清めとステータス
あれから一週間、俺は馬車に揺られ王都に訪れていた。
「それで父上、俺のほかに誰が清めを受けるのですか?」
「今年は第一、第二王子がともに受けることになっている」
「へ~」
「ほかにはグラキエス侯爵家の令嬢もおるな、ほかにも武で有名なアスレト伯爵家嫡男、魔術で有名なグリスバ子爵家などもいるみたいだな」
「結構いますね」
「まぁそうだな、貴族の間ではこの年は黄金期だと噂されているぐらいだぞ」
「………どうせほかの年にも黄金期とでも言っているのでしょう」
「…………」
そんな会話をしていると王城よりも少し小さいくらいの建物についた。
教会はまるで王城に張り合うように建てられている。
「見栄っ張りだな(聖職者なら清貧にしてろよ)」
わざわざ王城と対比できる位置にあるのは、完全に国で二番目に偉いということを知らしめたいのだろう。
「っっ馬鹿、ほかの奴らに聞かれないように」
俺の言葉に父上はすぐさま反応する。
そのまま手を引かれて中に入ると結構な数の親子が集まっている。
「全員貴族の親子ですか?」
「そうだよ」
俺たちが中に入ると注目が集まる。
「お久しぶりです、リチャード殿」
「おお、お久しぶりですな。グラス殿」
やってきたのは筋肉隆々の大男だった。
「父上こちらの方は?」
「ん?」
「ああ失礼、我が息子、バアルだ。バアル、こちらは近衛騎士団団長のグラス・セラ・シバルツ殿だ」
ということは騎士で最も偉い人ということか。
「お初にお目にかかりまして俺はバアル・セラ・ゼブルスと言います」
「これは丁寧にありがとう、近衛騎士団団長を務めているグラス・セラ・シバルツだ」
握手した手は固く分厚かった。
「聡明なお子さんですね」
「そうでしょうそうでしょう、この前も私の執務も手伝ってもらったくらいです」
「そ、そうなのですか」
話を聞いていたほかの貴族たちがこちらを見ている。
品定めをしているのだろう。
「皆様方、準備ができましたので、中にお進みくださいませ」
準備ができたようなので全員聖堂内に入る。
「では清めを受ける子供のみ前に出てください」
「では、行ってくる」
聖堂の中に入ると多くの神官と中心に大きな水晶がある。
「では皆さん私の真似をしてください」
神官の女性が膝をつき祈りの姿勢を取るので俺たちも真似をする。
「ああ、大いなる天におわす神々よ―――」
長々と口上が述べられるので薄く目を開けて周りの様子を見る。
(全員退屈そうにしているな)
周りはあくびをしたり、眠ったのか首が上下運動をしている。
その中で真剣にやっている者たちもいる。
中でも目を引いたのが銀髪の少女だ。
とても真剣に祈っている。
(なんか事情でもあるのかな?)
そうこう考えていると頭に何かが降りかけられる。
「これで皆は神々の加護が与えられた」
すると何やら体が変な感じがする。
「おお、なんだこれ」
「すげぇこれが神の加護か」
俺は頭に残っている雫を手で取ってみる。
(なるほど)
このからくりがわかった。
「では神の加護を確かめる、名前が呼ばれたらこの水晶の前に来てくださいませ、まずはエルド殿下」
最初に呼ばれたのは第一王子エルド・セラ・グロウス。
紫紺の髪に赤い目が特徴の男子だ。
「…………」
「ではこの水晶に手を触れてください」
王子が水晶に手を触れると空中に表示される。
――――――――――
Name:エルド・セラ・グロウス
Race:ヒューマン
Lv:5
状態:普通
HP:84/84
MP:124/124
STR:5
VIT:4
DEX:6
AGI:4
INT:8
《スキル》
【剣術:5】【火魔法:1】【謀略:2】【宮廷作法:8】【礼儀作法:7】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
――――――――――
「「「「「おお~~~~~」」」」」
歓声が上がる。
「次にイグニア・セラ・グロウス様」
「俺様か」
前に出たのは第二王子イグニア・セラ・グロウス。
赤い髪、赤目が特徴の俺様系男子だ。
「ではこちらに手を」
「わかっている」
――――――――――
Name:イグニア・セラ・グロウス
Race:ヒューマン
Lv:7
状態:普通
HP:98/98
MP:75/75
STR:7
VIT:8
DEX:5
AGI:6
INT:5
《スキル》
【剣術:6】【槍術:5】【格闘術:6】【身体強化:2】【宮廷作法:2】【礼儀作法:3】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
【烈火ノ炎王】
――――――――――
「「「「「「「「おお~~~~~~~」」」」」」」」
こっちはさらに大きい歓声が上がる。
どうして第一王子よりも大きいのか。
「殿下がユニークスキル保持者とは」
「これで我が国も安泰ですな」
このような声が聞こえる。
どうやらユニークスキル持ちは相当な評価を受けるようだ。
「次にユリア・セラ・グラキエス様」
「はい」
呼ばれたのは先ほど熱心に祈っていた少女だ。
「では手を当ててください」
「……はい」
――――――――――
Name:ユリア・セラ・グラキエス
Race:ヒューマン
Lv:2
状態:普通
HP:54/54
MP:145/145
STR:4
VIT:2
DEX:8
AGI:4
INT:9
《スキル》
【水魔法:4】【裁縫:7】【化粧:5】【策略:3】【礼儀作法:12】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
【鋭氷ノ女帝】
――――――――――
「「「「「「「「お~~」」」」」」」」
「グラキエス家の令嬢もユニークスキルを持っておられるとは」
「いやはや、今年はすさまじいですな」
だが彼女の表情はすぐれない。
「なんだようれしくないのか?」
「イグニア様……」
「俺もユニークスキルを持っているから仲間だな!」
「……ええ、そうですね」
「なんだ暗いぞ!もっと笑え、そうすれば嫌なことも忘れられるぞ」
「……こうですか?」
「そうだ、笑うとかわいいんだからさ」
「………ふふ、ありがとうございます」
暗い少女は頬を赤く染める。
それから二人は笑いながら下りてくる。
(青春してるんだな)
俺は前世の記憶があるからか爺臭くなっている。
「次、バアル・セラ・ゼブルス様」
名前が呼ばれたので壇上に上がりそのまま水晶に手を当てる。