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ただ働きなどごめんだ

「それでほかに聞きたいことはあるか」


いい匂いが充満し、それぞれ肉を食っているとエナが聞いてくる。


「あるよ」

「おお、なんだ、ある程度は教えたと思うのだが」


レオンはそう言うが、一つ重要な部分がある。

「俺への対価についてだ」

「「「???」」」


すると全員が不思議そうな顔になる。


「事前の話だと、蟲の脅威が無くなれば解放してくれるとのことだが」

「ああ、約束は違えない」


レオンの言葉に嘘はないだろう。


「一つ聞きたいんだが、ティタ、お前も戦いに参加するんだろう?」

「……ああ」

「その際にティタ、お前が死んだら誰が俺の毒を解毒するんだよ」


戦争でティタが死ぬ、そんなことがなれば俺の毒はどうなるのか。


「……問題ない、俺が死ぬことはない」

「その保証がない」


ティタが死ねば俺の毒は解毒されずに死を迎える、そんな事態は容認できない。


そう言うと三人とも考えこむ。


「……ではこうしよう、魔蟲10匹を倒すごとに一日分の抗体薬を渡す。『母体』を殺せば一か月を『王』を殺せば三か月。さらには俺の知り合いにあらかじめ解毒薬を渡しておく、俺が死んだときはそいつからでどうだ?」


ティタが考え込んだ末にそう告げる。


抗体薬は『命蝕毒』の期日を伸ばすことができる。仮にティタが死んだとしてもこれにより一週間以上の猶予を与えてくれる。


「そこは毒は解毒するとは言わないんだな?」

「……それはエナ次第だな」


ティタの視線はエナに固定される。


「ではこうしよう、魔蟲共を殺しつくし、人族の軍団をどうにか出来たらその毒を解毒しようじゃないか、いいなレオン」

「ああ、エナの鼻がいいというのなら問題ないだろう、で、これでどうだ?」

「おい待て、条件が一つ増えているぞ」


元の条件では魔蟲を倒すまでだったはずだ。


「いいだろう、こっちだって妥協してやっているんだ」

「ちっ、まぁいいさ」


なんやかんやで纏まった。


そして提示された条件は主に二つ。


・普通の魔蟲を10匹殺せば一日、『母体』を殺せば10日分、『王』を殺せば一月分の抗体薬を支給。


・『魔蟲』と『人族軍』を解決出来たら『命蝕毒』を解毒すること。その際にはティタが死亡していた場合は事前に解毒剤を渡した存在からもらう。


(悪くはない、だが命を落とすリスクを考えればもう少し欲しいところだ)


命は握られてはいるが解毒の可能性がある時点で天秤は少しだけ軽くなる、さらには問題解決に掛かる労力と命を落とすリスクこれは天秤に釣り合うのか。


「…もう少しおまけを付けてくれないか」

「……おまえ、条件を付けられる立場だと思うか?」

「なら、これでどうだ」


ティタが呆れているとが、エナは服装の内側に手を入れると、何かを取り出す。


「これは?」


取り出されたのは深い緑の結晶が付いた腕輪だ。


「これは?」

「ヨク氏族お手製の腕輪だ、以前一戦交えた時に一人の男がくれてな」

「「………」」


レオンとティタの表情が面白いことになっている。


「これをやるから協力しろ」

「いや、これだけを貰ってもな」

「安心しろ、それには面白い力があってな、魔力を流してみろ」


言われた通り魔力を流すと、腕輪が独りでに浮き上がる。


「その状態のまま、飛んでみろ」

「???ああ」


立ち上がり軽くジャンプすると思ったよりも飛び跳ねる。


(これは…)

「その腕輪は魔力を流せば身を軽くすることができる、ただ注意しなければ一つ、魔力を多く流してしまえば宙に浮いて身動き取れなくなるから注意するんだな」


効果が収まったのか自然と腕輪は垂れさがっていく。


すぐさまモノクルを取り出し鑑定する。


―――――

飛翔石の宝輪

★×3


【浮遊】


ヨク氏族の伝統工芸品。魔力を流せば宙に浮く希少な飛翔石を使われており、宝輪に魔力を通せば体ごとを宙に浮かせることができる。

―――――


「どうだ?これで足りないなら同じのをいくつか用意しよう」

「…どのくらい用意できる?」

「宝輪は作られている数による、原石はそうだな……用意できるのは同じ奴が100までだ」

「数は少ないのか?」

「いや、一度縄張りにしたことがあったがその時は結構な鉱床があったぞ」


念話の翻訳で取れる場所ではなくはっきりと鉱床と出た。つまりは結構な量は保証されているだろう。


そしてエナの言葉で一つの思い付きが浮かぶ。


「なぁ俺も縄張りを持つことはできるのか?」


「「「……はぁ?」」」







それから三人の協議の元、不可能ではないと判断される。


だが


「アルバンナでは自分の縄張りを作ったらいくつかの絶対的なルールが敷かれるが問題ないか?」


レオンの話だと縄張りを持つことは氏族を持つことと同じ。なので氏族の長としての役割を行わないと氏族の長としては認められないということになる。


そしてそのルールなのだが。


「一つ、氏族の長は戦士を率いて氏族を守れる実力を見せねばならない。つまりは力を示し続けろと言うことだ」

「二つ、他の氏族を蔑ろにしてはならない。これは争いで手に入れた縄張りの中にいる全員に理不尽な対応はするなってこと」

「……三つ、我らの敵となる存在が現れたら、ほかの氏族と手を取りそれの対処に当たること。魔蟲や今来ている人族(ヒューマン)の奴らを倒すということだ」


三人から告げられた内容を吟味する。


「力を示すのはどうやる?」

「簡単だ、力を見せるか、仲間との力を見せるかをすればいい」

「常に縄張りにいる必要はあるのか?」

「別段そういうことはない、ただ長がいないとき縄張り争いを申し込まれればほかの仲間が応じなければいけないからな、長がいないうちは危険になりやすい」

「もちろん、それは長が最も力を持っている時の場合だ。配下に力が強いものを持てば問題はない」

「…ただ、それは稀。なにせ力を持てば成り上がりたいと思うのが俺達だ、わざわざ下に付くなんてことはよほどのことが無いとあり得ない」


なるほどな。


「じゃあ次に縄張り争いするにはどうすればいいんだ?」

「必要なのは戦士の身分だけだ、それさえあれば縄張り争いには参加できる」


これで話は決まった。


「この腕輪はいらん、代わりに俺に戦士の身分をくれ」


すると、三人は渋い顔になる。


「はぁ~お前ら人族(ヒューマン)にはわからないがな、戦士とはアルバンナで生きている存在からしたら誰もが目指すものだ、それを報酬で用意できると?」


レオンが怒りを孕んだ声でそういう。


「へぇ~そうなのか、じゃあその戦士になるにはどうしているんだ?」

「……そんな複雑なことはしない、一人で魔獣を殺すことができればいい、ただそれだけだ」

「え?それだけか?」

「ああ、その後に、倒した魔獣の力をもらい受け、真の戦士になるだけだ」


真の戦士が何なのかわからんがとりあえず獣を倒せば戦士として認めてくれるそうだ。


「じゃあ、試練を受けさせてくれ、そして合格したら戦士と認めてくれないか」

「それならばいいだろう」


こうして全面的に獣人に協力することになった。

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