成果と次の方針
※この度再投稿することにいたしました。もしこの作品のブックマーク、評価してくださっている皆様はもしよろしければ再投稿先でもお願いいたします。
変更点などはあらすじに記載しておりますので、参照ください。
再投稿先はこちらのURLとなります。
https://ncode.syosetu.com/n5978gw/
「レオン!!レオン!!大丈夫なの!!」
「ああ……すまんな」
レオンの部屋ではムールがレオンに抱き着きながら泣いている。
「どうする?」ボソッ
「もう少しこのままにしてやるか」ボソッ
「……だな」ボソッ
扉の外まで聞こえてくる会話に俺達は少しだけはそっとしておくことにした。
「おい、もういいぞ」
入口の横で待機していると中からレオンの声が聞こえる。
エナに視線で問うと肩をすくめて仕方ないと主張する。
部屋の中に入るとレオンに腕枕してもらっているムールの姿が目に入る。
「すまんな、ムールに話が合ったんだろう?」
「ああ」
「ムール」
「わかっているわよ」
ムールはエナに視線を定める。
「で、何が聞きたいの?」
「そっちの現状を詳しく、どのくらいの人員が削られたかをな」
「レオンの部隊がだいたい死亡300重傷者400軽傷者700、ルウは死亡400重傷者350軽傷者700」
死亡はもちろんのこと重傷者もすぐに戦線復帰はできないので1450人が戦闘不能に陥ったと考えていいだろう。
総数が12350人、昨日のうちに全員が復帰できたと考え、この数で問題ないとすると……大体十パーセントが今回で削られたわけだ。
(全体の一割で『母体』の二体を屠ることができた、結果は上々。だが今後の動き次第では……)
産卵数は半減になったが、成長速度は変わらない。あちらはどんどん増えていくのにこちらはけがをすればしばらくは復帰に時間がかかる。
今後も短期的に動けるのならば最良の結果ではある、だが、長期的に考えれば少々劣勢なのは変わらない。
「お~い、アシラ様たちが帰ってきたぞ!!!」
そとから声が響いてくる。
「じゃあ、オレ達は話を聞いてくる」
「俺も、っと」
レオンは立ち上がろうとするとふらふらとする。
「駄目よ」
ムールはすぐさま駆け寄りレオンを支える。
「レオン、俺の『慈悲ノ聖光』は傷を修復はできても流れていった体液とかは回復できないんだ」
つまりは貧血の症状が出る。前世で何度かかなったことがあるが、あれは本当に気持ち悪い。
「どうすれば治る?」
「そりゃ食って寝てを繰り返せば自然に」
そう言うとなおのこと立ち上がろうとする。
「ではアシラたちの様子を見てから何か腹に入れよう」
そう言うとムールに肩を借りながら、アシラたちに合流しようと外に出る。
「おいおい、なんでふらついていやがるんだ?」
アシラはムールに支えられているレオンを見て不思議がっている。
「それはな―――」
エナが一通りの説明を行う。
「なるほどのぅ、ではレオンのところはかなりの打撃を受けたのか?」
「ああ、けど無事に蠍の『母体』は倒せたさ」
いつもの9人が集まり食事をとりながら並べられた二つの『母体』を見る。
「それで、アシラたちのところはどうだったんだ?」
「いつも通り雑魚しか出てこなかったさ、損害もほぼない」
数十名が蜂の毒を受けたようだが命に危険はないみたいだ。
「しかし、『王』が現れたのか、どう攻めるつもりだ?」
「二体の『母体』を殺すことができたんだ、これで奴らの繁殖速度は半減したとみていい、なら下手に増援が出てくる前に叩いちまうのがいいさ」
「具体的には?」
すると回答に困ったレオンはエナを見てくる。
「どう考えるバアル?」
(ここで聞くのかよ)
普通部外者に意見は聞かないと思うのだが……
「まず今回は作戦通り発見済みの『母体』を殺すことができた。となると次はさらなる捜索が必要になる」
今回の作戦は討伐する目標の場所がある程度絞れていたから実行した作戦であって、もしそれがなかったらできもしなかっただろう。
「じゃあどうする?前みたいに雑魚をちまちま潰していくか?」
それは悪手だ、いくら繁殖速度が半減したとはいえ、こちらが消耗していく間にすぐさま魔蟲は繁殖していく、長期的にはこちらがどんどん不利なる。
魔法があるならそれでもいいのだが、獣人には魔法という文化が根付いていない。なので便利な回復魔法などを使うことができない、となればさらに消耗すべきではない。
ないのだが。
(現状これしかないよな)
結局、つぶすべき目標が正確にわかっていない時点で短期に持ち込むのは難しい。
よって
「そうだな、まず捜索が得意な獣人を除いてはローテーションを組んで駆除をしてもらう」
「じゃあ、捜索が得意な奴らは?」
「そいつらは実力者と組んでもらってほかの『母体』と『王』について調べてもらう」
そう言うと全員が不思議がる。
「なんで『王』もだ?そいつは発見しただろう?」
「発見は、だろ。今はどこにいるのか知っているのか?どこをねぐらにしているのか知っているか?」
そう言うと全員が黙る。
「まずは『王』と『母体』を探すことに集中する」
二体の『母体』を倒し終えたのだから繁殖スピードはある程度落ちる、だがそれが有利には働くのは短期でだ。こちらは怪我をすれば癒すのに時間がかかる。死者なんてもってのほかだ、あちらは数日で成虫になるがこっちは子供が戦えるには年月が必要になる、どちらが有利なんてわかりきっているだろう。
「だから何としてでも短期決戦に持ち込む必要がある」
ここまで説明すれば全員が理解できただろう。
そして本題に入る。
「それで、捜索が得意となるとルウの部隊か?」
「ああ、と言いたいが、エナの部隊には負ける」
「そうだな、二体の『母体』を見つけたのはオレの部隊だしな」
エナの部隊は斥候と呼べる構成している。その実力は『母体』を見つけ出した実績が物語っている。
「なるほど……エナの部隊1人とルウの部隊3人で動いてもらおうと思っているが可能か?」
エナの部隊が疎まれている、そのことで仲間割れの可能性があるのか危惧するが
「ああ、いくらなんでもこんな時期にいがみ合わないさ」
「そうさな」
ルウとエナの言葉でそれが杞憂だと判明。捜索隊を組んでもらうことに決まった。
「次に駆除の部隊だがレオン、アシラ、ノイラの部隊から出てもらう」
「わしの部隊はいいのか?」
「エルプスの部隊は戦闘力としては一品だが移動には難があるだろう?」
「まぁのう」
ということでエルプスは待機してもらい、ほかの部隊で駆除をお願いする。
「ここで一つ注意しておくぞ、重傷を負いそうなら帰還させろ、ただの駆除で大けがして戦線に復帰できないじゃあ笑えない」
「「「わかった」」」
ということでそれぞれで部隊を指揮してもらう。
レオンに関してはムールが変わりに指揮することになった。
(一応方針は示したが、あとは時間との勝負だな)
魔蟲の増殖する速度は半分になったが、怪我を回復させる時間が長いことには変わりはない。『慈悲ノ聖光』で回復させるといっても俺の魔力量しだいだ、必ずガス欠がやってくるし、いつ戦闘になるかもわからないのである程度温存もしておきたい。
(にしてもルンベルト地方ではどうなっているのだろうか?)




