古き知り合い
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「あれが『雷閃峰』だ」
翌朝、俺たちは朝食を済ますとハーストとファルコに手伝ってもらい『雷閃峰』に運んでもらっている。
「しかし、本当に雲に覆われているんだな」
目の前に見える山は中腹からてっぺんにかけて分厚い雲で覆われている。
「ああ、しかもあの雲に触ろうとすれば電撃を食らう羽目になる。だからあの山は歩いて行かないと不可能だ」
ということで雲の影響が出ない山の中腹で降ろしてもらう。
「わっは~~空が見えないね~」
「ああ、下手に近づけば落雷で翼がやられる」
遅れてレオネとファルコが到着する。
「あ~こりゃやばいね~」
レオネを見てみると髪が静電気を帯びておりツンツンになっている。
「じゃあ行ってくるが」
「お~い~」
「ああ、明日の同じ時間に来ようと思うんだが」
「いや、そこまで時間はかけないさ」
「何言ってんだ?俺やハーストさんでも歩いて2日3日掛かったんだ、お前はそれよりも早く生えってこれるのかよ」
「ああ、そうだなまた昼頃来てくれ」
「お前な!」
ファルコは馬鹿にされていると思っているみたいだがこれは純然たる事実だ。
「じゃあ私はこの辺で昼寝しているよ~」
そう言うとレオネは収まりがいい場所を探して横になる。
「なんだ信じてくれるのか?」
「もっちろ~ん」
疑いもせずにレオネが同意する。
「まぁいいや、じゃあ一度帰るなりしていいが昼には迎えに来てくれよ『飛雷身』」
山を覆っている雲に飛ぶ。
(それでイピリア、お前の古い友人というのは?)
現在は雲の中を『飛雷身』で移動している。
『目的地は同じじゃ、用があるのはその実が成る樹木じゃ』
(樹木が知り合い?)
あ、いや、ウルの例を見れば植物に意思があってもおかしくはないか。
(それにしても……)
山が雲により覆われていることにより山の形が理解できた。
(山頂には窪みがって、その場所には森と池のようなところがあるのか)
とても小さい森が山の頂上に存在している。
「ここでいいんだよな?」
窪みの縁に降り立つと、眼前の森を見据える。
と言っても雲、というか霧が発生しているのでほどほどにしか見えないのだが。
『ああ、まぁ奴は動かないからゆっくり行くとしよう、ほれこっちじゃ』
イピリアは少し先を飛び、先導してくれる。
「にしても変な場所だよな」
常に霧のようなものが立ち込めていて日光を浴びている様子はないのに背が高い樹木が存在している。
通常、背が高い樹というのは日光を得るために高くなる。だが逆に日光がいらない樹木はそこまで高くない、なにせ隙間からの日光だけでも十分なのだから。
(それ以前に山の頂上付近には樹なんて生えないはずなんだがな)
高山植物は、背丈も草同様ほどのはずなのだが。
「ま、そこは異世界ということでいいか」
不思議な事象は気になるが、魔蟲の問題もあるのでとりあえずはスルーする。
しばらく歩くと霧の奥から水が見える。最初は大きな水たまりとも思ったが、奥に進めば進むほど広がっていき池や湖の類だと分かる。
「それでここからどこに行くんだ?」
『こっちじゃな』
水際まで進むと、どちらかに進めばいいかイピリアが示してくれる。
『あと少しじゃ』
池の縁を回るように進んでいくと、霧の中に大きな影が見える。
「これって……」
『そうじゃ、こやつじゃ』
大きな影に向かって歩くとやがて大きな樹が見えてくる。
「これがか」
『馬鹿!!触るな!!』
バチン
触ろうとするとはじかれるように電撃が走る。
「っつ!?」
この地に来てからユニークスキルを発動している状態なのに、雷で痛みが走る。
(いままで電撃で痛みなんて感じたことがないのに)
このユニークスキルの耐性すら貫ける存在ということだ。
『言わんこっちゃない、その腕痺れているじゃろ?』
「……ああ」
右腕に力が入らないし、ジンジンと響いている。
『まぁ無理もない、この雷はあの方のだからな』
「……おい、イピリア」
イピリアは問いかけを無視して樹に近づく。
『起きろ、リュクディゼム』
イピリアの声に答えるように樹皮に黄色い亀裂が入る。
『イピリアか?にしては存在感が小さくない?』
女性らしき声が聞こえてくる。
『なんだ寝てたのか?墓守の役割はどうした?』
『ちゃんとやっているよ、にしても君のその姿は何だ?そこまで弱くなっているなんて竜からヤモリにでもなったの?』
『うっさいわ、こっちにもいろいろあるんじゃ』
『はっはっはっ、その姿だと怖くもないよ。それに私の一撃でくたばるんじゃない?』
『なんだと、私の後の生まれたくせして』
『確かに生まれた時から少し前までは私の方が弱かったけど、今の状態で勝てると思うの?』
『おうさ』
するとイピリアと樹木の間に雷電が走る。
『これだけ?』
『もちろん、これだけじゃないさ、なにせこいつが儂の宿主だからな』
2つの視線?がこちらに向くのがわかる。
『???普通の人族の子…………ぶっ!?おい、イピリア!!こいつって!!』
『ああ』
対立する空気は霧散し、イピリアはどうだという態度をとり、樹木は死んだ者を見たような雰囲気になる。
『どうだ、やるか?こいつの本気ならお前に勝ち目はないぞ?』
おいおいおい、さっき触れただけでも攻撃を受けた、しかも意識がない状態でだ。
意識が覚醒している状態で戦闘になったら勝ち目なんてない。
『アレが使えるなら勝ち目はないわね』
『おうよ、使えることも確認したからな、謝るのは今のうちだぞい』
『そうね…君、イピリアとの契約なんか破棄して私と組まない』
『おい!!』
(…………どういうことだ?)
だが打って変わって樹は戦いを避けるような言動をとる。
実力で考えるなら俺なんてリュクディゼムと呼ばれたこの樹に勝てるとは思えない。
「おい、イピリア、用件が済んだら、さっさと実を取って帰りたいんだが」
『おや、君の言う実とはこれのことか?』
樹木の枝が不自然に動き、金色の実をつけた枝が目の前に降ろされる。
「おそらくだが」
事前に金色の実だとは聞いていたから、これだと思うのだが………
『でも、君がこれを食べても意味が無いよ?』
「そうなのか?」
ハーストに聞いた話だと雷に耐性ができるのと帯電する能力が備わる。
『ええ、むしろ私と繋がってしまうからね』
「詳しく説明してくれないか?」
『リュクディゼムの実は確かに雷の耐性と力が少しだけ身に付く、ただデメリットでこいつに五感がフィードバックされることになるぞ』
つまりは感じた事すべてがリュクディゼムに筒向けになってしまう。
『そうそう、それに雷の力を暴走させて殺すこともできるから、生殺与奪も私が握ることになるからね』
「食う気がしなくなった」
当然だろう、誰が好んで命を差し出すというんだ。
リュクディゼムとヨク氏族は共存関係が出来上がっていることによりこの実をを食している。だが、俺みたいのが食べるには利点が少なすぎる。
『まぁ食うフリでもしてればいいだろう、さてリュクディゼム、何か変わったことはないか?』
『ないね、いつも通り平和な日常だよ』
『それはよかった』
イピリアの口ぶりからしたら、この場所が無事で安心しているように感じる。
『それでイピリア、ここに来たのはこれだけ?』
『なわけないじゃろ、あの方の鱗を一枚もらいに来たんじゃ』
『あ~なるほどね』
二人の間は納得している様子だが、俺には分からない。
『下手に触らないでよ』
『わかっているわい、あそこで下手に動いたら儂でも消滅するわい』
『ならいいわ』
そう言うと何かが動く音がする。
『ほれ、こっちじゃ』
イピリアが樹に沿うように移動すると大きな洞が見つかった。
『ほらこっちじゃこっちじゃ、あっ、ちなみに入るときは【真龍化】を発動した状態でいなければいけんぞ』
「いや、それじゃあ長期間は無理だぞ?」
なにせ一秒で10MPだ、フルで稼働させても約10分が限界だ。
『問題ない、というかまだ気づいていないのか……………』
呆れた声が聞こえてくる。
『ほれいくぞ』
「おい、説明してくれないのか」
『中で説明してやるわい』
そう言うとイピリアは先んじて中に入る。




