vsマシラ
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それからレオンもエナも面白半分でマシラに合意し、あれよあれよと模擬戦の場が整っていく。
「純粋な疑問なんだが、戦う必要はあるのか?」
思わずつぶやいてしまったことに他意はない。
「お前には魔蟲退治に協力してもらうことになっている。だが俺たちは肝心のお前の力を知らないからな」
だから知っておきたいとレオンは言う。
(ここである程度の力を見せておけば、後々突っかかってくる奴もいなくなるか)
模擬戦相手のマシラはエナやティタが戦いたくない相手だと言うし、その相手に実力を見せれば問題ないだろう。
「おい、準備はいいか?」
目の前ではマシラが木の棒を―――形状は棍に近い―――を肩に担いで待っている。
「…なんかやたらとギャラリーが増えているんだが」
現在は建物の外にある訓練場に来ているが、周囲を見渡すとも多くの獣人が楽しそうに見守っている。
「模擬戦は娯楽だからな、やるのも見るのも楽しいのさ」
エナも観戦の姿勢を取る。ティタは当然のごとくエナの傍にいる。
「じゃあ始めろ」
突然レオンが告げる。
「いや、もうすこし口上とかは!?」
「獣が言葉を話すと思うか、それよりも、いいのか?」
レオンからマシラに視線を戻すと、既にマシラが棍を振りかぶっていた。
「!?【紋様収納】!」
ゴン!!
「へぇ~そんなの隠し持っていたんだ」
マシラの攻撃を取り出したバベルで防ぐ。
(やべ、出すつもりなかったんだがな)
マシラの攻撃を見て思わず体が動いてしまった。
「ふん!」
「おっと~」
無理やり振り払い距離を取らせる。
「うん、力は君の方が上かな」
マシラはそう言い、手をプラプラと振るが、先ほどの威力が腕に伝わりじわじわとくる。
「どこからその力が出るんだよ」
「まぁ、修練を重ねれば、ね!!」
すると独特の構えを取るとそのまま走ってくる。
「ふっ!」
マシラの間合いに入ると右薙ぎ払いが繰り出される。
(これだけか?)
バベルで防ごうとするのだが。
ドン!
「がっ!?」
バベルをすり抜けるようにして棍棒の打撃が届いてくる。
もちろん本当に通り抜けたわけではない。マシラはバベルにぶつかる前に右手で棍の長さを調節し上手くバベルだけをすり抜けるようにして攻撃したのだ。
「ほら、どんどんいくよ」
それからは棍は本当にまっすぐなのかと疑いたくなるほどの攻撃が続く。
バベルで防ごうとすればいつの間にかすり抜けて、相殺しようとバベルをぶつけようとするといつのまにか軌道がズレて棍が手足に当たり、こちらから攻撃を仕掛けるもまるで竹のように反発し、バベルの威力が乗りながら反撃される。
「うっわ、えげつな」
「じゃあエナが変わるか」
「嫌だよ、ティタは?」
「…エナがやれっていうのならやるが、できれば、勘弁だ」
レオンはいつの間にかエナの隣に腰掛け、観戦している。
『のう、なんで【身体強化】しか使っておらんのじゃ?』
いつの間にかイピリアが出現し、尋ねてくる。
(一応は協定は結んだが、その後に敵になる可能性はゼロじゃない。それにあいつらの事情が変わって俺を殺す場合も想定できる。だからできるだけ手の内は隠しておきたいんだよ)
それゆえに今使っているのは【身体強化】と純粋な武芸の技のみだ。
『なるほどのぅ、だが現時点でそうもいってられるか?』
眼前に棍が迫っているのが視認できる。
(これは当たる、か、仕方ない)
身体に魔力を巡らせてユニークスキルを発動する。
「へぇ~これを避けるんだ」
ステータスを強化すると強引に体を動かし、回避する。
『使わないんじゃなかったのか?』
(そのつもりだったんだが、ここは勝っておこうかなと思ってな)
ここで負けて舐められることと一つだけカードを切って力を見せつけること、どちらがいいか考えてみた結果、後者の方が色々とスムーズに行きそうだった。もちろん特殊技は使わない。あくまで発動に付随する強化効果のみで戦う。
「にしても少しチリチリするね、それがお前の力なのか?」
「ああ、やっちまったらすまん」
その言葉と共に一足で距離を詰める。
「おお!!はやいな」
「『パワークラッシュ』」
技で威力を乗せた一撃を横なぎで繰り出す。
バギッ
(やべ、やりすぎた!?)
バベルは木の棒を叩き折ると一切加減されることなくマシラの体にぶつかりそうになる。
だが
シュル
「は?ぐっ」
横なぎに迫ってくるバベルに対してマシラはバベルの側面を触り、バベルの上を回るように回避する。
そして同時に足を延ばし、遠心力の乗った蹴りを繰り出してくる。蹴りは綺麗に顎に当たり、カクンと体が傾く。
トッ
ドサ
「う~ん、まぁひとまずは及第点かな」
マシラは何もなかったかのように地面に立つ。だけど俺は脳震盪を起こしたせいかまともに立つこともできない状態に陥った。
「まぁある程度予想通りだな」
そう言ってレオンが近づいてくる。
「それでどうだ?魔蟲と戦っても大丈夫そうか?」
「さっきも言ったが今の状態なら及第点だな」
マシラには見透かされているような気がする。
「本気は出さないのか?」
「ああ」
「……まぁいいか、それで死んでも自分の責任だ」
そう言うとそのまま先ほどの建物に戻っていった。
「立てるか」
「あ~無理、まだ感覚が戻らない」
何とかエナに捕まって立ち上がるがまだフラフラする。
「……まぁ持った方だろうよ」
ティタの言葉には傲慢な意味合いは含まれておらず、どちらかと言うと称賛の意味に聞こえる。
「おし、マシラさんの承諾も得たし早速行くぞ!!」
「少し待て、馬鹿」
レオンは俺を担ぎ、走ろうとするがエナに止められる。
「今日は日も落ちてきた、今から行っても結局どこかで野宿する羽目になるんだ、今日はラジャの里に泊めてもらわないか?」
エナの言葉の通り、空は赤染んできており、しばらくしたら夜になるだろう。
「それもそうだな」
「マシラ姐に部屋を借りれるか聞いてくる」
そう言うとエナはマシラの建物に入っていく。
「…じゃあ俺が獲物を獲ってくるぞ」
「ああ、頼む」
ティタはティタで里の外に行き今日の晩飯を用意してくるようだ。
「俺は子守か」
「ふざけんな、そんな年じゃない」
その後、エナは寝床を貸してもらうことができ、ティタも数匹の小動物を獲ってきた。




