなら30分は欲しいとのこと。
(となればとれる手段は一つ、ひたすら翻弄して時間を稼ぐ、だな)
ということでまずは気を引くために頭部に聞きもしない攻撃を当てている。
すると
「おっ」
大岩窟殺戮百足の頭部がこちらを向き始めた。さすがに眼に向かっての攻撃は鬱陶しかったのだろう。
「(俺も動かないとな)『飛雷身』」
頭部がこちらを向いて事をいいことにその頭上に移動する。
「さて、気を逸らすために少しは嫌がらせをしないとな『怒リノ鉄槌』」
ジュウウウウ!
「やっぱり甲殻が分厚すぎる」
『怒リノ鉄槌』で削れることは削れるが、鱗が厚過ぎる、おそらく鱗を貫くまで5回は最低でも必要になる。しかも一点を貫くだけでだ。
なので
(狙うのは薄い場所)
飛び降りると同時に横切る眼を潰す。
キシュウアアアアアア!!!!!!!
さすがに痛かったのか体を大きく揺らす。
(あ~やっぱレオン達に担当してもらわなくてよかったな)
落下しながら地面を見ると暴れている衝撃で地面付近は大変なことになっている。
何本もの樹が物ともしなく倒されて石の上に体が乗るとその石は粉々になっている。
(動くだけで戦略兵器になっちまうんだからな……レオン達に任せていたらどうなっていたことやら)
たとえ今あるすべての戦力をぶつけたとしても10分ほどしか持たないと思う。
なにせ倒れこむだけで強烈な一撃となるのだ、ほかにも軍のなかをだたひたすらに蠢くだけで甚大な被害になるだろう。
「掴まれ!!」
「は?!」
急に声がするので振り向くとファルコが迫ってきている。
「そのままじゃ落下するぞ!!」
ファルコは腕を強引につかみ、再び空に上がる。
「おい!馬鹿!これじゃあいい的だぞ!」
「うるさい!舌噛むぞ!!」
すると案の定『王』の視線が飛んでいるファルコ、正確にはぶら下げている俺だが。
「やっぱ、お前か」
ファルコも俺が標的になっていることが分かっているんだろう。
「馬鹿か!あんなことをして」
「ああ、でもしなけりゃ俺を標的にもならないだろう」
「わざとかよ!!」
「だから俺を掴んでいると危険だぞ、ほら」
「ああ?、!!??」
大岩窟殺戮百足は鎌首を不自然に動かす。
「ほら、放さないと死ぬぞ」
「っ、仕方ない。少し乱暴にするぞ!!」
「は?ぐっ!?」
ファルコは俺を空に放り投げる。
ビュ~~~
(やば!?)
風を切りながら落下していく。
先ほどまで大岩窟殺戮百足は体をすくめて力を溜めていた。その姿勢から考えるに一直線に突撃してくる気だろう、それもさっきよりも何倍もの速さで。
(ファルコ!!放り投げるなら体勢を考えやがれ!!)
今は背中から落ちて行っている形で、不安定である。
何とか体をねじり、地面が見えるようにするのだが。
ブン!!
シュ!!!!
(あ、これ死んだな)
先程まで精々200メートルはあった距離を一瞬にして詰められる。
それも視界には逃げられる隙間はなく、口の中すらも丸見えだ。
(『真龍化』で何とか牙と胃酸をやり過ごせるか?………その前に窒息死だなこりゃ、けど試してみ)
ヒュン
「がっ!?」
そして『真龍化』を発動させようろすると強引な力で真下に引き寄せられる。
「ぐっ!?」
今度は急上昇していく感覚が五感を襲う。
そして一度浮遊感を感じた後、何やらもさもさしたものが顔に当たる。
「おい!さっさと立ち上がれ!」
「この声はファルコか?」
すぐさまもさもさした何かから顔を話して周囲を見る。
「……これって」
立ち上がり今乗っている者の正体を確かめる。
「ファルコ……であっているんだよな?」
「当たり前だ」
今立っているのは鳶色の羽毛の背中の上だ。左右を向けば翼があり、片翼で人の背ほどある。
「もう一度聞くがファルコなんだよな?」
「だから!そうだと言ってんだろう!!」
ファルコは起こるが何度も聞き返したくなるさ、なにせ完全に鳥の姿を取っているのだから。
「それにしても危なかったな、俺じゃなければ今頃お前は丸のみだったぞ」
どうやら俺が喰われる寸前でファルコが助けに入ってくれたらしい。
「しかし、よく間に合ったな」
「あ?ああ、確かにあいつは速いが俺ほどじゃねぇよ」
――――――――――
Name:ファルコ
Race:真鳥人
Lv:58
状態:普通・獣化[全]
HP:295/425
MP:551/651
STR:31[+74]
VIT:20[+38]
DEX:58[+78]
AGI:135[+130]
INT:29[+48]
《スキル》
【斬翼:82】【鉤爪:17】【隠密:7】【空強襲:54】【飛翔:154】【身体強化:38】【滑空:127】【風読み:88】【空の眼:113】【夜目:77】【思考加速:27】【視野拡張:49】【風耐性:37】【雷纏:―】
《種族スキル》
【鳥化[天風隼]】
《ユニークスキル》
――――――――――
一応、モノクルを取り出してファルコを鑑定する。
(なるほど、鳥ならではのスピード特化か)
ステータス、スキル構成を見るに速さに一芸を持つタイプだ。
「それでどうする、勝算はあるのか?」
「俺がレオン達を見逃せるように殿になると思うか?」
怒らせるような真似をしなければいけないことを伝える。
「具体的には?」
「いろいろと説明は省く、とりあえず時間が必要だ」
「どれくらい」
「最低でも10分、確実に『王』を仕留めるなら30分は欲しい」
「それは長いな………」
もしこの『獣化』が『身体強化』と同じなら使っているだけで魔力を消費しているはずだ。
「ファルコ、30分持つか?」
「無理だ、せいぜいが十数分が限度だな、さらに本気で飛ぶとなると数分が限度だ」
それじゃああまりにも短すぎる。
「けどそれは俺だけがやった場合だ、だから」
ピヒャアーーーーーーーー!!
鳥特有の甲高い声が響き渡る。
「おい!」
こんな大声上げたら
シュルシュルシュルシュル
当然、アレの興味を買うことになる。
「俺の羽は頑丈だからな、しっかりつかまっていろよ」
「おい、だから話を、ぐっ」
俺の話を聞こうとせずに急降下する。
突風の中、何とか眼を開けて何が起こっているのかを確認すると、真後ろに大岩窟殺戮百足が迫っていた。
けど
「そんなんじゃ俺には追い付けねぇよ」
すぐさま翼を切り返し、大岩窟殺戮百足の突撃を避ける。
そして今度は体の下に隠れるように飛んでいく。
「いいかよく聞け!、俺は今から――――――」
ファルコが話してくれたのは時間稼ぎの作戦だった。




