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獣人の体系

4/10まで12時・19時の毎日二話投稿いたします。


読み飛ばしにご注意を。


※この度再投稿することにいたしました。もしこの作品のブックマーク、評価してくださっている皆様はもしよろしければ再投稿先でもお願いいたします。


変更点などはあらすじに記載しておりますので、参照ください。


再投稿先はこちらのURLとなります。

https://ncode.syosetu.com/n5978gw/

俺がいたのは石造りの神殿の一室だ。


形はピラミッドに近く、一番上の部分にミニパルテノン神殿のような建物が建っている。


「ほぉ、お前か不幸にもとっ捕まえられたバカは」


王と呼ぶには荒々しい様相で鎮座している大男がどうやらレオンの父親らしい。


外見的にはレオンと同じ特徴をしているが、レオンをさらに野太く頑強にしたような人物だ。


「え~と、陛下においてはご機嫌麗しゅう」

「いらんいらん、俺は獣王とは呼ばれてはいるがお前ら人族(ヒューマン)のような王ではない。そうだな、どちらかというと少し偉いおじさんって感じで接してくれていい」

「…………」


思わず周囲を見渡したのは仕方がないだろう。なにせ王座らしき場所にいるのだが、全く王に見えない。


親戚の集まりで一番出世しているおじさんという印象だ


「あなた?」

「ん、ん、それでお前の処遇についてだったな」


鹿の角のようなものが生えている女性に何か言われると焦ったように話を変える。


「(母親は鹿の獣人なのか)ええと、では」

「俺はバロン。テス・バロンだ。気軽にバロンと呼んでくれ」

「………レオン?」

「問題ないさ、親父は別に尊敬されるようなことは何もしてないんだから」

「おい、レオン、言い過ぎだろう」

「そうだな、戦しか取り柄がない、平時では何も仕事をしていないニートの親父だ」

「……さすがの温厚な俺でも怒るぞ」

「弁明があるならしろよ」

「よかろう、その喧嘩買った!!!」


ガァア!!×2


咆哮が二つ鳴り響くと同時にバロンとレオンの姿が掻き消える。


「って、おいおいおいおい!?」


なんとバロンはレオンに突進すると、レオンはそれに抵抗しようとし二人とも縺れながら神殿の外に吹き飛んでいく。


「いいのか!?あれ!?」

「ああ、いつものことだから」


エナは慣れているようで、おれに放っておけという。


「いつのときも男はバカばかりだ」

「ほんとうにね、エナちゃんもあのバカをいつでも見限っていいわよ」

「そうそう、男が張り合うのなんていつものことなんだから」

「ほんとうよ、家の弟もね」


どこからか兎、猫、熊、犬、鼠、リス、牛、シマウマの獣人が出てくる。


それも全員女性だ。


「えっとあなた方は?」

「私たちはバロンの妻よ」

「私たち(・・)?」

「そうよ~」


男ならもげろと思わなくもない。


「まぁ正妻は私たちじゃないけどね」

「そうそう、テトならもうすぐ帰って来るんじゃないかしら」


どうやら女性を束ねているのは他の人物のようだ。


「というか俺の処遇について話すんじゃなかったのかよ」

「そうなんだがなぁ、ああなったらひと段落しないとどうにもならん」


エナに話しかけるんだが処置なしという顔をし、柱の陰に座る。


「えぇ~」

「……静かにしていろ」


そう言うと蛇の獣人がエナの傍でたたずむ。


(いや、俺にどうしろと)


「どう、よかったら、これでも食べない」

「そうそう、それに人族(ヒューマン)のお菓子とか教えてほしいし」

「装飾とかもどんなのがあるのか教えて」


ということでバロンとレオンの喧嘩が終わるまでバロンの奥さんの質問に答えることになった。








ドシン、ドシン


「なんだ!?」


重い足音が聞こえる。


「あ~テトちぁんが帰ってきたみたい」


神殿の外に出て下を見てみると、何か大きなものを抱えている人影が見える。


(嘘だろ、あれが人だったら象でも持ってきているのか?)


片腕で象サイズの魔獣を抱えながらこっちに来ている。


「え?あれがテトさん?」

「そうよ、テトちゃんが来たならあの二人も」


すると魔獣を地面に下ろすと高速で殴り合っているバロンとレオンに近づく。


そして







「何やっているんだ、馬鹿ども!!!」


ゴン×2


怒鳴り声と、とてつもなく痛そうな鈍い音が聞こえてくる。







ズリ、ズリ、ズリ


「「「「「「テトちゃん!おかえり!!」」」」」」

「よう、今戻ったぞ、それとアホ共も連れて来たぞ」


テトと呼ばれた虎の獣人の両腕には気絶したバロンとレオンが引きずられていた。


「ん?そいつは?」


ネコ科特有の細い瞳が俺を見据えてくる。


「なんで人族(ヒューマン)がこんなところにいるんだよ、しかもガキだし」

「オレが連れてきたんだよ」

「エナが、か………分かったお前の好きにすると言い」

「了解だよ」


なんか女性陣だけで話が進んでいく。


「いや、この二人に相談しなくていいのか」


床で伸びている二人を指さす。


「問題ないわよ、バロンはテトちゃんに逆らえないし、レオンはエナちゃんを信頼しているし」

「そうそう、男なんて力仕事をさせれば問題ないから」


思わずこの二人に同情したくなった。


「ぐぅう、どうなって」

「おい」

「って~、な!?」


伸びていたバロンが目を覚ます。


「ようやく起きたか、バカ亭主」

「テ、テト、戻ったのか!?」

「なんだい、旦那の代わりに狩りをしてきてやったのに何だいその言い草は」

「い、いや、そのことに関してはいつも感謝しているさ」

「まぁいいさ、それでバカ息子となんで喧嘩をした」

「いやな」


息子に挑発されたことを伝えるバロン。


「何も間違ってないじゃないか」

「いや、まぁ、そうなんだが、明らかに馬鹿にした口調だったからさ」

「それでも、ここでお飾りの長をやっている親父より、軍を作って指揮している息子の方がまだましだと誰もが思うだろうよ」


……軍を作った?


「あ~、夫婦の話し合いに割り込んでもいいか」

「ああ、すまないね、とりあえずあんたはバカ息子を交えてあとで説教するから覚えときな」

「お、おう」


そう言うと俺の前に座り込むバロンとテス。


「さて、何から話そうかね」

「まずは俺の処遇について頼む。ここではっきりさせておきたい」

「そうさね……エナ、あんたはどんな目的でこいつを連れてきたんだ?」

「さぁな」


いや、さぁなって、お前が連れてきたんだろう。


「俺はそいつを連れてきた方がいいと判断したから連れてきたそれだけさ」

「その()かい」

「ああ、しかも今までに感じたことがないくらいのやつだ」


バロンやテト、エナは何かを理解しながら話を進めるが、俺はついて行けない。


「まぁお前の扱いはすべてエナに任せるからさ、あとはそいつに聞いてくれ」


そういって処遇が告げられるが、よくわからない。


「他に聞きたいことは?」

「そうだな、この国は何て呼べばいい?」

「「「「「「「国?」」」」」」」


するとこの場にいる全員から疑問の声が上がる。


「ぐぅう、ここは国なんてものは無い」

「大丈夫か、レオン」

「ああ」


横で伸びていたレオンが起き上がる。


「あ゛~、グラグラする」

「たく、軟だね、もうすこし筋肉つけな」

「……御袋の拳を耐えられたら化け物だろう」


そう言って悪態つきながらテスの横に座る。


「あ~親父や御袋は外の世界には疎い、だから俺が説明しよう」

「頼む」









まずレオンたちの国。ここではグロウス王国でも使われていた蛮国と呼称する。


蛮国なのだが、ここには身分制度や似たようなものが無い。なのであるのは純粋な個の力による称賛だけとなっている。


レオンしかり、エナしかり、バロンやテトと言った具合にだ。なので俺のようにゼブルス家と言った具合ではない。


ではどうやって蛮国を統治しているのか。それは縄張りという形で存在している。


これは一代限りの領地だと考えるのが最もしっくりくるだろう。自分で家を建て、狩場を抑えて、家族を繁栄させていく。そして老いるまでに我が子を育て縄張りを譲り、そこでひっそりと暮らすのが獣人の習慣らしい。


次に氏族についての体系だが、これは一定の縄張りに住んでいる者のことを言う。


例えば氏族の長に弟がいるとしよう、その場合は弟が取れる身の振り方は三つある。


一つ目が縄張りを出ること。生来の縄張りを出て、自分の縄張りを作る。蛮国には未開の地が多くあり、そのうちの一つに生活基盤を作っていく方法。そしたら自分が群れの長となりどんどん産み育てていく。


二つ目が氏族の一員になること。わかりやすく言えば分家のような存在になることだ。役割としては部下というよりも縄張りを一緒に守ることを約束した友のようなものらしい。外敵が来れば一緒に戦い、災害があれば一緒に復興する。


そして三つ目が長に縄張り争いを起こすことだ。これは獣人特有の考え方で長は何よりも強くあり家族を守らなければいけないとされている。なので縄張り争いを申し込まれればそれを受け入れ、勝負しなければいけない、これは場合によっては命を落とすことすらもある。挑戦者が勝てば群れの長に、氏族の長が負ければ長の座を譲らなければいけない。そして挑戦者が負けた時の処遇だが、これは残るか、去るかの二択だ。残る者は氏族の仲間をとして受け入れられ、去った者には何もしない。それが獣人で絶対のルールだとか。

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