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掛けておくべき保険

「うへぇ、知りたくなかった世界」

「理想にある、キラキラした貴族なんてものはまずいないと思ったほうがいいぞ」


笑顔で握手をしても、ナイフを隠し持ち、背後を向けた瞬間刺し殺す感じだ。


裏の騎士団の報告では最も多い時期で日に7組の暗殺者集団が一月連続で続いたと報告が来たくらいだ。


「でもそれならなんでバアル様が留学するのですか?話を聞いている限り、裏工作を阻止するためにグロウス王国にとどまった方がいいのでは」

「………」


もちろん、俺も最初はそう思っていた。


だが多少勢力を落としてでもマナレイ学院に行く理由はあるのだ。


「まぁ理由としては二つ、一つは俺の安全確保」


当然ながら他国に行くことで、暗殺などの手を防ぐという目的。


それと、俺がいないことで勧誘に力を入れさせて、リソースを奪うこと。


「二つ目は?」

「…来る時の仕込みだ」


クメニギスで権力者の知己を作ること。


それは友好のためであり、抑制のためでもある。


なにせ既にエルドとイグニアはそれぞれクメニギスとネンラールと繋がり始めた。


となると両国とも利権やら土地やらは欲しいわけで、当然力を入れてくる。


その力の一端を俺の派閥に組み込むことにできたのなら抑制になる。


(それにイグニアとはグラキエス家とのつながりは少なからずあるが、エルドにはない、もしエルドが勝った時の保険を作っておかなければな)


イグニアが勝った時はグラキエス家との縁で問題ない、だがもしエルドが勝ってしまったのならば、俺とのつながりはほぼなく冷遇されるのが目に見えている。


なのでエルドの支援者であろうクメニギスと縁を繋ぎ、冷遇を避ける。


(イグニアが勝ったら、グラキエス家の密約でひそかに支援していました。エルドが勝ったらクメニギスから手を回していたと言い訳できる)


もちろん、イグニアが負けたらグラキエス家から、エルドが負けたらクメニギスの方から恨まれるが。


(恨まれたからなんだというのかな)


もちろん報復にチクるとしても、その時に成ればすでに遅い。


エルドにもイグニアにも支援の実績を残せば、敵の裏工作という可能性が出て、しらばっくれることもできる。


(となると縁を結ぶなら、どこがいいかな。あまりにもエルドに近すぎれば中立を疑われる、だが離れすぎると今度は裏からの支援に説得力が持てない。いっそ、過去のクメニギスに嫁いだ家とコンタクトを取るのも悪くないな、そうすれば会ってみたかったということで理由は立つ。もしくは海運関係でもいい、食料や魔道具の商売目的で近づいたのならだれも攻めることはまずないだろうから。同じ研究室ということで近づいてもいい。ほかには―――)








「ねぇ」

「なんですか?」

「バアルはいつもあんな感じなの?」

「そうですね、何か考え込むときは大体あのような感じです」

「顔が整っているから余計に怖く見えるのよね~」











留学する方針を決めて、準備をしていると。


「ば、バアル様、今回のお手紙です」

「……ご苦労」


現在、自室にはルナがいる。


「用件は?」

「は、はい、長距離用通信機の供給の依頼と定例会のご案内です」

「定例会?」


普段ならもう少し先なのだが。


「何か重要な情報が出て来たのか?」

「私の口からは何とも言えません」


口止めされているのか、それとも知らないのか。


まぁ行けば分かるだろう。


「了解だ、5日後のパーティーで問題ないよな?」

「はい、紹介状はすでにこちらに」


渡された招待状には俺と、父上の名前だけが載っている。


母上は二人を見ているから断るのが目に見えていたんだろう。


「名目は?」

「新たな『研究機関設立祝い』と言うことになっています」


まぁ、それなら俺が出席するのは理解できる。


「てことはフルク先輩も来るのか?」

「いえ、今回はバアル様のみとなります」

「それは変だろう、一応は主任となるはずだろう?」


そう言うとルナは不思議そうな顔をする。


「何言っているんですか?主任はバアル様ですよ」

「………はぁ?」


それから話を聞くと、新たに研究機関を設立するが俺が卒業するまでは実質活動停止にするらしい。


「さすがに平民のフルク・デュクライを主任にはできませんからね」


他の奴らを納得させるために俺を主任にしたそうだ。


「それに、フルクだけで研究ができるとお思いですか?」


もちろん無理だ。


それをわかっているから、俺を主任とするらしい。


「だが今は学生だぞ」

「その点も大丈夫です、陛下の命令で兼任させるようなので」


それはおれの仕事をさらに増やすってことか?


「………他に用件はあるか」

「ありません」

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