とある種族
「へぇ~案外しっかりしているんだな」
現在ロザミアに連れられて、クメルス一番の奴隷商のもとに来ていた。
用意された広大な広場にサーカスみたいに特大のテントが張られている。
「しかし、意外だねグロウス王国から来た人たちのほとんどが奴隷を毛嫌いしているって聞いたんだけど」
「俺は場合によってだな、正直犯罪者は殺すよりも奴隷にして死ぬまで強制労働にした方が楽なんだと思っているほどだ」
「まぁたしかにね、とりあえず入るわよ」
ロザミアに続いて俺とリンが奴隷商に入っていく。
ちなみにノエルは研究室でお留守番だ。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「実はマナレイ学院のものだけど、少し奴隷を見せてもらいたくてね、これが紹介状だ」
ロザミアが学院長であるロー爺に書いてもらった紹介状を見せる。
「なるほどわかりました、用途は実験用でございましょうか」
そしてなぜ、ここにきているかというと、お目当てはとある奴隷たちだ。
「ええ、実は獣人を見てみたくてね」
獣人、それは人なのに獣の部分を持つ者たちのことを言う。
「ほぅ、少々凶暴ですが問題ないですか?」
「ああ、新しい研究員が見てみたいというもんだからね」
「ではこちらにどうぞ」
何重にもカーテンので仕切られている中を進んでいくと、一番奥の区画へとたどり着く。
「こちらは我が商会でも自慢できる品々となっております」
中に入るといくつのも檻があり、中には様々な獣の部位を持つ人間が入っていた。
「私は戦益奴隷担当のウーゴといいます」
中に入ると担当する商人が出てくる。
「では私は外で待っているので何かあれば声をおかけください」
さきほど案内してくれた人物はカーテンの外で待機しているようだ。
「それでは細かいご要望をお聞きしたいと思うのですが」
「そうだな~」
ロザミアがこちらを見てくる。
「では、できるだけ獣の部位が大きい者を見せてくれ」
「老若男女問わずで、問題ないでしょうか?」
「ああ」
「では少々お待ちください」
そういうとウーゴが一つの檻に近づき、何かを命令する。
檻の中の全員が立ち上がり、牢のぎりぎりで棒立ちになる。
「まずはこちらが犬に酷似した部位を持つ者たちでございます」
立ち上がったものを見てみると腕の一部や、足の一部が獣になっており、全員が何かしらの動物の耳が生えている。
「爪にや牙を見せてもらいたいんだが」
「もちろんです『口を開けて、手を出せ』」
全員が檻の外に手を出し、口を開ける。
「爪は鋭い者もいれば、人の爪の者もいる」
手を見ると全員が鋭いわけではなく、腕に獣の特徴を持つ者のみだ。
そして口の中なのだが。
「もしよろしければ台をご用意しましょうか」
「……頼む」
ウーゴが持ってきた空箱に乗らなければ大人の獣人は見えない。
「獣の牙になっている者もいれば、犬歯がやたらと発達している者、人の歯の者もいるのか」
個体差があるのがとても不思議だ。
耳も立っていたり、垂れていたり、丸くなっていたり、とんがっていたりと様々だ。
「これだけか?」
「いえいえ、蛮国からの奴隷はまだまだいますとも」
獣人は蛮国からの戦益奴隷だと聞く。
「こちらにはネコの特徴を持つ者です」
それからネコの特徴を持つ獣人、クマの特徴を持つ獣人、ウシの特徴を持つ獣人、シカの特徴を持つ獣人、ネズミやウマ、サイ、ウサギなど、様々な獣人がいた。
「どうでしょうか、お眼鏡にかなう人材はいましたでしょうか?」
「ふ~ん、ちなみに一人いくらになる?」
「そうですね、獣の部位によるのですが、大体、成人男性はクメニギス大銀貨7枚、成人女性は金貨2枚、子供に関しましては男の子が大銀貨4枚、女の子は大銀貨6枚といったところです。ああ、もちろん瑕疵などがありましたら値引きをさせてもらいますよ」
(人としての認識をしていないんだな)
奴隷商からしたら売り物だ、それも当たり前といえ当たり前だ。
しかも
「*****!!!!!*******!!!!!!」
「**!?****!!!!!」
「**********、**************」
時折、何かを話しかけてきているのだが、フェウス言語でもなく、聞いたことがない言葉だ。
「どうするかい?」
「その値段だと、予算が足りないな」
「多少お値引きは考えておりますが」
「残念だが、実験体だいくらいても足りない、もう少し予算が下りるようになってからにするよ」
「そうですか」
ということで奴隷商を冷やかすだけの結果になった。




