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獣人の境遇

「それで、今回はどうした?」


部屋に入れて事情を聴く。


「まずはゼブルス卿からのお手紙とお届け物を届けに来ました」

「父上から?」


手紙にはゼブルス家の家紋が入っている。


封を開けると、見慣れた筆跡の手紙が出てくる。


内容は、家族の近況報告と西部と東部の貴族の鞍替えの件について。


届け物はノストニアからで、どうやら余った神樹の実があったのだが神樹の実が俺の色だったことからすぐさま届けようとしたことらしい。


「それで、お前たちのほうは?」


わざわざ届けるのに裏の騎士団は使わない、それなりの理由があるはずだ。


「じつはこの度、バアル様がクメルスにいる間はイドラ商会の一員として補佐することになりました」

「なるほどな」


つまり、裏の騎士団から自由に使っていい手駒を渡されたということだ。


「それとエルド殿下のつながりは見えてきましたか」


これには首を振る。


「なぜ?バアル様なら何かをつかんでいると思ったのですが」

「実は学院内にいると政治関係の接触がないんだよ」


接触がなければ探ることなんてむりだ。


「ええ…」

「仕方ない、現にこの二か月間は研究ばかりしていたからな」


そのため、マナレイ学院での知り合いもそこまでいない。


「なるほど、だから私が派遣されたわけですか」

「そう思いたいな」


正直俺たちは目立つ行動はしにくい、なのでルナに動いてもらえればこちらは大助かりだ。


「では私は早速動き出します」

「頼む」


箱と手紙を置いて早速ルナは動き出す。


「さて、じゃあさっさといただくか」


箱を開けてみると中には黄色のドラゴンフルーツと翡翠色の桃、藍色のバナナが詰まっていた。


「見た目だけは本当に気持ち悪いよな」


俺はドラゴンフルーツを取り出し、リンに桃、ノエルにバナナを渡す。


(…うん、味はスイカだな)


それぞれ食べるのだが味と見た目のギャップがありどこか釈然としない。




















それから朝起きると朝食を摂り、身支度して研究室に向かい、ロザミアに講義をし、昼になると昼食をとり、魔力についての研究を始め、夜になると寮に戻り、ルナの報告を受けるというサイクルを取る。


そして研究発表会の前日。


「何か裏の界隈が少しうるさくなっていますが詳細はつかめず、ですがおそらくですがバアル様には関係ないものと思われます」

「そうか。しかし発表会に重なるということは、それ絡みなのか?」

「何とも言えません、ですが、この動きを国の暗部が見過ごすとは考えにくいのでおそらくは起こる前に沈静化するかと」

「だといいんだけどな」


現在この国の上層部は割れている、そんな状況下で沈静化できるもんかね。


ルナが退室すると少し不安を覚えながらもベッドに入る。
















翌朝、本日は研究発表会だ。


学院内には様々な催し物や露店が開いており、さながらお祭りのようだった。


「よく来たね、今日はお姉さんの奢りだ」


今日はロザミアの案内で発表会が始まるまで祭りを楽しむことになっている。


「まずは火魔法研究室のところが近そうだ」










なぜ研究室が発表会のほかに催し物を行っているか、それはひとえにほかの研究室と差をつけるために行っているの。


興味を持つ人が増えれば、その中に優秀な人材が増える確率も高くなる。


そしてほかの研究室よりも大規模に行えばマウントもとれる。


ほかにも資金繰りのために行っているところもある。


現に魔具研究室は自前の魔具を安値で売っているし、魔法薬研究室も魔法薬を売っている。


もちろんほかにも魔法体験らしきものをしているところもあれば、魔獣を飼い慣らし騎乗体験を行っている場所もある。










「どう?楽しめている?」


ロザミアさんは露店で売っていたジュースを|呷≪あお≫っている。


「ええ、楽しめていますよ」


証拠にリンとノエルは水魔法と風魔法の魔法模擬戦を楽しんでいる。







「おら!!さっさと運べ!!」






大声がしたのでなんだと思い見てみると露店の裏側、見えない部分で大きな台車が動いている。


常人なら一人でも無理そうなの重さをたった一人でだ。


「ああ、これからの発表会には必要なんだよ」


ロザミアも視線を向ける何事もないように説明してくれる。


「研究室によってはね、大掛かりな荷物が必要になるからね、今のうちから運ばせているんだよ」





パファン!!


何かが振るわれる音がすると同時に男の呻く声がする。


「たく、これだから獣人は、さっさと運べ」

「ぐあっ!?」


もう一度何かが振るわれる。


どうやら運んでいるのは獣人の奴隷だ。


(あの待遇じゃ長く持たないだろうな)


あの様子なら日常的に暴力を振るわれているのだろう。


しかもみすぼらしい襤褸を服代わりにしていて、体中には泥だらけだ、劣悪な環境であるのは間違いないだろう。


(まぁ俺には関係ないがな)


国の制度として奴隷は存在していることになる、それに俺がとやかく言うこともない。


「お、そろそろ、発表が始まる」


ということで会場になっている講堂に向かうとする。

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