魔力か命か
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なんと亀の老婆はフェウス言語を話すことができた。
「まぁな、長く生きているとできることがどんどん増えてきよるからのう、それで名前は?」
「……バアルだ」
「バアルか、それではバアルなぜお主がここに連れてこられたかわかるか」
「知らん、教えてほしいくらいだ」
「はぁ~、それは儂もじゃ」
「………は?」
俺が混乱していると同じく老婆も思わずと言った風に長いため息を吐く。
「じゃあ、なんで俺はそいつに連れてこられたんだよ」
「それを話せと言っても、あいまいな感じではぐらかされるんじゃよ」
疲れた表情でいう老婆に同情してしまいそうになる。
「おっと、自己紹介がまだじゃったな、儂は……グレア、が一番発音が近いかのう」
「獣人の発音だと?」
「ガゥエリィアゥ」
「了解だ、グレアと呼ばせてもらうよ」
「そしてくれ、それと話があるのはこの二人でな、儂は翻訳するために呼ばれたんじゃ」
「翻訳か……それじゃあ一つ聞きたいんだが、俺の魔力を封じたのはお前らなのか?」
「ちょっと待っておれ、**********、****?」
「*******」
「その通りらしいな、だがそれがどうしたんだ?」
「いや、魔力が使える様になったらグレアを挟んでの翻訳が必要なくなるんだ」
「???そんな魔法があったか?」
「ああ、といってもこれはエルフから教えてもらった魔法だ」
「ふむ、*********、*******」
「*******?」
「*********?**********」
「**************」
「**********」
しばらく何かを話し込む。
(さて、相手はどう出るか)
魔力が使えれば『念話』が使えてコミュニケーションが容易になる。だがそれはあくまで側面、本題は魔力が使用できるようになること。これが最も重要だ。
(まぁそれは許可されなくても、この状態の手がかりになれば御の字だ)
現状、魔力が使えないことに対してのとっかかりすらない。少しでもヒントが欲しい。
「****?」
「****」
「****、話が付いたよ」
「それで、どうしてくれるんだ?」
「結論からいうと、魔力を使えるようにしてやって言い、ただその代わりの条件がある」
「…それは?」
なんとなく嫌な予感がする。
「魔力を使わせる代わりに他の毒を受けてもらう」
「……どんな?」
「一週間ごとに薬を飲まねば死ぬ毒だ」
思わず舌打ちしたくなった。
「魔力を縛られるか。命を縛られるか、か……………いいだろう、魔力を自由にしてくれ」
「…ふむ、*******」
「*****」
するとハイエナの獣人は何かを告げられると外に出ていった。
「しかし、意外じゃな、普通ならこのまま魔力が使えない方を選ぶと思っていたのだが」
「まぁ普通ならな、だがここまで連れてきといて、それが殺すためだけなのか?どう考えても利得がない」
「お主ら人族の小さき芽を摘むためやもしれんぞ」
「それこそ意味が解らん、俺はグロウス王国の人間だ、今攻め入っているクメニギスともフィルクとも無関係だ。これでも俺はとある貴族の出なんだ、下手をすればグロウス王国も蛮国に攻め入る可能性すらあるさ」
「……こんな子供一人にそんな価値があるのかい?」
「まぁ普通はない、だがここに利権や金が絡むなら大いにあり得るんだよ。そうだな、おれなら『貴族の子供が殺された、それも何も関係ない我々の子をだ。獣人は人族とみるやすぐさま牙をむく獰猛な種族である。国家としてこれを見過ごすことはできない』とでも言って有権者に利益、利権やらをちらつかせて合意させるな」
「ふむふむ、それをお主の国は行うとでも?」
「行うさ」
俺とグレア婆さんの視線がぶつかり合う。
「*****」
すると先ほどまで傍観していた獅子の青年が何かを話す。
「なんだって?」
「はぁ~、安心しろ、子供を手に掛けるようなことはしない、といっている」
「……ならこんな場所に連れてくるなよ」
子供に同情があるならこんなところに連れてくんなよ。
「それはレオンじゃなくてエナがやったことだ」
「エナ?あのハイエナの獣人か?」
そしてこの獅子の青年はまんまの名なんだな。
「そうじゃ、あの子がエナ、『腐肉喰らい』とも呼ばれておるよ」
「すごい、と言った方がいいか」
「どうじゃろうな」
なにやら複雑そうな表情になっている。
どうやら有名なのだが悪い意味でのようだ。
「一応聞くが、俺はこれからどうなる?」
「そうさな、こればかりは坊ちゃんの意見を聞くしかないな」
「坊ちゃん?」
婆さんがそういうが目の前にいる獅子の獣人とは似ても似つかないので笑いそうになる。
「坊ちゃんはこう見えても軍を作ったのだから、えらいものだぞ」
「軍?蛮国は氏族の集まりじゃないのか?」
軍団がいるなんてことは聞いたことがない。
「もちろんいるぞ、ただ、軍の役割は戦の時だけだから意味がないだけだ」
どうやら獣人は暗黙の了解で危機に瀕した際は一致団結するようだ。
「*******」
出口から声がするのでそちらを見てみるとハイエナの獣人と俺を眠らせた蛇の獣人がいた。
「では、もう一度確認するぞ、魔力を使えるようにする代わりに一週間ごとに薬を撃たねば死ぬ毒を注入するいいな?」
「………ああ、いいだろう」
最悪、その薬で脅される可能性があるが、いざとなればリンと合流してこの毒を『浄化』できるかもしれない。
「わかった、*******」
「****」
蛇の獣人が近づいてきて腕を掴み、顔だけを蛇の姿に変える。
そして大きく口を開くとそのまま腕に噛みつく。
「っ」
腕に二本の細い牙が刺さり、そこから何かが流れていくのがわかる。
「しばらくしたら魔力が使えるようになるはずじゃ」
「今すぐではないんだな」
毒を注入し終わったら腕から離れてくれる。
魔力を操作しようとすると噛まれた腕の部分だけ少しだけ動かせるようになっていた。
「『亜空庫』、さてさて」
鑑定のモノクルを取り出して自分を鑑定する。
――――――――――
Name:バアル・セラ・ゼブルス
Race:ヒューマン
Lv:47
状態:『命蝕毒:7日』『魔痺毒[解毒中]』
HP:812/812
MP:5383/5424+200(装備分)
STR:99
VIT:93
DEX:117
AGI:144
INT:176
《スキル》
【斧槍術:53】【水魔法:3】【風魔法:2】【雷魔法:47】【精霊魔法・雷:38】【時空魔法:20】【身体強化Ⅱ:39】【謀略:44】【思考加速:27】【魔道具製作:38】【薬学:2】【医術:9】【水泳:4】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
【轟雷ノ天龍】
――――――――――
どうやら魔力が使えなくなっていたのはこの『魔痺毒』というのが原因だろう。
「それと……」
『念話』を発動させると同時にオープンチャンネルのように誰でも接続できるようにする。
「さて、これで話がしやすくなったな」
【念話】をしながら会話をすることで念話の範囲内にいる相手なら言葉の意味が通じるようになる。
「ほ~人族には面白い技術があるんだな」
「いや、たぶんこのガキだけの力だろう。潜入していた時にこれを使える奴はいなかったからな」
レオンは感心しているがエナは何やら考え込んでいる。
「しかし、なぜ暴れない?」
「冷静なんだろうよ、なにせ命を握られているのに動じてない」
二人とも俺を深く観察する。
「ひとまず暴れるつもりはないから檻から出してくれないか、堅いところで寝たから体が痛い」
「いいだろう」
「おい」
なんとなく言ってみただけなのだがすぐさま了承された。ただレオンの承諾に婆さんは異論があったようだけど、レオンは気にしていない。
これにはこっちが虚を突かれる。
「レオン」
「グレア婆、エナがわざわざ連れてきたんだ、問題なかろうよ」
そう言うと獅子の青年は檻を壊してくれる。
(エナが言ったからか……全幅の信頼を置いているようだな)
檻を出て背伸びをする。
「さて、俺の待遇はどうなる?」
「とりあえずは親父に聞いてみないとわからん」
「………親父?」
「ああ、親父だ」
それから話を聞いてみるとレオンの父親は氏族の長らしい。
「それじゃあ、早速行くぞ」
そう言うと俺を担ぎ上げて移動する。
「自分で歩けるんだが?」
「疲れているだろう、なら少しの間休憩していろ」
そういい、肩に担がれ、運ばれる。




