罠を食い破る?いや、避けろよ
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「おい!『母体』が見つかったのは本当か!!」
最後にルウがいつもの会議室に入ってくる。
「遅い、が、とりあえず座れ」
有無を言わさず椅子に座らせる。
「まず知らせが来たのは昼前だ、いろいろ未確認だが重要そうだから、全員呼び集めた」
会議室の中にはレオン、エナ、ティタ、ルウ、アシラ、ノイラ、エルプス、それとヨク氏族のハーストが席についている。
「まず、敵の居場所だが、岩場や湿地、キクカ湖の向こう側にある森の真ん中だ」
簡素に作った地図を広げて大体の位置を教える。
「敵の詳細だが、まだ母体とは確定していない」
「してないのに儂たちを集めたのか?」
となると当然不満の声が上がる。
「あくまで確定してないだけで可能性は高い。聞いた話によると百足の群れと蜂の群れが森の中心に移動、そして群れには卵を背負った百足の『母体』と蜂の『母体』らしき存在を発見したんだ」
「卵を持っている時点で『母体』じゃないのか?」
「確定はできない、産卵するところを見れたらそれこそ確定するんだがな……『母体』に偽装しているただの魔蟲という可能性も否定できない」
「あの蟲共にそんな知能があるのか?」
「ないと思いたいんだがな、群れを率いている時点である程度の思考はできるはずだろう?」
そう言うとみんなが納得してくれる。
「それで、どうする?総攻撃を仕掛けるか?」
ルウはそう言うが、それは悪手だ。
「無理だ、ルウ、それは絶対にしない方がいい」
「はっ、いつもの危険な匂いか?」
「ああ、しかもとびっきりな」
「っそうかよ」
そう言うとルウは遺恨なく引き下がる。
「じゃあどうするってんだ?」
「さぁな、まぁこの中でそれを考えられる頭があるのは」
全員がこちらを向く。
「っがっわかったよやりゃいいんだろうやりゃ」
この脳金共は素直に従ってはくれるが頭脳能動をしてはくれない、いや正確にはできないのだがな。
「まずはこの情報の精査だ、ハースト腕利きだけを集めてこの場所に急行、ルウとエナの部隊もだ、ルウの方は実力者をエナはより探知が得意な者と逃げ足が速いものを厳選してくれ、その後を岩場を通ってから森に急げ」
「「「はいよ」」」
「ほかのやつらは暇な奴を集めて岩場の奥に散らせろ、最悪すぐさま戦闘になってもいいようにだ!!」
「「「「「了解」」」」」
「ほら!さっさと動くぞ!!」
それぞれ動ける手勢をそろえてからすぐに岩場のある地点に集結させる。
もちろんグファ氏族の空にするわけにはいかないので怪我人はもちろん、戦士3000人ほどは残しておくことにした。
「おい、ノイラとエルプス以外は終結したぞ」
岩場には動きの襲いノイラ、エルプス以外の部隊の集結が終わった。
「よし、それじゃあさっき言ったようにエナの部隊からは探知が得意な奴と逃げ足が速いやつを30名ほど厳選してくれ」
「あいよ、ルウの方はすでに腕利き200を選別し終えているいつでも動けるぞ」
「動くのは少し待て、今、ハーストを呼んで」
バサバサバサ
「すまない遅れた」
「いや、いいタイミングだ」
ちょうどいいタイミングでハーストが戻ってきてくれた。
「いいか、これから行うのは空と地上からの同時偵察だ。そしてその際にはどうしても武力の衝突が起こる」
「だろうな」
もちろんそのことはエナもハーストも承知だろう。
「そしてその際に必ず出てくるのが蜂と百足の魔蟲だ」
「わかっている………ああ、だからハーストと同時に偵察か」
エナは気づいたようだ。
「まず軍全体をいきなり動かすにはリスクがでかすぎる、だから急遽偵察班を出して状況の確認をする手はずだ、だがここで問題なのが偵察班ではいくら精鋭を集めたとしてもそこまで武力を持たせられないということだ」
なにせ大勢で偵察なんてそれこそただの攻撃と変わらない、姿をとらえられればすぐさま迎撃に来るだろう。
また少数精鋭なら地上からの魔蟲だけならまだ逃げ延びる可能性がある。だが空からの追撃が加わるなら生還は絶望的と考えていいだろう。そこでハースト達だ。
「なるほど私の部隊を使い、空の勢力には我々の部隊をぶつけて地表は地表でというわけか」
「ああ、もちろんハースト達にも偵察はお願いするつもり、だけど」
「空という隠れる場所がない状態で偵察ができると?しかも既に魔蟲は集結していると聞いているが?」
ハーストの言う通りだ、すでに拠点を構えているであろう場所に空からの偵察なんてほとんど意味が無い。
「役割としては私の部隊が空の勢力をひきつけ動けなくする、その間にエナが『母体』について調査する、これがバアルの案か?」
「ああ、役割が分かったら早々に動いてくれ、時間は有限だ」
それからは迅速に軍を動かす。
まず予定通りルウとエナの部隊の偵察班を作り送り出すと、その後は効率が良いように班を作っていく。
(仮に『母体』を中心に強固な砦のような築きをしているなら――――――)
その後は知らせが来るまで頭を捻り続ける。
「伝令!!でんれーーーい!!」
地図とにらみ合いをしているとヨク氏族の一人が、飛んでくる。
「何の報告だ?」
「はい!!森の奥の『母体』についてであります!ハースト様、およびエナ様のお言葉では両方とも『母体』に間違いないそうです」
「………ほかには何か報告はあるか?」
『母体』の確認の報告はありがたいが、それ以外の報告も欲しい。具体的に言えば魔蟲共の動きだ。
「そう言えばエナ様が一言、すこし数が少ない気がすると」
「数が少ない?」
地図を見返す。
(仮に何かしらの戦力を出すなら俺ならどうする)
魔蟲側に立って考える。
(魔蟲の生態はわからないが通常、ここで少数の勢力を出すなら斥候と考えるのが普通だ。けどそれなあ相手は何を知りたい?それともそう言った意図はなくただ餌を確保するための戦力なのか?)
生態についてはほとんど知らない状態なので正確な予測などできない。
(気のせいって可能性もあるからな…………となると少しの損失を覚悟して作戦を組み立てる必要が出てくるか。それに『王』の存在が気がかりだな)
いくら考えても気になる部分が出てくる。
「それともう一つ、魔蟲は我々を追い払うことはしても追ってきたりはしてこなかったそうです」
「追い払うことはしても、か、了解だ、エナ達に戻るように伝えてくれ」
「わかりました」
ヨク氏族の若者にそう指示を出すと同時にエナ達が戻ってくるのを待つ。
「よし全員集まったな」
周囲にはいつものメンバーがいる。
「それで、バアル、どうなんだ?『母体』だったのか?」
「結論を急ぐな、ルウ、それも全部話してやる」
とりあえずメモを取り出しながら説明する。
「まずヨク氏族が見つけてくれた二体だが『母体』でほぼ間違いない、そうだなエナ?」
「ああ、オレの眼でも確認したが間違いなくあれは『母体』だった」
エナの言葉を聞くとこの場にいる全員が納得する。
「では決まりだな、出立の準備をするぞ」
「待てよレオン、それだけなら伝言だけで済んだ話だ。バアルがここに呼んだのには理由があるだろう?」
「その通りだ」
うなずいてやると立ち上がったレオンが再び座り込む。
「まず気になった点が二つある、一つは偵察班が少し規模が少ないということ、二つ目は魔蟲が防御に力を入れていることだ、報告では魔蟲は追い払うような行動はしても追ってくるような行動はしていないと聞いた」
「バアル、俺達はあまり頭がよくない、だから簡潔に言ってくれ」
アシラに全員がうなづく。
「はぁ~了解、一言でいえば魔蟲共は何かを待っている、もしくは罠を張っている可能性があるってことだ」
「あいつらにそんな知能があるとは思えないんだがな」
「知能がないんなら、何で偵察班を追いかけない?普通のやつなら獲物を見たら追いかけるだろう?」
たしかに、という声が上がる。
「で、何が言いたい?仮に罠があったとしても食い破るだけだ」
(………そういうと思ったよ)
ノイラの言葉に全員がうなづくのを見て改めて思う、獣人はまっすぐなのだ、それも病気的なほどに。
「(姑息な手を使わない、信条を曲げない、約束は守るってか……扱いやすいっちゃ扱いやすいんだがな)じゃあ一つだけ約束しろ、合図が出たらすぐさま撤退しろ」
「我らがその約束を受け入れると?」
「はぁ~じゃあせめて最大限警戒しろ、これでいいか?」
「まぁよかろう」
これだけは約束させた。




