命を食らうということ
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まず獣人は正面からぶつかり合うのに信条を持っている、それが生きる誇りだと誰しもが認めるほどに。
だがら正面から戦わない者たちを認めることはない。
毒を持っている動物は、毒を打ち込むと、そのまま弱るまでじっと待つ。そのスタイルがどうしても獣人には受け入れられない。
さらにはそんな存在が憧れの戦士であったなら?認められないどころか、誇りを持たない存在として排他する存在と認識され、だれからも認められない存在になる。
これが二人が嫌悪されている原因だ。
「なるほどな」
「毒を使う奴は姑息だ」
「そうそう、レオンさん、私からもあまりこのお二人とは距離を置くことをお勧めします」
この村の大人はレオンにそう薦める。
「ああ、その意見は胸にとどめておこう」
レオンはそう言うが当の二人は暢気にあくびをしている。
「しかし分からないな、毒は立派な生存戦略じゃないか、なんで忌諱するんだ?」
「バアル、少し黙っていろ」
俺が疑問をいうと、なぜだかエナがそれを止める。
「お前、狩りをしたことはあるか?」
「狩り?まぁ父上に貴族の趣味の一環として何度かは」
「??なんか違う気がするが、まぁいい、オレたちは自然に生きることを誇りに持っている」
それは聞いたような気がする。
「自然に生きるなら当然オレ達は狩りをする。自らの血肉にするため、命を食すためにな」
あれだな日本で食事前に『いただきます』と宣言するのも同じようなものだ。
「……食われるほうも、ただただ食われるわけにはいかない。当然ながら命の奪い合いをする。だが自然に生きることを決めた俺たちには、その命のやり取りから逃げることは許されないんだ」
「ああ、けど毒は違う。毒はただただ命を蝕むだけ、そんなものを使ったら命に向き合わずに殺したことになる。それがこの地に生きる奴らからしたら許せないのさ」
(なるほど………いや、なるほどじゃないか)
思わず納得しそうになったが、思い返せばそうでもない。なにせ別に敵を倒すのに毒云々はどうでもいいと思っているからだ、必要であるならば遠慮なく使う。
これは獣人特有の感覚なのだろう。
「だから毒を使う戦闘は嫌われているのさ」
「…そっか」
ここは獣人は譲れない部分なんだろう。そこにとやかく言う気はない。
「エナ、ティタ、この毒を解くことはしないか?」
「ああ、それをしたが最後、こいつは絶対何かする、それもオレたちの不利益になる何かを」
(よくわかってらっしゃる)
自由にすれば今すぐ逃げるつもりだ。もちろんここまでの手間賃として軍が分散しているなどの情報を高値で売り渡したりは……まぁするだろうな。
「マシラさん、俺はエナの意見を信じるつもりだ」
レオンがエナをかばう、それを見てマシラは少し悩んで
「そっか、なら私は何も言わない」
結局はレオンに判断を任せた。
それから夜が更けていくと、子供たちは数名の大人のそばで寝息を立てている。
「それで俺たちはこれからどうするんだ?」
「あたしは一度こいつらをクル氏族まで連れて行ってやろうと思う」
「そうだな、ではマシラさん頼む」
「了解だ」
マシラは明日になると彼らを連れて来た道を戻る。なにせエブ氏族の残存戦力では全員が逃げるには少し心もとない、だから護衛としてマシラが護衛に着く。
「じゃあオレ達はこのままグファ氏族まで向かう、これでいいか?」
「そうだな、あいつらも心配だしな」
あいつら?
「……下手すれば内輪もめも起こっているかもな」
「それは無い、と言いたいんだがな」
レオンはそう言うと頭が痛い問題と言って風に頭を振る。
「大丈夫だろう、邪険にはされるだろうが、ひどいことにはならない」
エナは断言する。
「はぁ~、考えても仕方ない、さっさと寝るぞ」
そう言うと焚火に土をかけてそれぞれ横になる。
しばらくするとそれぞれが寝息を立てている。
(今までで出てきた蟲は大まかに四種類、百足、蜂、蜻蛉、蠍。このうち二種類は空を飛ぶ。だけど)
数日前からのレオンの戦い方を思い返す。
(レオン、エナ、ティタは素手。マシラは武器を使っている。けどすべてが、接近戦なんだよな)
もし、獣人が全員が接近戦のみだとしたら?
獣人は平面上でしか戦えないのに、魔蟲は三次元的戦闘が可能なのだ、どこまでも不利なのは間違いない。
(さすがに弓ぐらいはあると思いたいんだが、なんか使われていない気がする)
最悪な可能性を思いついてしまい、気が重い。
(それとこいつらの情報を少し調べておくか)
鑑定のモノクルを取り出し、四人を鑑定する。
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Name:レオン
Race:真獣人
Lv:72
状態:普通
HP:941/941
MP:642/642
STR:88
VIT:66
DEX:44
AGI:86
INT:31
《スキル》
【豪獣爪拳:82】【鋭牙:24【砕顎:7】】【火魔法:17】【跳躍:27】【身体強化Ⅲ:27】【剛毛鎧:43】【大威圧:57】【指揮:78】【野生の勘:103】【四足歩行:75】【思考加速:9】【敏嗅覚:9】【感覚強化:27】【狂暴化:1】【火炎耐性:89】
《種族スキル》
【獣化[大炎獅子]】
《ユニークスキル》
【気炎灯ス獅子】
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Name:エナ
Race:真獣人
Lv:65
状態:普通
HP:658/658
MP:742/742
STR:53
VIT:47
DEX:87
AGI:67
INT:85
《スキル》
【裂爪拳:72】【鋭牙:11】【強顎:15】【跳躍:21】【疾走:58】【身体強化Ⅲ:7】【戦略:33】【思考加速:32】【柔軟体:27】【柔滑毛鎧:26】【威圧:14】【軍指揮:45】【野生の勘:77】【四足歩行:68】【鋭嗅覚:57】【感覚強化:41】【隠密:42】【気配察知:30】
《種族スキル》
【獣化[狡知鬣犬]】
《ユニークスキル》
【生死嗅グ鼻】
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Name:ティタ
Race:真獣人
Lv:67
状態:普通
HP:860/860
MP:835/835
STR:59
VIT:80
DEX:69
AGI:74
INT:48
《スキル》
【柔触拳:49】【猛毒牙:49】【熱源感知:86】【蛇行:10】【万毒生成:141】【跳躍:27】【疾走:14】【身体強化Ⅲ:11】【算術:23】【思考加速:7】【柔軟体:57】【触削鱗:58】【毒学:87】【猛毒耐性:57】
《種族スキル》
【獣化[竜絞毒蛇]】
《ユニークスキル》
【万識ノ毒王】
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「……うへぇ~」
まさか全員がユニークスキル持ちとは思わなかった。
(にしても全員、Lvもステータスも高いな)
グロウス王国でも普通の騎士団にこれほどの猛者は存在してないだろう。
そして遠距離攻撃できる方法を持っていないことを理解した。
(頼むから、弓ぐらいはあってくれよ……~~~)
意識を手放し夢の世界に落ちる。




