魔蟲の軍勢
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「ということで国と呼べるものは無いんだ」
「納得だ」
しいて言えば氏族の名前が国の名前というわけだ。
「それでレオン、戦の方はどうなっている?」
「ひとまずは押し返したぜ、だがまた押し返されるだろうよ」
テオとレオンが軍のことを話し合う。
「まぁ仕方ないか、くそ虫どもに割く戦力もあるからな」
「本当にな、奥に引っ込んでくれていれば人族の軍なんて一発で蹴散らしてくれるのに」
(……くそ虫?)
レオンとテスの会話に気になる部分があった。
「人族以外にも戦争しているところがあるのか?」
「その通りさ」
「ああ、魔蟲の奴らだ」
魔蟲。これは魔物の分類で魔獣とはちがい魔物の中で昆虫の特徴を持つ者の分類を指す。
「正直なところ人族か魔蟲のどちらかに集中すれば片方は必ず打ち倒すことができる」
レオンは自信満々に宣言する。
「ならすればいいんじゃないか?多少被害が出るのもやむなしと考えれば全く問題ないんじゃないか?」
「そうであればいいんだがな」
「さすがに短期間では無理だ、全力で潰しにかかっても早くて半年は掛かる。その間に背を突かれて私たちはおしまいさ」
獣人たちは両方に武力を割いている訳だ。片方が最短でも半年となると確かに両方同時に相手しなければいけない。なにせ片方を自由にしてしまえば半年でもだいぶ攻め込まれてしまう。
「なるほどね、それで話を戻すけど俺の処遇は?帰してくれたりするのか?」
するとこの場にいる全員の視線がハイエナの獣人、エナに向かう。
「わからん、だが今はまだ帰すべきではないな」
「帰してはくれるんだな?」
「オレの鼻が問題ないと言うまでな」
鼻?
「ああ、エナの鼻は特別なんだ」
レオンが自慢げにそう言う。
「どう特別なんだ?」
「それは言えない」
さすがにそこまでは教えてくれないか。
「あっ、そうだ、この子を魔蟲の部隊に入れれば?」
バロンの妻の一人がそう提案する。
「おい、さすが」
「だって、この子相当できるでしょ」
牛の獣人の言葉で全員の視線がこちらに向く。
「ひとますは自衛できるようにはしているが、戦えるかと言うとそうでも」
「…」ヒュン
「あぶね!?」
ないと言おうとした瞬間エナの爪が眼球めがけて飛んでくる。
それを寸前で回避する。
「ある程度は動けそうだな」
(この女)
力が無いふりをして、戦いを避けようと考えていたんだがな。
「………まとめるぞ、まず俺が連れてこられた件だが、真相は不明なんだよな」
「ああ、エナの独断だ」
「そしてエナは俺に何をしてほしい、目的があってで攫ってきたわけじゃないんだよな?」
「ああ、オレは本能に従っただけだ」
「………いろいろ言いたいが、本題に入るぞ。まず俺の扱いついてだ」
何度も回り道してようやく話ができる………………本当に疲れた。
「まず俺に関しては、一週間ごとに薬を飲まなければ死ぬ毒打たれている。だから俺は逆らえないと言えば逆らえない」
するとレオン以外の視線がエナとティタに向けられる。
(まただ……なんでこの二人に侮蔑の視線が送られるんだ?)
バロンやテオすらも侮蔑の視線を送る。
「エナ」
「必要なことだ、じゃなければすぐさま逃げるぞ」
「いや、逃がしてくれよ」
「だめだ、逃げたら危険な匂いがする」
「はぁ~、またそれか」
「悪いなテト姐」
「まぁ、いいさ」
「話を戻すぞ、で、俺はこの毒でここに居ざるを得ないわけだ」
もちろん『飛雷身』で逃げられることは伝えない。
「何度も言うが俺の取り扱いは決まってない、戦闘もある程度できるがその魔蟲とタダで戦わされるのはまっぴらごめんだ」
「駄々をこねてどうにかなると思っているのか?」
「だが命しか縛られていない。素直に言うこと聞くと思うか?お前らは命と誇りどっちが大事だ」
そう言うと理解してくれたようだ。
(別段逆らおうと思えば逆らえる。運が絡むが近くにいる獣人を殺して『飛雷身』でリンの元まで逃げる。その後は『浄化』して毒を消してもらうこともできる。もちろん、毒が消せるかどうかも運しだいだが)
出来ない可能性がゼロでないことからそちらに賭けることもできる。
「(もちろん、穏便に毒を抜いてもらうことができればそれに越したことはない)戦うことを総て拒否するつもりはない。だがただ命令されて従うと思ったら大間違いだ」
「ふ、ふふ、ふははははははは」
するとバロンが大声で笑いだす。
「いい、いいぞ、俺はお前が気に入った」
「ああ、そうかよ」
気に入られたからなんだって言うんだかな。
「お前、俺たちの氏族に入らんか?」
「「「「「は!?」」」」」
「おい、バロン」
「テト、止めるな、こやつは言い雄になるぞ」
バロンは先ほどまでとは違いテトとまっすぐに視線を交わす。
「はぁ~好きにしろ」
「ああ、さて返答は?」
全員の視線がこちらに集まる。
「待遇次第だな」
「むっ」
先ほどまで嬉しそうな顔になっていたのに表情が曇る。
「なんだ?」
「はぁ、いや、なんでもない…………お前は何なのだ?」
「というと?」
「俺が理想とする男のようになれば、俺が忌避すべき男のようにもなる」
「俺は俺だよ、どんなもなにもない」
俺とバロンの視線が交わり、お互いの心を見透かそうとする。
「よくわからん」
バロンはそういい寝そべる。
「まぁいい、それで結局どうすんだこいつは?」
バロンは俺以外に意見を聞く。
「「「「さぁ~」」」」
「「「わかんな~い」」」
するとレオンとエナが目の前に来る。
「エナ、こいつは殺しちゃダメなんだよな?」
「ああ、それは一番まずい」
「では手伝ってもらえるなら?」
「得策の匂いがする」
「じゃあ一択だな」
相談するのはいいが、俺に聞かせていいのかよ。
「では魔蟲どもの討伐に協力してほしい。これがなされれば無事に君を開放することを約束しよう」
そう言ってレオンは見詰めてくる。
その瞳には嘘を言っているようには見えなかった。
「…………詳細を話してくれ」
「分かった、じゃあ、エナ行くぞ」
「あいよ、ティタ、そいつを運びな」
柱の傍に居た蛇の獣人ティタが有無を言わずに俺を担ぎレオンとエナの後について行く。
「って、おい!?」
「それじゃあ行くぞ!!」
俺の言葉を無視し、レオンが『獣化』するとエナとティタも『獣化』し後を追う。




