学園と二つ名
20XX年。
日本のとある研究者がある新技術を開発した。
ゲーマー達にとっては夢の機械、五感再現型のVRゲームだ。
この技術は様々な方向に転用できることから世界からかなり期待された。
そしてその技術が完成すると早速ゲーム会社と連携して、大掛かりなゲームを作り上げた。
そのゲームとは『幻想世界』というものだ。
このゲームにジャンルというものは存在しなく、本当に異世界に転生したかのようにゲームができるのだ。
勇者になってもよし、ヒロインになって恋愛を楽しむのも良し、農家になってファームを楽しむのも良しとされている。
まさに可能性は無限大のゲームだった。
なぜそんなゲームが開発できたか、それは世界最高峰のAIシステムを導入しており、星全体を再現しているからだ。
政治、経済、地形気象、生態系、戦争それらが想定されており、まさにどこかの惑星を動かしているようだった。
発売当初は全世界で爆発的に売れたのだが、2か月ほど経つと異常者が現れる。
これだけでも世間ではかなりひどい評価を得ていたのだが、もっと悪い事態に陥ってしまった。
機械の不具合で死人が出てしまったのだ……
魔道具事件から二年の歳月が流れた。
「バアル様、そろそろグロウス学園に到着しますよ」
こいつはリン、俺が雇った専属の護衛だ。
黒い髪を後ろで束ねて、前髪は翡翠の瞳が隠れないようにバッサリと切っている。
そして腰には家宝である宝刀“空翠”を携えている。
「……なんかその恰好は慣れないな」
本来は武士の恰好をしていたのだが、今は白いグロウス学園の制服を着ている。
「仕方ないですよ、私もバアル様に合わせて入学するのですから」
今年9になるリンなのだが、俺の護衛をするということで二年遅れでこの学園に入学することになった。
ちなみにだがござる口調は鳴りを潜めた。
そして俺はバアル・セラ・ゼブルス、ゼブルス公爵家の嫡男だ。
「しかし、バアル様にお友達ができるといいんですけど…」
リンは俺に友達ができるか心配している。
(お前は俺のオカンか)
なぜこのようなことをリンが心配しているかというと、端的に言えば自業自得だ。
俺は有名に成った、だがそれはほとんど悪い意味でなのだ。
「……破滅公か」
それが魔道具停止事件のあと俺についた二つ名だ。
「確かに俺にちょっかい掛けてきたやつには制裁を加えたよ?でも破滅までは追い込んでないじゃんかよ…………」
なぜだかこの名が広まり、俺に粗相をしたら家が潰されると思った貴族が多く出てきた。
そのため同年代とはほとんど知り合いがいない。
「いつの間にか子供が粗相をして、標的になったらたまらないですからね」
大半の貴族はリンのように考えている。
グロウス学園初等部校に到着する。
「…………格差がすごいな」
俺のような上級貴族は馬車で構内まで入るのだが、下級貴族は門の外にある停留所で馬車を降りている。平民に至っては徒歩で学園内に入っている。
「着きましたバアル様」
リンが扉を開けてくれる。
馬車を降りると目の前に広がる光景を見る。
(どう考えても大学とかの規模だろ、これは)
前世でよく見た校舎とグラウンドというレベルじゃない。下手したらUS〇の遊園地並の大きさだ。
「ではバアル様参りましょう」
俺はリンを連れて校内に進んでいく。
「ここがグロウス学園ね〜いいところじゃない!」
「ほ〜、これがゲームの中の学校か、広いな~」




