暴走した奴らの止め方を教えてくれ
※この度再投稿することにいたしました。もしこの作品のブックマーク、評価してくださっている皆様はもしよろしければ再投稿先でもお願いいたします。
変更点などはあらすじに記載しておりますので、参照ください。
再投稿先はこちらのURLとなります。
https://ncode.syosetu.com/n5978gw/
「あれか?」
「そうだ」
岩場から全軍移動し奥の森に向かっているのだが、少し高い場所から見下ろすと、黒い何かが渦を巻いている様に見える場所がある。
「さて、作戦だが」
「いらん、標的さえわかれば後は俺たちがやる、行くぞお前ら!!!!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
レオンが咆哮を上げるとほかの全員が咆哮を上げる。
(はぁ~これだから…………ん?何あれ?)
思わず額に手を当てて空を仰ぎたくなるのだが、獣人全員が何かしらのオーラみたいなものを
「全軍突撃!!!!」
「は!?おいまてごら、お」
ドドドドドドドドドドド
止める暇もなくすべての獣人が黒い塊に突っ走っていく。
「゛~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!」
思わず言ってはいけない言葉を羅列しそうになる。
「それで、我々はどうする?」
「そうそう、オレの部隊は交戦には向かない、ティタの部隊は戦えはするが数が少なすぎる」
ハーストのヨク氏族戦士団500人、エナの探索に特化した部隊100人、ティタの毒を扱う部隊50人が素直に指示に従ってくれる。
「はいは~い、私もいるよ!!」
あとレオネ一人追加。
(けど、どうするよ、これ)
レオンたちは本能が赴くまま敵に突貫していった。
「仮にだ、仮にだ!!あいつらが罠を用意してやがったらどうすんだよ!!!!!」
「おぉお!!」
今すぐ突撃していっているレオンに向かって『雷霆槍』をぶち込みたくなった。
「おい、バアル」
「んだよエナ、あいつらが作戦とかを必要としない時点で俺はいらないだろう」
岩場に腰掛けると『亜空庫』から焼き鳥を取り出す。
「あ、私にもちょ~だい!」
「ん」
レオネにも分けてやる。
「おい、バアル」
「なんだよエナ」
この状況でやれることなんてほぼないようなものだぞ。
「とりあえず、お前も行くんだ」
「なんでだ?」
「そうしないとレオンたちが危険な目に合う」
エナは真剣な目でそう告げる。
「もっと詳しく話せ、そうでなければ」
でなければ、その言葉は信じない。
「はぁ~了解だ」
そう言うとエネは目の前に座り込む。
「オレの鼻が特別なのはお前もわかっているだろう」
「ある程度はな」
どう特別なのか詳細は知らないが。
「俺の鼻は四つの匂いをかぎ分ける、まず一つは―――」
それからの説明ではエナのユニークスキルで嗅ぎ分けられるのは死の匂い、生の匂い、利の匂い、損の匂いの四つの匂いだ。
そして効果は字の通りで、自身と組するものが死にそうな時、生き残る確率があるとき、自身の利益になるとき、損しそうになる時に匂いがするという物。
「正直、オレも詳しくはわからん、だが先程までレオン達には死の匂いはなかった」
「その匂いがし始めた、か?」
「ああ、理由はおそらく」
エナの視線は真正面から俺を見る。
「俺ね………信憑性は?」
「エナ姉ぇの鼻ならテス氏族の皆認めているよ~」
ということですでにある程度は裏付けされていることになる。
「一つ聞く、今はどんな匂いになっている?」
仮に話を信じるならエナは今どんな匂いになっているのだろう。
「バアル、お前からは生と利の匂いがする。レオン達だが離れていくほどにどんどん死の匂いがしてくる」
「一つ聞く、なんで俺が行けばレオンたちが助かると思っているんだ?」
普通に考えればレオンの元に行けばオレも危険になるはずだ。
「匂いはすべて同じではない、ある死の匂いには似たような生の匂いがある」
「それで?」
「死の匂いに似たような生の匂いをぶつけることで死の匂いから生の匂いに代わる」
「その生の匂いが俺なのか?」
エナはうなづく。
「はぁ~(まだまだ分からないだらけの力だが、契約上俺は獣人に与する方が得策に変わりがない、そしてこの場面で対多数の戦力を失うとなれば)行くしかないか」
「よし、決まりだ。で、どう動く」
「少し待て」
『亜空庫』からいざという時に作っておいたとある魔道具を取り出す。
「これを耳につけろ」
「これをか?」
取り出したのはイヤリング型無線機だ。
「まず、これの使い方だが―――」
ここにいる全員に軽くレクチャーする。
そして全員が準備し終わるとそれぞれに指示を出、動く準備を整える。
「おい、囲まれちまったぞ!どうする!」
「そんなもん突破するだけだ!」
「だな!」
若い獣人三人が軍の離れた場所で孤立してしまった。
周囲には百足と蜂が50匹ほどうごめいている。
「っは!お前ら何匹殺せる?俺は40匹はいけるな」
「はぁ?つよがんなよ、せいぜいが10匹だろ俺なら30匹は行けるね」
「お前がか?無理だろ」
「んだと、やってみなけりゃわからんだろ!!」
三人で背を向けあい鼓舞するが空元気なのは第三者視点で見れば一目瞭然だ。
「じゃあ、競争するぞ!」
「おう!」
「死ぬんじゃねぇぞ!」
三人はわかっていた、絶対に誰かが死ぬ事になると。だがそれでも彼らはそれがほかの誰かのためになるならと死の恐怖を振り払い魔蟲に攻撃を仕掛けようとする。
その時
ガァアアアア!!
三人に向かって吠える声が聞こえる。
そして
「もう少しだけ耐えきってください、そうすれば助かります!!」
頭上から声が聞こえる。上を向くとヨク氏族の戦士につかまっている人物がいる。
「お前は?」
「私はエナ様の部隊の一人です、援軍を要請しましたのでもう少しだけ耐えてください!!」
声が震えているのが三人にはわかった。もちろんそれは魔蟲を恐れての物だとも知っている。けど少女は恐怖心を何とか抑えて三人が生き延びる選択肢を与えた、それだけでも三人には希望だった。
「ありがとうよ嬢ちゃん」
「でも、戦闘ができないんだろう?なら下がってな」
「そうそう、こういうのは俺たちに任せな!!」
そう言うと三人は息の合った動きでお互いを庇いあい、何とか助けが来るまで耐えきれた。
「はぁ、はぁ、嬢ちゃんありがとうよ」
「この恩は忘れないぜ」
「そうそう、もしピンチになったら俺たちが駆けつけるから」
三人はそう言いお礼を言う。
「いえ、私は戦いが得意じゃないのです。なのでこうして皆さんの手伝いをさせてもらっているだけですから」
そう言うと耳についている装飾品を触る。
「バアル様?こちら救助終わりました。……はい、わかりました、それでは私は行きます。ハクトお願いします」
「任されたエウラ」
すぐそばで待機していたヨク氏族の戦士、ハクトに声をかけて再び空に舞い上がる。
「……いいな」
「だな」
「今度、探して求婚でもしてみるか」
三人は恋慕の情を抱くが、助けてくれた少女エウラはこの後ハクトと恋仲になってしまい、失恋することになる。




