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晩餐での探り合い

晩餐の料理はフランスのフルコースみたく一品ずつ出てくる。


「そういえば」


品を取り換えている最中に話しかけられる。


「どうやらグラキエス家のご令嬢と親しい仲だと聞いたことがあるのだが」

「誤解ですよ、父上がグラキエス家の現当主のアスラ様とお知り合いであるために、その縁で知り合ったにすぎません」


急にこの話をしだしたということは現在のイグニア陣営との距離を測っているのだろう。


「なるほど、ではリチャード殿はアスラ殿と近しい仲だと」


つまりはゼブルス家がイグニアよりなのかと疑っている。


「それはないでしょう」

「その理由は?」


すぐさま否定すると理由を尋ねられる。


「まず父上もアスラ様も第一を陛下と考えております」


もちろん家族云々ではなく、貴族社会の序列の話だ。


「陛下がアスラ様に継承位争いに参加するなと言えばすぐさま中立を保つでしょうし、父上も同様にイグニア殿下の派閥に入れと言われたらそれに従うでしょう」

「だがそれをしていないと?」

「はい、陛下は許容できる範囲での継承位争いを黙認しています。となると父上もアスラ様も自分の益のために動きます。それが」

「リチャード殿は中立であり、アスラ殿は親族の関係でイグニア派閥となったわけか……だがそれは近しくない言い訳にはならないぞ」

「でしょうね、ですが、これが国の問題が関わって来るなら別です」

「……なに?」


よし、上手く話題を反らせた。


「陛下は最初から国内のみで問題を解決しようと考えておられました、ですがエルド殿下とイグニア殿下がクメニギスとネンラールに接触したと報告がありました」

「……続けろ」


興味を惹かれたようで何より。


「当然ながら他国を巻き込んで、自らの利権を奪われたのであればたまったものではありません、なのでゼブルス家が監視に乗り出したのです」


これでゼブルス家とグラキエス家が近づいてもおかしくない理由となった。


「ではグラキエス家の接触は陛下の意思の元ということか」

「そう思ってもらって構いません、そして今、私がレイフォン様に話している意味もお忘れなく」


イグニアも監視しているが、お前たちもしているんだぞと警告する。


「それを留学しに行く貴殿が言うか」

「私に関しましてはグロウス王国発展のための研究をするためにです、既に陛下にもお話したところ快諾してもらいましたので」

「さようか」


それからも黙々と食事を続ける。


「そういえば、西部では様々な騎獣を取り扱っているようですね」

「ああ、キビクア家の騎獣兵団はグロウス王国随一の力を持つと自負している」


たしかに魔獣を乗りこなし戦争に仕えるのなら、十分な戦力として使えるだろう。


獣の力が発揮されやすい平原ならなおさら。


「バアル殿は専用の騎獣を持っているのか?」

「いえ、今のところは普通の馬を使っています」

「ふむ、では友好の証として好きな騎獣を一体贈呈したいと思うのだが?」


ここで素直に飛びついてはいけない。


なにせプレゼントを貰ったら、同じようにプレゼントし返さなければいけない。


それに外聞で派閥に入ったと誤解されそうだ。


「それはうれしい限りです、ですが父上が既に用意している可能性もありますので、御心だけで十分です」

「そうか、騎獣で物入りだったら気軽に訪ねてくれ」

「その時はぜひ」


その後もそれぞれの領地の特産などを話し合い、晩餐は終了した。








翌日、クメニギスへの道中に行くための買い出しをするのだが。


「ここが一番質がいいですよ」


現在レインの紹介でキビクア家で大店の食料取扱店にやってきている。


「たしかに、肉の質はかなりいいな」


屋根からつるされている食肉からは微かにだがおいしそうな匂いがする。


「ここにある肉はすべて、特別な育て方をしている家畜から取った最高級の食肉です」


肉を眺めていると店員が説明してくれる。


「値段は?」

「このひと固まりで銀貨1枚となります」


大体300gほどの塊で銀貨一枚。


この世界では安定して肉が取れないので比較的に割高になるのだが、この値段は別段に高い。


「残念だが、今回はクメニギスに行く道中の食料を求めているんだ」

「さようですか……でしたらこちらの燻製肉はいかがですか」


次に見せてくれたのは別の場所に置かれている燻製肉だ。


「こちらでしたらクメニギスの道中なら安全に食せます、さらにはお値段もお手頃です」


こっちだったら300gの塊で大銅貨2枚。


確かにこれなら長期の移動に最適だ。


「ただお貴族様の舌に合うかは保証しかねますので、ご了承くださいませ」

「味見はできるか?」


そういうと端っこを少しだけ削り取ってくれた。


「…なるほど」


少し塩味が効いている。


おそらくスープなどに入れるなら上手く調理できるだろう。


それからは野菜やドライフルーツ、塩や馬の飼料も買い込む。


「ではこれより、馬車の積み込みに入り込みます」

「ああ、見張りも忘れるなよ」

「はい」


買い込んだ食料は続々と兵士たちが運んでいく。


「?なんか?変な馬車ですね」

「まぁ冷蔵庫を内蔵していますからね」


馬車の内の数台は冷蔵庫を内蔵しており、長期の食料保存を行わせている。


「さて、あとは各々好きにしていい、だが、朝には集まるようにしろ」

「「「「「「「はい」」」」」」」


クメニギスへの準備が整ったので護衛や御者には明日まで休暇を与える。


「リンとノエルも休暇が欲しければ与えるが?」

「いえ、問題ありません」

「私も」

「了解」

「では市場に行きませんか?」


と言うことで二人と引き連れて、キビルクスの市場に行ってみる。

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