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空を飛ぶ者

※この度再投稿することにいたしました。もしこの作品のブックマーク、評価してくださっている皆様はもしよろしければ再投稿先でもお願いいたします。


変更点などはあらすじに記載しておりますので、参照ください。


再投稿先はこちらのURLとなります。

https://ncode.syosetu.com/n5978gw/

「それであの惨状はどういうことだ、地の者共!!」


朝起きると翼を生やした人の軍勢が空を覆っていた。


「あれは?」

「……あれはヨク氏族の戦士たちだな」


服装はどことなくレオンたちと似通っている。


そしてよく観察すると翼が生えているのではなく腕が翼になっている。


「あそこはわれらの湖だぞ、なのになぜあのようになっているのだ?」


声色から激怒しているのが容易にわかる。


「で、どうすんだレオン?」

「どうもこうもしない」


この数日で血色の良くなったレオンが前に出る。


「弁明などしない!!あれは魔蟲を屠るために必要だった!!」

「あれほどの破壊を伴ってか!!」

「そうだ!!」


すると一人だけ地面に降りてきた。


「詳しく話を聞かせてもらおうか」













いつもの会議場で話し合いをすることになった。


「ではそこの人族の子供がアレをやったということだな?」


鷲の獣人、名をハーストというらしくヨク氏族の族長らしい。


猛禽類の鋭い眼光、腕に生えている羽はまるで精巧にできている鉄のようにも見える。地上に降りたと言ってもレオン達に張り合えるほどの貫禄。だれがどこを見ても長に近い立場の存在だと思うはずだ。


「まず、今回の蟲共には俺たちも手を焼いているんだ」


魔蟲の進行と同時に人族の軍勢も攻め入ってきていることを説明する。


「なるほど、だが、あの破壊の規模はやりすぎだ」

「そうは言ってもな、現状だと何してでも相手の戦力を削がなければ負けるのはこちらだぞ、お前らもそれは望まないだろう?」

「当たり前だ」


ハースト達も魔蟲を忌々しく思っているようなのだが。




隣にいるエナに耳打ちする。


「なぁ、なんでヨク氏族は戦いに加わっていないんだ?」


蟲が忌々しいなら手を組んでも何も問題ないはずなのにそうしてない。これには少々違和感がある。


(それに空からの捜索ができるなら楽に見つけるはずだ)


「ん?ああ、それはな」


事情を知っていそうなエナに聞いてみる。


「まずヨク氏族や鳥の姿をしている奴らはウルブント山脈に里がある。そしてそのほとんどがウルブント山脈の向こう側を主な活動地にしているんだ」


つまりはこっちの事情なんて知ったことではないということらしく、基本的に放置しているようだ。


「そしてヨク氏族は例外的に山の南側に里を築いていてな」


それがキクカ湖のちょうど北側にあるらしい。


「それで、本題の戦闘に加わらない理由は?」

「ああ、それは」

「簡単だ、地の者と空の者の掟で争いはできるが、手を取り合うことはしてはならないとある」


エナの代わりにハースト自身が答えてくれる。


(???また変な掟だな)


そうは思っても表情には出さない。古くからの風習は時代と共に変な拘束力を持ってしまうためむやみやたらと触れないほうがいい。


「一応確認だが参戦してくれはしないのか?」

「ああ、我らに害が及ぼうとも地の者とは手を取らん」


思わずため息が出そうになった。


だが空からの捜索を行える鳥の獣人の存在はぜひ欲しい。


そして少しだけ考える。


「じゃあ人族(ヒューマン)である俺とは手を取ってくれるか?」


獣人同士でのやり取りが無理でも、人族のバアルとしてではどうだ?


「……条件を満たしたら認めよう」

「条件とは?」


条件さえクリアすれば、新たに戦力が加わるという。ならば受けない手はない。


「地の者とは相いれないが空に認められたものならこちらとしても友として認めよう」

「すまんもう少し具体的に」

「ウルブント山脈の一角には常に雷雲が取り巻いている場所がある。そしてその山頂にはなにやら不思議な樹木がそびえたっており、その実は空の加護を与えてくれるらしいのだ」

「で、その実を取ってくればいいと?」

「いかにも、ついでに言えばその実を我々の前で食せば何ら問題ない」


この試練と言える行為を行うと、俺のことを友として認めてくれるという。


そしてその友が助けを求めてくれば手を貸すのは当然という詭弁が経つ。


「おし、レオン少しの間留守にするぞ」

「了解だ、だが、数名をお前の監視として付けるぞ」

「ああ、頼む」


監視をつけるのはレオン側からすれば当然、では誰を付けるのかという話に入ろうとするのだが


ビシュ!!


「はいは~い、私が護衛やるよ~」


窓から何かが入ってくる。


そして


「…重い」

「ありゃ、ごめんね」


急に後ろから圧し掛かられると女性の声が聞こえてくる。


そしてその声には聞き覚えがある。


「おい、今重要な話をしているんだが?」

「まぁいいじゃない、お兄ぃも参加しているし」


お兄ぃ?


「おい、レオナ」

「なんすか!お兄ぃ!!」

「そいつを知っているのか?」


するとなぜだかこの場に緊張が走る。


「おうよ!なにせ、一晩明かした仲だぜ!!」


そういい、レオネは親指を立てるが、それとは裏腹に徐々に室温が上がっていくのがわかる。


原因はレオンの毛先が揺らめいて炎のようになっているやつらだろう。


「バアル、言い訳はあるか?」

「言い訳っていうか、だいぶ大きな思い違いをしているぞ」


用意された寝床に戻ったらいつの間にかいて、いつの間にか引っ付いて、いつの間にか寝ていたことを説明する。


「だから、まぁ、別段特に何もなかった」

「ひっどいな~、家族以外で一緒に寝たのは君が初めてなんだよ~」


そう言って腕を掴みながら頬擦りしてくる。


(やたらとスキンシップが激しいな……)


すると再び、室内の温度が上がっていく。


「確かに妹が引っ付いているようだが、君も抵抗しなさすぎじゃないのか?」

(いや、どうしろと)


とりあえず、振りほどこうとするけど、すればするほどレオネの掴む力が強くなっていく。


(はぁ~あれか、抵抗されればますます構うタイプかこいつは)


ごくまれにこういうやつがいるのだが、はっきり言って潔くないのでいろいろと手間がかかる存在だ。


「ん、ん゛すまんがそう言うことはよそでやってくれ」

(ごもっとも)


ハーストが呆れるのも無理はない。


「さて、話を戻すぞ、湖の件は仕方ないとしよう、だがこれ以上は看過できぬぞ」

「魔蟲共を殺すなら、何度も行うぞ」

「ならば、魔蟲の後は我らとやりあうか」


そう言うと会議室が震えているのがわかる。


双方の魔力の波動がぶつかり合っているゆえに起こる現象だ。


(しかしすごいな、ここまではっきりと威圧を感じさせるなんてな)


ここまでできる人物はグロウス王国にも数えるほどのはずだ。


「で、それを穏便に解決するためには協力して魔蟲を殲滅することだが」

「地の者とは共闘しない」


ということで共闘する姿勢を見せない。


「その理由は?」

「掟だ」


掟で定められているので共闘はできない。


「だが、魔蟲は邪魔なんだよな」

「ああ」

「だが手を取り合うことはしたくないと」

「ああ」


こりゃ、だいぶ根が深いな。


「ハースト、確認だが、先程友としてであれば一緒に戦ってくれるんだよな?」

「…ああ」


ハーストの表情を見て、何か裏があるのを感じ取った。


(魔蟲が忌々しい、だが地の者、ここでいうレオンたちが戦っていることから掟に則って一緒に戦うことはできない、だがこれ以上キクカ湖のように場所を破壊してもらいたくない。なので苦渋の策として、地の者ではなく部外者の俺と友に戦う、その際に偶然(・・)地の者がいたという言い訳で参戦しようというつもりだろう)


詭弁といえば詭弁だが、掟を破ったわけではないと言い張ることができる。


「で、その友になるにはなんかの実を採ってくる必要があると」

「ああ、正確に言えば雷雲を超える実力を見せてくれればいい」

「了解だ、それでレオンの方は監視役に何名かつけることになるわけだな」


護衛と言わず監視と言ったこの意味をレオンは正しく理解してくれるだろう。


「その通りだ」


ビシ!!


とある席の人物が垂直に手を挙げている。


「さて、じゃあ明日にでもその場所に向かいたいんだが」


とりあえずその存在を放置して話を進める。


「了解した、ではまた明日に迎えに来るとする」


そう言ってハーストはヨク氏族の戦士を連れて帰る。



のだが。






「で、お前たちはどういう関係なんだ?」

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