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行路の途中で

「では行ってきます」


新年際が終わると、次はクメニギスへの留学だ。


「「にぃに!」」


二人は足にしがみついてくる。


「「やくそく、わすれないで!!」」

「ああ、もちろん忘れないさ」


二人の頭を撫で、母上の元へと返す。


「それじゃあバアル元気でな」

「体壊さないでね」

「ええ、それと父上、あの書類は2日後までに決済が必要ですからね」

「……むろんわかっているよ」


そうは言うが視線が泳いでいる。


「安心してバアルちゃん、私がしっかりと見張っておくから」

「なら、安心ですね」

「……バアルからの評価はどれだけ低いんだ」


そう思うなら自身の仕事ぶりを振り返ってください。


「準備が整いました」


御者が声をかけてくる。


その後ろでは護衛である騎士の馬車が集まっている。


「では行ってきます」

「気を付けるんだぞ」

「気を付けてね」

「はい」


それから屋敷の者ほとんどに見送られながらクメニギスへと向かう。












「今頃、みんな何しているんですかね」


ノエルが空を見ながらそうつぶやく。


「セレナは簡単に想像がつくな」

「そうですね」


今でもギルドで小遣い稼ぎをしているのだろう。


「カルスとカリンは今でも教育されているだろうし、クラリスは王都のゼブルス邸でのんびりしているだろうし、ウルもネアも王都にいる」

「ネロさんは?」

「ネロはゼブルス領でアルベールとシルヴァの世話を任されたな」


ネロは狙われる身なのでゼブルス領にいたほうが安全だ。


それにあの二人の周りにいればネロを含めて三人を同時に守れるようになる。


「バアル様、見えてきましたよ」


リンの声で外を見てみると、広大な草原の真ん中にある大きな都市が見えてくる。


「あれがキビクア領の都市キビルクスか」


見渡す限りの草原に、一つだけぽつんと存在している大都市。


草原のところどころには放牧してある土地が見える。


「それじゃあ中に入ってくれ」

「わかりました」


御者に命令し、都市に入る。











門番に話を通すと、すぐさまキビクア公爵家の城に案内される。


「ようこそいらっしゃいました!!」


門をくぐった先には、エルドの婚約者レイン・セラ・キビクアが待っていた。


「久しぶりですね、レイン嬢」

「そうですね、一年ぶりぐらいですかね」


それからレイン嬢の案内で城内を案内される。


「お父様、お連れしました」


部屋に入ると、レインと同じ深緑色の髪を整えた渋い男性が座っている。


その顔は何度も夜会やパーティーで見たことがる。


「お久しぶりですキビクア公爵様」


この男性はキビクア家現当主、レイフォン・セラ・キビクア。


今回はノストニアとは違い、完全に私用で立ち寄っている。なので立場としては相手が絶対的に上だ。


「久しいなゼブルス家バアル」


相変わらず渋い声だ。


この声だけで惚れる女性も数多くいることだろう。


(ほんとう、なんで父上だけあんな感じなんだろう)


ほかの公爵家当主と比べても父上だけやたらとぽやんとしている。


「それで、今回は何の用だ?」


無駄な挨拶を一切省き、いきなり本題に入った。


「来年からマナレイ学院への留学が決まりまして、その道中にキビクア家を通るのでご挨拶に」

「……なるほどな」


一瞬何かを思案したようだが、何を考えているかはさすがに読めなかった。


「いつこの地を立つ?」

「明後日を予定しております」

「宿は?」

「あらかじめ手配した宿が」


そういうととあごひげをさする。


「明日はどうするのだ」

「食料の買い込みのみですね、ここから際はクメニギスへ一直線で進むので」

「……なるほど、では明日、レインに町を案内させよう」


レインに?


「こちらとしてはありがたいのですが、レイン嬢は多忙ではないのですか?」

「問題ない、ここで客人に案内しないのはキビクアの礼儀に反する」

「……ではお願いします」


ここで断るのは悪手だ、相手が礼儀を尽くしてくれるのにそれを断るのなら、よこしまな目的があると宣言しているようなものになる。


「話は変わるのだが、中立派はエルド殿下とイグニア殿下どちらが未来の陛下としてふさわしいと考えている」


急に話は変わる。


「それを決めるのは私ではありません」


明言を避ける。


なにせここで何か言ってしまえば、言質を取られてしまうことになりかねない。


「ほぅ、では誰が?」

「さぁ?ですが私ではないことは確かですよ」


問をはぐらかす。


「……今日の晩餐に招待したい、受けてくれるか」

「光栄です」


ということで今夜はキビクア公爵家で晩餐をすることになった。

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