カビの生えた掟
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(お、いた)
レオン達を探すとヨク氏族とみんなの宴会場の中間あたりにいた。
(しかし、珍しい、組み合わせだな)
ハーストとレオンは何かを話し合っているのは何度か見た事があるのだが、今回はエナとティタそれとアシラとルウが一緒にいる。
「にしてもお前と焚火を囲むなんて何年ぶりだ」
「「「????」」」
近づいて話の内容が聞こえてきた。
「ああ、あれから7年たっているんだからな」
「だな、そん時はオレ含めて全員ガキだったからな」
「……そうだね」
「おい、俺はそん時からちゃんとしてたろうが」
「「「「ルウが?ないない」」」」
「……なんなら一番危なっかしかったぞ」
この光景に違和感を覚える。この数日でレオン、エナ、ティタ、アシラ、ルウは全員が親友と言っていい間柄だ、けどハーストはその中に混じっている、それも違和感もなくだ。
「あ、思い出した」
「何が~?」
「いや、アシラが小さいころに友達ができたと言ってきたことがあったんだ」
「それがハーストか?でもそれおかしくないか?」
天の者、地の者でなれ合いが禁じられているのに友達だなんてな。
「ああ、だから名前を聞いてもどこの氏族かも聞いても答えなかったさ、納得がいったよ」
「あんたはいいのか?自分の息子が掟破りをしているなんて?」
するとマシラは予測していた反応と違った。
「掟?ああ、あのカビが生えた、変な掟か、そんなもんあたしらに伝わってはいるがうのみにしている奴は限りなくゼロに近いよ」
「………はぁ?」
飲み込むのに時間がかかった。
「どういうことだヨク氏族の奴らはこの掟を重んじてたんだぞ?」
「そりゃな、あいつらからしたら北にも行けないし、何とか生きるにもわざわざあの山から往復しないといけないからな、簡単に言うと嫉妬とやっかみだよ」
「え~~」
その後の話だと、鳥系の獣人は飛ぶために『飛翔石』が必ず必要になることからあの地を離れることはできないので、縄張りは山の近場をいくつか抑えているだけで実際は氏族すべてが貧乏な状態だという。
その点地の者、つまりはレオン達だが生きるために特段必要なものはなく自由に暮らせるし、縄張りも作り放題だ。
まぁ簡潔に言うと『自分たちはいろいろ苦労しているのにあいつらは楽しやがって許さん!!!』という感じらしい。
「だからあたしらは天の者、まぁヨク氏族には何の思い入れもないし恨み言もないのさ」
「けど、あちらは違うってか……………………はぁ~」
ため息つきたくなる。
けど種族的にあの土地から離れられないんじゃ無理もない。
「お~い、お兄ぃ」
「ん?レオネかそれと……バアルもいるのか」
最近レオンの態度は悪い、ちなみに原因はこいつだ。
「げ!?母さん!?」
「久しぶりだね、わが息子、にしてもなんでそんないやそうな顔をしているんだい?」
「い、いや、そんなことはないぞ」
「そうかい?じゃあ後で腕がなまってないか少し模擬戦しようじゃないか」
アシラの方はうなだれている。
「なぁあれはどうしたんだ?」
「……マシラさんの教育はとてつもないことで有名だ……それ以上は察しろ」
遠い目をするティタにそれ以上は聞けなかった。
「なにせアルバンナでの二大女傑がテトさんとマシラさんだからな」
「ああ、オレも何度かテトさんに手習いしたが血を吐けるだけまだ優しい方だぞ」
「だな、俺もマシラさんの修練を受けたが、本気の修練をすると、全身骨折なんてざらにあったからな」
エナとレオンがしみじみと言う。
(なんかやけに物騒な言葉が聞こえて来たな、というか血を吐けるだけってそれ以上だとどんな目に合うんだよ………)
「お前がハーストか?」
「ああ、アシラのご母堂よ」
マシラはハーストを視線で探り、ハーストは緊張している。
(レオンやアシラからどんな人物か聞いているなら緊張もするか)
「うちの息子は不甲斐ないがよろしく頼むよ」
「こちらこそ、実力者とは仲良くしておきたい」
そう言って二人は握手する。
「まぁ穏便でよかったよ」
「本当にな……はぁ~」
そのことはありがたいがアシラからすれば連れてきたせいで訓練が必要になってしまった。
「そう言えば地図の方はどうなっている?」
「ああ、それはな」
アシラが使用しているテーブルに地図を広げて説明する。
「現状はキクカ湖、湿地帯、岩場の役8割ほど埋まっている、そしておそらく明日にはこの二割も埋まる」
ヨク氏族の空からの探索と座標としての役割、地表はルウとエナの部隊による広範囲の探索により、精密にかつ高速に範囲を広げることができていた。
「そしてこの三つの地域を抜けた先が森となり、その奥に砂漠だな。まぁ軽く見持っても大体1週間ほどで全地域の探索が終わる」
「「「「なるほどな」」」」
「……………」
(お前らそんな簡単に俺の言葉にうなずくなよ………)
俺はいろいろあってここにいるわけだが裏切らないとは限らない、なのにレオンたちはそんなことを考えるそぶりもなく信じてしまう。
「はぁ~、言っとくがこれは順調にいったらだからな?」
「もちろん分かっているさ、けどここまで動きがないと逆に不気味だな」
アシラの言う通りなんか不気味だ。もちろん知能がそこまで発展していないなら納得できるんだが、軍を率いている時点である程度は知能は持っていると思うのだが。
「まぁできることを続けるだけだな」
「その通りだ、ほれ、お前も飲め」
「ああ、いただくよ」
アシラからもらった酒を受け取り飲み干す。
「あ~あたしのお酒は受け取らなかったのに!」
約一名が何かわめいているが気にせずに宴を続けていく。
吉報があったのは宴から五日経ったときだった。
「それは本当か?」
「ああ、あれは間違いなく残り二体の母体だった!!」
ヨク氏族の一人から森の中心に向かう、他とは違う大きな百足と大きな蜂を見たという。
「卵の存在は?」
「もちろんあった!百足は背中に大量の白い卵が見えたし、蜂に関しては周囲の奴らが卵を運んでいるのが見えた!!」
百足の方は『母体』で間違いないだろう。だが蜂に関しては確証としては少しだけ弱い。
だが
「この機を逃すわけにはいかないか………済まんがハーストかファルコを呼んできてくれ」
「わかった!!」
「レオネはだれか中核を担っている奴を呼んできてくれ」
「りょうか~~い」
ヨク氏族の若者はすぐさま飛び立ち、レオネはレオンの家に向かう。
その間に先程の若者から来た情報を整理する。
(まず蜂の『母体』だが、配下に卵と巣の欠片を持たせて大移動している。百足の方も多くの供回りを率いて蜂の『母体』と合流するように移動している、か………『王』の指示か、それとも探索が広がっているのが解って不味い事態になる前に移動したのか……)
両母体もともに少しだけ西に後退するように移動している。
(これだけを考えれば逃げているという様子になるが、なんか引っかかる)
別に今動く必要はないはずだ、何より魔蟲にとって最悪なのはすべての『母体』を討伐されることのはずだ。なにせ唯一の繁殖方法がなくなれば、あとは残った個体を討伐すれば俺たちの勝利なのだから。
(警戒はしておくべきか)
杞憂で終わればいいのだが、作戦を考える役割としては何重に安全策を張り巡らせたい。
(だが、後手に回りすぎるのも悪手だ、さて、どう配置したもんか………)
頭の中でどう攻めるかのシミュレートを軽く行う。




