思ったよりも確執がありそうだ
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「わっは~~すごいね~~~」
レオネは初めてヨク氏族の里を見て興奮している。
(土台に石を使って、屋根の部分には藁を使っているのか)
いくら空を飛べるといっても大量の木材を運ぶのは一苦労なのだろう、その点藁であれば軽いのでそこまでの労力を必要としない。
「それじゃあ、早速案内を」
「族長!!なんで地の者を連れてきているのですか!!」
ハーストが早速山に案内しようとすると一人の若者がやってくる。
「ファルコか、別に地の者を連れてきたわけではない、本命はこの人族の子、バアルだ」
「同じことです!!地の者といる時点で掟破りではないのですか!!!」
どうやらファルコという、獣人は真面目な性格らしく、掟破りだと主張している。
「別にそのものは地の者に属しているわけではない、あくまでそこの小娘は監視だ、そうだろう?」
「え~ちが、グムっ」
「その通りだ、俺はお前らで言う地の者に属してはいない」
監視じゃないと言おうとしたレオネの手を塞ぎ、ハーストの考えに乗る。
「ですが、いくら長とはいえ、部外者を引き入れるなど」
「それについては後程話す、ひとまずは空いている家をこの二人に貸してやってくれ」
「…わかりました」
ファルコは思うところがあるのか、こちらを少しにらみながら、飛び去っていく。
「それでは早速試練といいたいが、そのまえに里の重要な奴らには話を通す必要がある、ついてきてくれ」
ハーストは部下に誰かを呼んでくるように命令すると、他よりも大きな建物に案内される。
「待って居ったぞハースト、そして人族の子、地の者」
大きな建物の名兄はしわがれ声の老人が数人座っていた。
「さて、話を聞かせてもらおうか、ハースト」
「ええ、そのために長老方をを呼び集めた」
中に入るとハーストの隣に座り、話し合いが始まる。
「それでハーストよ、地の者から慰謝料として何をぶんどった?」
「なにせ湖一つが消えたんだ、それなりの土地をもらわんと割が合わん」
「そうだな、どうだろう、グファ氏族の保有地をいくつか献上させよう」
「そうしよう、そうしよう」
老人たちは目の色変えてどの土地をもらおうか話し合っている。
「どうだハースト、何ならグファ氏族の土地すべてをもらおうと思うのだが」
「いい加減にしろ!!!」
暢気に賠償の話をしている老人たちにハーストは激怒する。
「今回の魔蟲の襲撃はいつも通りとは思うな!!!」
「…どういうことだ」
一番年老いている人物の問いにハーストは答えていく。
今回の魔蟲の襲撃と共に人族の軍が攻めてきたこと、また魔蟲の規模が通常の数倍あったこと。
それゆえに戦力を割かれてうまく魔蟲に対処ができなくなり、どんどん劣勢になっていったことをすべて話す。
「…………」
「これ以上、放っていけばいずれ地の者達は負ける、そうなれば縄張り云々なんて言ってられない、我々も対処するべきだ」
「おい、ハースト、掟を忘れたのか?」
やたらと切り傷がある老人が問いかける。
「もちろん覚えている、だが言い換えれば掟に反してなければ我々も対処するということだろう?」
「「「「おい」」」」
全員から突っ込まれるのも無理はないだろう。
「具体的にはどうするつもりだ?」
「このバアルに雷閃峰に挑んでもらう」
ハーストがそう告げると全員の表情が引き締まる。
「空の加護を与えるのか?」
「ああ、氏族にいれるとまではいかないが、戦友として迎え入れれば問題ないだろう」
「そして戦友が戦っているから手を貸すと?」
「ああ、別に地の者と共闘しようとしているのではない、別に地の者と共闘するわけではない。戦友が危険になっているから助けるだけだ」
戦友となった俺が戦っているならば助ける、そこに地の者、レオンたちが居たとしても共闘したわけではないと言い張る。
この考えを聞き長老たちは考え込む。
「人族の子、名は?」
「バアルだ」
「ではバアル、お主からしたら地の者は勝つと思うか?」
すると全員の自然がこちらに向く。
「どんな手段を使ってもいいなら、という条件なら、な」
キクカ湖のような状態になってもいいならと遠回しに伝える。
「そうか………皆者もどう思う?」
最年長を中心に話し合いを始める。
「聞いてもいいのか?」
重要な話なら部外者はでしゃばらない方がいい。
「問題ない、なにせここから帰るには我々が運ぶ必要があるのだからな」
ということで俺たちを残したまま話し合いが始まる。
それからは地の者を見捨てる意見、傍観する意見、ハーストに賛同する意見にいっそ地の者とは別に魔蟲に攻撃を仕掛ける意見と分かれる。
「まず地の者を見捨てる選択肢はない、何故なら平地には我々の狩場もあるのだ、そこで狩りができないとなれば飢えるのは我々だ」
「弱るのを待つのも悪手だ、なにせ弱ればキクカ湖のようなことを起こす可能性がある、これも狩場が減る要因になる」
「あとはハーストの考えと地の者を無視して魔蟲に攻撃を仕掛けることだな」
「我々だけで魔蟲と戦うのは無理だ、なにせ数が少なすぎる」
「そうだな、地の者は様々な氏族が一丸となって戦っているから対抗できているわけだ。我々の氏族の数では到底足りん」
「いっそ、逃げるのはどうだ?」
「どこへ?北に行こうにも女子供を置いて行くわけにもいかんだろう」
ここまでくれば、考えはある程度絞れる。
「ハースト、非常に癪だがお主の考えに乗ろうと思う」
一つの氏族としての選択としては正しい。
なにせヨク氏族だけでは魔蟲に対抗できないし、逃げることも雷閃峰により北側には限られた人物しか逃げられない。
傍観したとしても、レオンたちが負ければ下手すれば次は自分たち、良くても狩場がすべて魔蟲に占領されることになる。
また、キクカ湖と同じ状況がいくつも出来上がる可能性があり、狩場が減るのも許容できない。
となればハーストの案を飲み、早々に魔蟲を討伐すれば丸く収まる。
「ではバアルよ、明朝すぐに『雷閃峰』に向かってくれ」
ハーストの思惑通りに事が進む。
「ここを使ってくれ」
話し合いが終了したのだが、どうやら空き家が無いらしくハーストの家にお邪魔することになった。
「へぇ~さすが戦士長のいえ、他よりも立派だな」
ハーストの家は他よりも一回り大きく、頑丈そうだった。
「まぁな、それでは飯にしようと思うが、肉でいいか?」
「大好物~」
「問題ない」
そう言うとハーストは藁を掴む。
バチバチバチ、ボッ
ハーストの手から火花が飛び散ると藁に火が付く。
「おい、今のは……」
「ああ、これは空の加護の力だ」
いや、今の力には見覚えがある。
「空の加護を受けたものは自由に稲妻を放つことができるようになるのさ」
ハーストはそう言いながら調理場に火を移すと網の上で肉を焼き始める。
「さて、できたぞ」
「わ~い!!」
用意されたテーブルに湯気が出ている肉料理が出される。
「うま~~」
レオネは肉を鷲掴みにし頬張る。
(とりあえず俺も食うか)
レオネのように骨付き肉を掴み頬張る。
「そう言えば、一つ気になることがあるんだが」
「ん?なんだ?」
「知り合いにエナって獣人がいるんだが」
「っぐ、んぐ」
なぜだかエナの名前を出したらハーストはむせ始めた。
「知ってます?」
「あ、ああ、まぁ、有名だしな」
エナは獣人の中ではある程度悪名が響いているのでハーストが知っていてもおかしくない。
「実はヨク氏族の中にエナに腕輪を上げた存在がいるようなんだが」
「ぶっ、そ、そんな奴がいるのか?」
(……………いや、どう考えてもお前じゃん)
反応で自白しているようなものだ。
「まぁここで誰かは置いておこう」
俺が聞きたいのは誰がじゃない。
「お前たち、ヨク氏族はどれほど飛翔石を採っている?」
「???飛翔石なら雷閃峰にごろごろと落ちているぞ」
「……まじか」
秘蔵の採掘場があるとかじゃなくてよかった。
「ちなみにヨク氏族はどれくらいの量を何に使用している?」
「???また変なことを聞くな?少し待っててくれ」
ハーストは家の奥に入るとすぐに戻ってくる。
「腕輪?」
ハーストが持ってきたのは一つの腕輪とこぶし大の歪な緑色の石、やたらと鈍色の硬そうな石の三つだ。
「まず、我々がこれを使うのは主に二通りだ」
そう言うと飛翔石であろう緑色の石を鈍色の石で削る。
「一つはこのように削り飲みやすいサイズにした後」
ハーストは飛翔石を飲み込む。
「は!?」




