今までの中で一番の強敵
護衛にはラインハルト、リン、セレナ、二人のメイドを付けている。
そのほかにも遠巻きに何人もの騎士がいるのが見える。
その数はざっと見30人はいるだろう。
(まぁ、現状だと妥当だな)
一応は隠れているおかげで二人は気づいていない(その他は気づいている)。
「毒は入っていないようです」
ラインハルトは毒見をして安全を確かめる。
「ほら」
「「わ~い」」
素直に喜ぶ二人を見て、周囲の人もほっこりとしている。
それからも二人を連れて、町を散策する。
日が落ちるころになれば
「「すぅ~~すぅ~~」」
二人はメイドの腕の中で穏やかな寝息を立てている。
「かわいいですね~」
「本当、バアル様はこういう時期は一瞬だったからね~」
メイドの二人は俺が生まれたころからおり、俺の幼少期を知っている。
「そうなのですか?」
「ええ、ほとんど自分でやっちゃうし、世話のし甲斐がなかったのよ」
「へぇ~でも想像できるわね」
「子供らしくなくて御当主様も奥方様も心配していたんですよ」
それからリンとセレナはメイドに俺の幼少期の思い出を聞き入っている。
「……」
「なんだ?」
「いえ、私も何となくですが、想像できると思いまして」
ラインハルトも俺の様子から子供のころどんなだったか想像できたのだろう。
それから全員で屋敷に戻り。
弟妹との休日が過ぎていく。
「では新年際の書類を置いておきます」
「うむ」
父上の執務室で4日後の新年際の計画表を置いておく。
「新年際が終わったら、すぐさま立つのか?」
「ええ、さすがにノストニアの生誕祭にまで顔は出せないので」
さすがに行き来に時間がかかりすぎる。
ある程度余裕を持つとして新年際を終わってすぐが一番いいタイミングだろう。
「アルとシルは拗ねるだろうな」
「大丈夫ですよ、長期の休暇がありましたら何度か帰ってきますので」
俺が長い間いなくなると告げると、何度も引き留められた。
「最後にはわかってもらえたので問題はないと思いますよ」
「だといいな」
もちろん、快諾とはいえない。
現に二人は今も拗ねている。
「新年際で何とかなだめてくれよ」
「わかっていますよ」
それからも新年際の予算案を作成する。
新年際当日
護衛とともにアルベールとシルヴァを連れて町に繰り出すのだが…
「「……」」ムゥ~~
頬を膨らませて、目を合わせてくれない。
「二人とも機嫌を直してくれないか?」
ブンブン×2
頭を降り拒否を示す。
(さて、どうしようか)
ここまで拗ねた子供の扱いはよくわかってない。
それから物で釣ろうとも、なんか話題を出しても乗ってこなくて。
どうすればいいか本当にわからない。
「バアル様、そろそろ」
時間を考えるとそろそろ広場に戻らなくてはいけない。
「「………」」
二人の視線がちらちらと広場の方を向く。
(……そうだ)
「「わ!?」」
二人を抱えて、身体強化をし、建物を駆けあがっていく。
「にぃ!?」
「ひゃ!?」
二人は抗議らしき声を上げるが、その時にはすでに建物の屋上に来ていた。
「ここならよく見えるだろう」
「「??」」
しばらくすると魔法使いが数名広間に出てきた。
「「わぁ!!!」」
そして始まるのが魔法の演舞だ。
「アルベール、シルヴァ」
「「な~に?」」
「確かに俺は数年遠くに行く」
すると楽しかった表情が曇っていく。
「だから約束しないか?」
「「約束?」」
「ああ、来年に必ず帰ってくる、だからその時はまた一緒に見よう」
「「……」」
二人は何も言わないが、徐々に表情が柔らかくなっていく。
「「約束!!」」
「ああ、約束だ」
二人を膝の上に乗せ、魔法の公演を楽しむ。
そして最後の演舞が終わり新年際が終了した。




