毒は薬となり
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「それで?何の要件だ?」
「話ってのはお前の作戦についてだ、ルウが文句を言って有耶無耶にしたからな」
(そういやそうだな)
ルウが話を遮って、レオンが悪乗りして模擬戦になっている。そのため詳細はまだ話していない。
「で、俺と、ルウが蠍の『母体』を標的に、アシラとノイラ、エルプスが湿地帯の魔蟲、最後にキクカ湖にバアルと鰐やカワウソといった水辺で動ける獣人数匹で問題ないのか?」
「ああ……なんだよ?」
大丈夫だと言い切るのにエナ以外の獣人は不審げだ。
「そうは言うが本当に問題ないのか?」
「不安か?」
「正直不安だ、確かに力は見せてもらったが、それでもルウと同等という判断しかできない。仮にルウがおまえの立ち位置であるならば、儂らは絶対に止める」
「つまるところはもっと具体的に対策を教えてくれってことだ」
ノイラもエルプス同様にもっと話を聞きたそうにしている。
「なら具体的に見せよう」
立ち上がり、投擲するように構える。
「『雷霆槍』」
雷の槍を空高く投げ飛ばす。
「「「「おぉ~~」」」」
雷霆槍は空高くまで上がるとその場で放電を始めた。それはまるで花火のようだ。
「このように、俺は蜻蛉や蜂に対して有効手段がある、しかも放電する性質上範囲攻撃だし、空への攻撃は十分だろう?」
一応は策は見せたが、少し疑っている。
「オレも別段文句はない、こいつの策は危険な匂いがあまりしない」
「「「「エナが言うなら問題ない」」」」
「おい」
エナの一言だけで全員が納得した。
「……悪気はない、エナの鼻は信用されている」
「鼻だけな!!」
ティタの言葉が気に障ったのかルウが強めに言う。
「はいはい、言い争いはそこまでにして、明日のことを話し合うわよ」
ムールのとりなしでティタとルウは再び座り込んだ。
「それで動きとしてなんだが、最低限の戦力は残しておく必要があることを考えれば」
「まずは動ける戦力だがレオンが約4500、ルウが3200、アシラが1700、ノイラが800、エルプスが150。で、このうち最低でも2000はいざというときに残しておきたいな」
「そうだな……レオンのところから700、ルウのところから600、アシラが500、ノイラ200を残しておく、これでいいか?」
そう言うと全員が少し考えてエナに視線を向ける。
(おいおい、少しは考えろよ)
「いいんじゃないか、ここの防衛はそれぞれが戦力を出し合っていく。割合も問題ないだろうさ」
「……そうだな」
エナが賛成したことにより、全員がその方向で進めていく。
「そう言えば、エナとティタの部隊はどうする?」
レオンの一言で全員動きを止める。空気からしてどうやらあまり触れたくない話題なのだろう。
「何を言っているんだレオン、あんな奴らは拠点でおとなしくさせておけ」
ここにいる全員が同じ意見なのかそれ以上は何も言わない。
「エナとティタの部隊について詳しく話してくれないか?」
「おいおいおい」
ルウが何を聞いているんだと言いたげに声をかけてくる。
「まぁ話しておこうか、オレの部隊は、戦闘には合わないけどその他に一芸を持っている奴の集団だ」
話を聞くと逃げ足が速かったり、何かの感覚が鋭かったりと、戦闘じゃない方に特化した集団なのだとか。
「……俺のところは、毒持ちの集まりは」
ティタはそのまま、毒を持っている獣人の集団だ。
「数は?」
「オレのところが100、ティタは50だな」
本当にごく少数なんだな。
「まぁそいつらはここでおとなしくしてお」
「いや、オレ達の部隊はバアル、お前と同じ湖につけるさ」
「…問題あるか?」
全員を見渡してみるが誰も反対意見がないみたいだ。
「おし、じゃあ俺とルウはそれぞれここに残す人員を選定し、配置、その後、日が出始めたころそれぞれの場所に出発、いいな」
「「「「おう!!」」」」
「ではそれぞれがやるべきことをやってから空が赤らむまでにまた集合しろよ」
そう言うとエナとティタを残してその他全員が解散して、それぞれの部隊に報告しに行った。
「オレたちも行くが、お前はどうする?」
「俺はそろっと寝るよ」
「そうか、ティタ、怪我人にアレを打ち込んだらお前のところにも伝えておけよ」
「…わかった」
「ちょっと待て」
そう言ってそれぞれが動こうとするが少し気になる部分があった。
「ティタが打ち込むってのはなんだ?」
「それは……気になるならついて来い」
エナに連れられた場所は里の一角に建てられている大きな建物だ。
「ここはなんだ?」
「入ってみればわかる」
そう言ったエナの後に続く。する扉をくぐった瞬間に血生臭いがした。
「ここって」
「ああ、怪我人の診療所だ」
建物は本来はとても大きいのだがすべての空間を怪我人で埋め尽くしておりのでそう感じられない。
「あ、エナ」
一人の鹿の獣人がエナに近づく。
「よっ、それで重傷者は?」
「今回はかなり多いわよ、できるだけ痺れ薬を欲しいのだけれど」
鹿の獣人がティタに視線を向ける。
そして納得した、打ち込むとは痛み止め用の痺れ薬のことだ。
「……了解した」
ティタは顔だけを『獣化』させると殻になっている小さい壺に牙を入れて、水の音をさせる。
「それで、状況は?」
「明日には大規模な攻勢をかけるつもりだ」
「…そう、じゃあまだまだけが人は出るわね」
「まぁな、けど今回の標的は二体の『母体』だ」
「『母体』?それって蠍と蜻蛉よね?蠍はまだわかるけど蜻蛉の方はどうするの?有効手段はないのでしょう?」
「オレ達にはな、だがこいつなら問題ないだろう」
そう言うとエナは俺の頭を掴み近くに引っ張る。
「この子が?……あ!この子人族?!なんでここにいるの?」
「まぁ、話せば長いな」
そう言うとエナはオレがここにいることを掻い摘んで話す。
「なるほどねぇ……ねぇ、人族には怪我を一瞬で治してしまう魔法をというものがあるって聞いたんだけど本当?」
「本当だが?」
「なら!!お願い!ここにいるみんなにそれを掛けてくれないかな!!!」
そう言って痛いほどに両肩を掴まれる。
「そうだな………エナ」
「なんだ?解毒しろってことなら飲まんぞ」
っち、できればその要求をのませたかったんだがな。
「なら、毒の薬を30日分で手を打とう」
「まぁそれならいいか、お前、名前は?」
「私はビューラ、薬師の一人よ」
「じゃビューラ、全員を集められる場所はあるか」
「ええ、外の広場を使えば何とか」
「じゃあそこに全員を移してもらえるか?」
「全員を?!」
「ああ、そうじゃないとできないぞ」
「なら話は決まりだ、ビューラ、全員を動かすぞ」
「いや、だけど」
「なんだよ、動かしたらすぐ死ぬわけじゃないんだろう?だったら動かして治してもらった方がいいに決まっているだろう」
「ん~~~、わかったわよ」
そう言うとエナとビューラがせっせと外に全員を運び始めた。
「これでいいのか?」
建物の外に全員を運び終わる。
「ああ、それじゃあ約束忘れるなよ」
全員の中心に立ち、バベルを取り出す。
「『慈悲ノ聖光』」
暖かく優しい光が放たれると、時間が巻き戻るように傷が癒えていく。
(やべ、案外魔力を消費するな)
体感で約7割の魔力が削られた。
(ここじゃ魔力供給はできない、となると自然回復のみだが……間に合うかな)
魔力の回復手段は、自然回復か人為的に用意した魔力手段を用いるしかない。
(魔力回復薬は無いし、魔石は持ってない、ここじゃあ魔力供給装置も使えない。はぁ~なら寝るか)
自然回復には取っている行動で回復量が変わる、その中で一番回復するのが睡眠だった。
「(それでも全快になるかは微妙だけどな)じゃあ俺は先に戻っているぞ」
「ありがとな、お礼に添い寝でもしてやろうか」
「いるか、今度はどんな毒が盛られるのか、それと30日分の薬は明日までに用意してくれよ」
ということで一人で寝床に向かう。
『用意された寝床も安全かわからんぞ』
(だから見張りを用意するんだよ)
『なるほどの、つまり儂か』
(その通り。イピリアなら眠る必要はないからな)
ということで見張り番には最適な存在がいる。
「じゃあよろしく」
寝床は簡素に屋根と壁がある箱に藁を敷かれただけの場所だった。
『了解じゃ、では害意のあるものは近づけさせんから安心して眠れ』
ということでさっさと横になり眠る。
(はぁ~さっさと片付けて帰ろう…………)
帰ることだけを考え、眠りに落ちる。




