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効率的な探索はいいんだが………

「で、なんでこんなもたもたしているんだよ?」


リュクディゼムにあった二日後、即席で作ったテーブルの向かいでルウが不満げな顔をしている。


「いつまで、俺たちはちまちまと雑魚共を潰さなければいけないんだよ」

「仕方ないだろう、残りの『母体』と『王』の姿がないんだから」


現在はヨク氏族の戦士500人、それと探索が得意なエナの部隊とそれに準ずるルウの部隊により奥の部分に探索してもらっている。


「たっくよ、おかげでみんな不満がたまっているぞ」

「……衝突はあるか?」


ヨク氏族はレオンたちとは基本的に折り合いが悪い、今はハーストとエナ、レオン、それと主だった連中が何とか抑えているがいつ内部争いが始まるかわからない状態だ。


「それはないさ、まぁにらみ合いは何度かあったようだがな」

「それだけなら問題ないんだがな………」


こうして心配している理由はレオンとハーストにある。








「おい、地の者、お前らが足手まといじゃないのか?」

「はっ、今まで傍観していた臆病者に魔蟲と渡り合えるのか?」


レッツ!ファイト!!カーーーン!!!


となったわけだ。







「はぁ、あの時はどうなるもんかとひやひやしたぞ」

「ははは、お前もまだまだ俺らの流儀を分かってないな」


どうやらハーストとレオンはただ相手の実力を確かめたかっただけだそうだ。


ちなみにある程度戦ったら両方とも止まってくれた。





バサバサバサ


「おい、バアル、今日の探索組は終了したぞ」

「ファルコか、お疲れさん」


テーブルの上にある料理をどかして地図を広げる。


「場所は?」

「F15からG5まで空からの偵察は終了した」


このF15やG5はヨク氏族の協力の元作った簡易地図の場所割だ。


まず、グファ氏族のすぐ横からAとして上から1から20まで割り当てる。


これを量産して探索班にはそれぞれ担当する部分の地域をくまなく探してもらっている。


「まず『母体』『王』の個体は見当たらず。出現する魔蟲はやっぱり主に百足と蜂、ごくまれに蜻蛉と蠍は見つけたが、100匹に1匹の割合だ」

「わかったありがとう」


地図に報告を書きこむ。


大体、砂漠までの半分を埋めることはできた、けど


(レオン達に聞いた話だと『王』は地中から出て来たって話だからな、これが信用できない可能性もあるからな……けど『母体』はそうとも限らない)


百足は地中に生息しているし、蜂は種類によっては土の中に巣を作る。だが普通の個体でもかなりの大きさだ、『母体』ともなればさらに大きいはず。


(なら、その分見やすくはなるはず。何も見つけられずにただただ増殖していくのは必ず阻止しなければいけない)


「御苦労、ファルコ、では交代して今出ている部隊は休ませろ」

「了解だ」


ファルコは何も言わずに飛び立っていく。


「意外だな」

「そうだな、ヨク氏族の連中は案外おとなしくしてやがる」


ヨク氏族がこの地に来るとレオンが素早くヨク氏族でも使いやすい家を建てたり、効率よく食料がいきわたるようにしていた。


「……………まぁいいか」


もめ事が起こらないならそれに越したことはない。


「ルウ様!!」

「あ~あ~休憩も終わりか~バアル、早く『王』と『母体』の場所を割り当ててくれよ」


ルウはそう言いながら手をひらひらと振り、探索班と後退していった。


「俺もさっさとことを片付けて帰りたいよ」


俺がいなくなったことをグロウス王国の連中が聞いたら……そこまで変わらんか。


クメニギスに留学している時点で国元に俺がいないのだからな。


(ただ、俺が死んだと勘違いしていろいろ動きとかはありそうだな)


留学したのと死んだのとではいろいろと差が出る。


「バアルくん、報告が」

「こっちもだ」

「あたしもよ」


そんな考え事をしているとどんどん報告に来ることになる。


(まぁすんなりということ聞いてくれるのはありがたい、ありがたいんだが………一つだけ、一つだけ言わせてくれ)







「なんで獣人には頭脳労働できる奴がいねぇんだよ!!!!」


結局何百人もの報告を一人で受ける羽目になった。











「お~い大丈夫か~い」

「……ああ」


レオネに声を掛けられると空が赤くなっていることに気づいた。


「そろそろ宴の時間だよ~バアルの分なくなるよ~」

「はぁ~残しておけって伝えてくれ」

「ダメだって~おじいちゃんみたいにずっと椅子に座っていると腰悪くするよ~」


そう言うと強引に腕を引っ張り立たせる。


「おい」

「ほらいこ~今回は私がバアルを酔い潰してあげるからさ~」

「少し待て、道具ぐらい仕舞わせろ」


すぐさま作成した地図やペンを仕舞う。


「それじゃあしゅっぱ~つ」

「わかったから」


レオネに背中を押されて宴会場まで移動する。









「ほれのめ~」

「だから自分で」

「今回はバアルを酔わせるのだ~のめ~」


前回とは逆にレオネが酌してくれるようなのだが、目的が酔い潰すためと聞いて誰が素直に飲むか。


(しかし……)


「ああ!!足踏みやがってそれで誤っているつもりか、あ゛あ?」

「ごめんつったろ、なんだ喧嘩売ってんのか、なら買うぞ、こいや」

「んだと、この!!」


些細なことでつかみ合いに発展して喧嘩になる。幸いそれはヨク氏族とではなく、地の者、つまりはレオンの同胞同士でだから問題もそこまでではない。


(だけど、解決策は必要だよな)


現状、今取っている案が最善策だ、目的もなく全軍で走り回り余計な体力を消耗するのは悪手でもある。


だがその反面不満がたまりやすい。ストレスといってもいい。時間が経てば劣勢になる焦燥感、自身が動けない味気悪さなどがたまっている。


(唯一救いなのが地の者、レオンの軍内でのいさかいだからいいがこれがヨク氏族に飛び火したら笑えない)


なにせ現時点で探索に大きく貢献しているのは後から加わった彼らなのだ。


そんな彼らがそっぽを向いた日にはさらに時間が掛かることになる。


(時間が掛かることだけは避けなければいけない、さて、どうするか)


悩んでいると後ろから影が差す。


「なんか困っている様だな、坊や」

「っと、マシラか、ようやく到着したんだな」


背中をたたいた正体はエブ氏族の護衛でいなくなったマシラだ。


「お久しぶりです、おばさ「レオネ?」マシラお姉さま!!」


おばさんと呼ぼうとした瞬間に聞こえたマシラの声でレオネは青い顔になる。


「それと坊や、あたしがいない間にいろいろと起こったようじゃないか」

「まあな、で、どこまで把握している?」

「まぁ二体の『母体』を仕留めて、なぜだがヨク氏族が協力してくれているってことだけだな、ほかにもあるなら聞くよ」

「いや、大まかにいえばそれだけだな」


細かく言えばキクカ湖を壊したことや、『王』の個体についても少しだけ分かったぐらいだ。


「ちなみにヨク氏族の代表は誰だ?」

「ハーストだな」


一応はヨク氏族の戦士長だから合っているはず。


「ハースト……ハースト………どこかで聞いたような」

「ヨク氏族の戦士長だからある程度有名じゃないのか?」

「いや、たとえ戦士長でもヨク氏族のことはよくわからん」


ならその線での話ではないのか。


「まぁいいや、とりあえずそのハーストに挨拶したい、案内してくれ」

「了解、レオネ?」


案内を快諾するとレオネの頬が膨れている。


「そうむくれるなレオネ、すぐ返してやるから」

「ぶぅ~~バアルは私が見つけた獲物なのに」


ということで二人を連れてレオンの元に向かう。

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