立場がそれを許さない
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ここ数年で気づいたんのだが、実力者にはそれぞれ最も得意とする状況やスタイルがある。
リンならば、一定以上の空間があること。風が最も有効活用できる場所での戦闘が得意。
クラリスなら逆にある程度近くにいること。拳や刃布が当たる距離で戦うのが得意。
セレナはある程度離れていること。【多重ノ考者】は思考を増やすことはできても考える時間を延ばすことができないので近づくもしくは離れることができる距離感が最適だ。
ノエルとカルスは障害物の多い場所。糸を張り巡らせて罠として使ったり、死角からの不意打ちをしやすい空間が一番。
カリンは走りまわるスペースがある場所。言うまでもないが走り回れないのではカリンの力はほとんど意味が無い。
ウルなら月夜に相手がある程度いるときだ。ウルのユニークスキルは月夜には魔力回復を劇的に高め、さらには相手の数の差があるほどステータスが強化される特性がある。
では俺の一番得意な状況はどんなだろうか、それは―――
「『神罰』」
空から光の柱が産卵女王大蜻蛉を飲み込んでいく。
(やっぱり一人でいると楽だな)
俺の一番得意なスタイル、実は一人特攻だった。
敵の中心に『飛雷身』で飛んで『神罰』や『放電』で自分の周囲を攻撃。あとはまた『飛雷身』で離脱していく。他にも遠距離から『雷霆槍』で攻撃したり、『天雷』で中距離の敵を薙ぎ払ったりなど。
そして一人である理由だが、これは誰もが『飛雷身』についてくることがまずできない。なので突撃、離脱には一人でいる方が断然楽なのだ。
『神罰』の光が収まると、ボロボロの近衛蜻蛉と産卵女王大蜻蛉が見える。
「意外だ、耐えるんだ」
それ以外は跡形もなく消えていった。
残った『母体』と近衛蜻蛉の羽は無事ではすまなかった。ボロボロの羽で飛行を続けられはできないようで地上へ滑空している。
それを見て、落ちながらモノクルを取り出し鑑定する。
――――――――――
Name:
Race:産卵女王大蜻蛉
Lv:163
状態:憤怒・群体・欠損
HP:502/1502
MP:2402/2402
STR:67
VIT:72
DEX:51
AGI:69
INT:38
《スキル》
【鋭利牙:29】【剛大顎:37】【音波羽:34】【毒針:41】【潜伏:82】【隠密:67】【速飛行:75】【産卵:71】【意思疎通:42】【振動感知:58】【視界強化:42】【指令:54】【粘着毛:39】【超硬化:27】
《種族スキル》
【静止飛行】
【多産卵】
【特殊産卵】
《ユニークスキル》
――――――――――
――――――――――
Name:
Race:近衛蜻蛉
Lv:58
状態:憤怒・群体・欠損
HP:270/1270
MP:950/950
STR:65
VIT:73
DEX:61
AGI:58
INT:43
《スキル》
【鋭利牙:39】【剛大顎:28】【刃剣尾:19】【音波羽:14】【猛毒針:18】【潜伏:32】【隠密:42】【速飛行:38】【振動感知:49】【視界強化:50】【粘着毛:26】【超硬化:4】
《種族スキル》
【静止飛行】
【母体危機察知】
【我が身を盾に】
《ユニークスキル》
――――――――――
モノクルで確認すると等しく1000HPが削られている。
(『神罰』は範囲固定ダメージなのか?そうじゃなければ綺麗に1000ダメージも食らわないよな、っとそろそろか『飛雷身』)
地面に衝突する前に『飛雷身』で安全な場所に移動する。
「………………」
「おいおい、驚いている暇はないぞ」
産卵女王大蜻蛉と近衛蜻蛉が着陸しようとしているのはエナの真ん前だ。
「ああ……こんな力持っているならさっさと出せよ」
「やだよ」
ズン!!
産卵女王大蜻蛉と近衛蜻蛉がようやく降り立つ。
「さて、じゃあ最後の仕上げだ」
「ああ、そうだな」
俺は『怒リノ鉄槌』を発動させて、エナは『獣化』を発動させて人の形を保ちながらハイエナの姿を取る。
ブブブブブブブブブブブブ
『母体』の近くは排除したが他はまだ残っている。
「だが、飛べないならもう逃げられないよな~」
羽を裂かれて地に落ちた蜻蛉なんて、もはや脅威じゃない。
「先に行くぞ」
エナは先に『母体』に突っ込んでいく。
「もう、ろくには動けないんだ、素材にしたいから正確に急所を突いてくれよ」
なにせ『神罰』に耐えられる甲殻だ。正直のところほしい。
「了解…ん?」
産卵女王大蜻蛉の体に近衛蜻蛉がよじ登っていく。
「何がしたいんだ?」
「さぁ?」
警戒しながら観察していると傷口や壊れた甲殻などにしがみつくとやがて動かなくなる。
「あれ?盾?」
「みたいだな」
どうやら【我が身を盾に】というスキルを発動させたらしい。
効果は見ての通り、じっと動きを止め盾として機能することだろう。
「まぁそんなことをしても、飛べなければ逃げることは」
すると今度は誘拐蜻蛉が『母体』に集まり始める。
ブブブ、ブブブブブ!!
「って逃がすかよ」
けたたましい羽音が『母体』を包むと次第に浮かび上がっていく。
「『飛雷身』」
すぐさま『母体』の上に移動すると『天雷』で誘拐蜻蛉を排除する。
ズゥム!
その巨体が再び地に落ちる。
(危ない、逃げられるところだった)
だが、さっさと始末をつけるためにそのまま『母体』に落下する。
(『怒リノ鉄槌』の一撃ならあの盾も防ぐことはできないだろう)
そのまま落下と同時に振り下ろそうとするんだが
ガシッ
「っ邪魔」
途中で誘拐蜻蛉に掴まれる。
すぐさま『怒リノ鉄槌』で屠る。
『手伝ってやろうか?』
「頼む」
そう言うとイピリアが近づいてくれる誘拐蜻蛉を迎撃してくれる。
「じゃあな」
落下中に邪魔してくる蜻蛉共をイピリアが迎撃してくれることから今度は無事に『母体』に攻撃することができた。
『怒リノ鉄槌』でえぐった胴体からは緑の体液が流れ出る。
(あっけな)
抉れた部分は大きく誰が見ても致命傷、まさに虫の息だ。
キシュ、シャーーーー!!
「ん?、おお!?」
何とか体を震わせ近づけさせないようにする。
(最後のあがき…にしてはなんか変だな)
振り払い襲い掛かってくるなら理解できるが、どう考えてもその動きじゃない。
「ん?なんだ?」
するとこちらを淡々を狙っていた誘拐蜻蛉が『母体』に集まり始める。
「おい、こら!せっかく綺麗なままなんだから傷つけんな」
『天雷』を放ち追い払う。
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ
「なんだ?」
『ほぅ、なるほどな』
イピリアは何かを理解している。
群がっている時点ではよく分からなかったが、飛んでいく誘拐蜻蛉が掴んでいるもので理解した。
「……卵か」
誘拐蜻蛉が大事そうに抱えているのはやたらと大きい卵だ。
「最後の最後に生み出した卵ね、まぁもらうか」
すぐさま『飛雷身』で卵を持っている蜻蛉のすぐ上に移動する。
「じゃあな」
バベルで羽を裂き、強引に足をもぎ取り、卵を抱える。
「うへぇ、べとべとしてやがるな、さて」
グジュ!
どういう卵かわからないけど、将来の不安の種はさっさと摘むに限る。
「じゃあ置き土産だ『放電』」
最後に特大の放電で回りを一掃する。
(……こんなもんか)
おとなしく墜落していると、さらに西に向かっていく残った蜻蛉共が見える。
(『母体』は始末した、後は見逃していいだろう)
追撃に入る必要はないと感じる。
『おうおう、にしても派手にやったな~』
「……まぁな」
落ちながら下を見ると俺が起こしたことの傷跡が残っている。
『湖の大半は蒸発して、大穴開けて、周囲一帯が蜻蛉の魔蟲の死骸だらけだ』
イピリアの言う通り、残り少ない湖の水面では蜻蛉共の死骸で埋め尽くされている。それも湖だけではなくその湖畔にもだ。
(文句言われそうだな)




