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向けられているもの

「今日は何かの催し物をやっているのか?」


眼前には広場一杯に布が敷かれて様々なものが売られている。


「これは月に一度の緑浄祭といいます」

「……趣旨は?」

「まあ大雑把に言うと、この日だけこの広場内での商売には税がかからないという物です」


フリーマーケットじゃねぇか。


税をかけてないという点では楽市楽座か。


「もちろん、出店するには許可が必要ですよ、きちんと問題ないと判断された物と決まった量しか売れないですから」


まぁ市場を荒らされたらたまらないからな。


たとえば大きな取引をこの日に行うとする、そうすれば商人は利益のすべてを懐に入れることができ、税を一切払わなくていいことになってしまう。


そんなことが許容されてしまえば、事前に話し合いだけしてこの日にすべての決済を行えば一切の税を払わなくていいことになってしまう。


(為政者からしたら断固として拒否だな)


「さぁ楽しみましょう」


レインはその思考をしているのか少し疑わしいが、当主でもないし、それに携わる人材でもないのでどうでもいい。


ということで主にレイン、リン、ノエル、メイド二人が中心となって市場を進んでいく。


(やっぱり小物売りが多いな)


約半分は装飾品が占めていると言っていいほど、それしか売ってない。


ほかには布や古着、櫛、ほかには使わなくなった武器や防具が売られている。


割合としては4割が装飾品、3割が皿などの日用品、2割が布や古着、1割が使い古された武器や防具といったぐらいだった。


一応屋台とかもあるのだが、そちらは広場というよりも端っこにあり、どうやら課税対象みたいだ。


(まぁ装飾品とかは売るのに最適だしな)


いつもは課税の対象になっており、少しだけ値上がりする。


なので普通は買わないのだが、この緑浄祭では税を掛けずに売れる、つまりは値下がりするのだ。


となると当然お得と考えて消費者の財布は緩んでいく。


そして買われたアクセサリーの良さが広まれば、名が売れて、さらに売れるという好循環が生まれるわけだ。


それゆえに職人は今日のために力を入れている。


もちろんこれはいい品を作れることが最低条件となっているが、やはり売れやすいのは確かだ。


「やっぱり、リンさんは淡い緑色が似合いますね~」

「そうですね、髪が黒色で緑黄色はとても映えます」

「それでしたらもう少し服装を明るい色にしてみてもいいですよ」

「そうそう、もう少し飾り付けしなきゃもったいないわ」

「あ、ありがとうございます」


なにやら一つの場所でリンが四人に囲まれている。


「ど、どうしょうか?」


すると緑色の鳥型の髪留めを付けたリンが戻ってくる。


緊張している。


「ん?似合っているぞ」

「あ、ありがとうございます」


すぐさま四人の輪の中に戻っていく。


(…………さすがにあの感情は理解できてしまうな)


だが何も言うことはない。


俺がその感情を持つことは―――










それから女性主体で市場を周るのだが。


「…………ん???」


四人の後に続きながら市場を散策していると、面白い気配がする。


「いや、まさかな………」


あり得ないと感じても自然と足がそちらに向いてしまう。


やってきたのは少し外れにある場所だ。


「…………」

「なんだい?この大鎌が気になるのかい?」


シーツの一部に置かれているのはバカでかい大鎌(・・)だ。


「婆さん、これどうしたんだ?」

「ん?これかい?倉庫をあさってたら偶然あってな」


…………まじか。


「ただ、少し妙でね、こんな大鎌買った覚えはないんだけどねぇ」


話を聞いているといつの間にか倉庫にあったらしい。


「婆さんが買ったのを忘れているだけじゃないのか?」

「そうかねぇ?」

「まぁその年だし、覚えてなくても何もおかしくないよ」

「失礼だね、あんた。冷やかしならとっとと離れな」

「すまん、すまん、じゃあお詫びにこの大鎌を買うよいくらだ?」

「………大銀貨7枚でどうだい?」

「失言したからその値段でいいよ」


婆さんは吹っ掛けているのだろうけど、その価値を知っている身からすればもはやゴミ同然の値段だ。


「しかし、物好きだね、そんな草刈りに使えなさそうなのを買うなんて」

「まぁかっこいいからね」


それからはお金を払い、とある大鎌を手に入れた。

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