獣への過程
4/10まで12時・19時の毎日二話投稿いたします。
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「よくやった!人族にはあんなことができるんだな!!」
そう言ってレオンは背中をバンバンと叩く。
「痛い、それより交渉通り薬をよこせ」
「わかっているよ、ティタ」
するとティタは石で木材にくぼみを作る。
「……これぐらいか」
その次に『獣化』するとそのくぼみに牙を入れて液体にする。
そしてしばらくすると窪みにあった液体は固まり、固形物になる。
「……ほら」
(え~~)
ティタは固形物を投げ渡してくるが……衛生面上の問題もあるし、何より汚いと感じる。
その後に10個の固形物を作る。
「……それを飲めば一日分の抗体になる、口に含めて溶け始めたら飲み込め」
「……………了解だ」
「……それといつものだ腕を出せ」
素直に腕を出すと噛みつかれる。
カプッ
何をしているのかというと抗体を打ち込んでもらっている。
「…約束通り後、後7日は持つようにしておいた」
以前結んだ約束通り、余裕があれば7日持つように薬を入れてもらっている。これを忘れてぽっくり逝ったら笑い話にもならない。
(これで計17日は大丈夫ということになる………微妙だな)
逃げるにしても、もう少し期間が欲しい。せめて二か月分は確保しておきたい。
「それにしてもあれはどうやったんだ?」
体面に肉を食っているレオンが座る。
「……言うと思うか?」
「別にいいじゃないか、それに一度見せたんだ後は何度見せても同じだろう?」
「いやに決まっている」
敵になる可能性はなくはない、手札は伏せるに決まっている。
クイッ、クイッ
服を引っ張られるので振り向いてみると、一人の女の子がいた。
「お礼!!」
そう言って木の実をくれる。
「ああ、ありがとう」
「ふふ、私もお兄ちゃんみたいな立派な戦士になるね!!」
そう言うと子供たちのほうに戻っていった。
だが
「「「まずい」」」
レオン、エナ、マシラは俺と女の子の様子を見て、気まずい顔をする。
「どうしたんだ?」
「……俺たちが幼少のころは人族とそう変わらない容姿をしているのは教えたな」
「ああ」
「……そして年がたつと徐々に獣の特徴が出てくるんだ」
それは初耳だ。
「??じゃあ獣の儀ってのは何なんだ?」
その獣の儀ってやつで獣の特徴をするんじゃないのか?
「……それは獣の儀はいわば大人の仲間入りのための物、戦士の試練に挑めるようになる過程だ」
簡単に言うと成人式のようなものらしく、これはただ単な儀式で何かを成すとかではないとのこと。
「じゃあどうやって獣の特徴を?」
「それは憧れを見ることによってだ」
エナが説明してくれる。
「俺たち獣人は憧れの大人もしくは獣の姿を見て、魅入るんだ」
「……そしてその姿を取っていくんだ」
なるほど、獣人は幼少の頃の見た大人や獣の姿を見て、似た姿や特徴を模倣するという
「レオンなら獅子の神獣に、ティタなら蛇の神獣、マシラ姐なら猿の神獣に憧れてその姿を取ったんだ」
なるほど、ならエナはハイエナに似た神獣を見たのか?
「だからあの少女がお前に憧れを持つと」
「……あ~~」
獣の特徴を模倣するにも関わらず人族の姿にあこがれてしまったらどうなるのか。
「あの子はどの獣の特徴も得られずにそのままの姿で成長していくことになる」
「オレたちは獣の姿を借りることで力を得る、それができないならどうなることか」
「いや、俺にどうしろと」
「……とりあえず放置しろ、そしてあの子がほかのだれかに憧れることを祈るしかないな」
「だな」
すると残っている数名の大人がやってくる。
「この度は助かりました、レオン」
「無事でよかったよ、それでいろいろ聞きたいんだが」
「アシラさんたちのことですか?」
「ああ、今どこにいる?なんでこんなところで魔蟲が出ているんだ?」
この里はエブ氏族といい向かっているグファ氏族の途中にある里だ。
「グファ氏族の地はもう少し行ったところにある」
「もう少し?……おい!レオン!」
本来ならもう少し先が魔蟲たちの戦線だ、そこから突破してきているのならば、だ。
道中にいた魔蟲はせいぜい10匹も満たない数だ。つまりははぐれている可能性が大きい。だが、今回は違う。なにせ100匹を下らない数の群れだったんだ、しかも明らかに獣人をある方向に連れて行こうとしていた。目的があるということはもっと大勢の群れで動いていることになる。
その群れが前線ではなくこんなところにいるんだ、詰まる意味は―――
「いや待て、魔蟲の一部が突破することに成功して可能性がある、どうだエナ」
「それだな、道中同様に危険な匂いはするが、それだけだ。もしアシラたちが壊滅しているならこんなもんじゃ済むはずがない」
エナの言葉ではこのようなことは偶然だったとのこと。
「なら決まりだ、そしてお前達は」
「東にあるクル氏族に少しの間留めてもらえないか頼んでみます」
「わかった、なんだったらアシラの名前やテンゴ、バロン、俺の名前を使ってもいい」
彼らは明朝、隣の氏族に避難するらしい。
「にしても君すごいね~」
鹿の角らしきものを生やした女性が近づいてくる。
「あんなすごい存在を従えているなんて」
「……なんのことだ?」
「あれ?ほら、君が飛んでいる蟲を一掃するときに背中当たりに見えない何かがいたでしょ?」
この言葉に戦慄する。
(イピリア、あの時は具現化してないよな?)
『そんなことするわけないだろう……ふむ、なるほど』
するとイピリアは女性の周囲を漂い始める。
「そう!これよ!これ!」
女性は正確にイピリアを指さす。
「「「「「????」」」」」
だが周囲にいるみんなは首をひねることになる。
『なるほどの、この角は魔力自体を感知するのか』
(それでお前を認識しているのか?)
『ああ、ただ正確には認識していないはずだ、おそらく儂のことは強風みたく感じているのだろうな』
あの女性の角は魔力の感覚器官らしく、それでイピリアのことを認識しているという。
「なんでみんな分からないのよ!!もう!!!」
鹿の女性はなんとかイピリアのことを教えようとするが、認識できないみんなに何言っても信じてもらえない。最後には業を煮やして怒ってしまった。
「へぇ~~そんな奴がね~」
マシラは意味深な表情で見てくる。
「まぁいい、こいつはいろんなことを隠していやがるんだ、そのうちの一つだろうよ」
「だな、利害があっているときは信用はできる関係というやつだ」
レオンもエナもよく理解してい。俺としても利害のある関係のほうが信用できる。
「信用?利害?それはあたしは初耳だな」
マシラにはあの話はしていない。
「それはな―――」
レオンがマシラに説明する。
俺が毒で命を縛られていること、魔蟲を倒せば抗体薬をもらえること、魔蟲共と人族軍を何とかすれば解毒すること、そして報酬に戦士の試練という戦士の身分を手に入れさせる試練を受けさせることを教える。
「……………エナ、ティタ、お前らは毒を使っているんだな?」
マシラは今まで見たことのない表情をする。
「なぁなんで、あんな怖い顔をしているんだよ、それに」
周囲を見るとレオン以外が怖い顔をしている。
「それはな―――」




