表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
357/470

しざるを得ない事態

「ふぅ~~ん、留学のお誘いね」


屋敷に戻り、イドラ商会の報告書に軽くを目を通しながら、学園長との内容を教える。


「まぁいいんじゃない?私もこうして他国に来ている身だし」

「だが、俺が行く場合お前はどうするつもりだ?」

「ついて行こうと思うのだけど?」


それはやめておいた方がいい。


「どうしてよ」

「どう考えても政治に巻き込まれるぞ」


ノストニアの王族というだけで取り込みには掛かるだろうからな。


「確かに学院内では政治の持ち込みは厳禁だ、だが外はその限りじゃない」

「なるほどね」


理解は示してくれる。


「じゃあ私はこのまま学園に残るわね」

「いいのか?これを機に一度ノストニアに戻るって手もあるけど?」

「それじゃあ私がこっちに来た意味がないじゃない」


クラリスがこっちに来たのは人族(ヒューマン)の体系や習性を学ぶためだ。


まだ十分な情報を得られてはいないのだろう。


「私は残るとして、ほかはどうするの?」

「聞いた話だと、従者は二人までしか連れて行けないようだ」

「ふぅん、リンは連れて行くわよね?」

「ああ」


毒などの警戒にはリンが一番最適だ。


(実力はあるし、索敵もできる、解毒もできる、護衛としては最適なんだよな)


となるともう一人のなのだが。


(知識があるセレナか、いや、あいつはやたらと学園にこだわりを持っているから無しだな)


無理に連れ出して、心証を悪くするまでもない。


連れて選択肢としてはラインハルト、ネロ、ノエル、カルス、カリン、その他大勢の騎士。


(個人的にあまり親しくない騎士は拒否したいな)


相手からしたらお近づきに成れるから喜ばれるが、俺からしたら信用できない者を近くには置きたくない。


ネロは論外、隠されているとはいえ王族の出だ、下手に誘拐されたら笑えない。


ラインハルトは近々、100人隊を任されるそうなので、時期が悪い。


となるとノエル、カルス、カリンの三択になるんだが。


「……ノエルだな」


礼儀や実力、家事を鑑みればノエルが最適だ。


「そう、ギルベルトは選んであげないんだ?」

「いや、あいつはタダの庭師だろ」


信用はできるが、アイツは護衛も索敵も無理だ。


「結構乗り気ね」

「まぁ、クメニギスの印璽が使われていては断りにくいからな」


つまりは国からの要請と言うことだ。


よほどの理由がない限り断ることはまず不可能。


「じゃあ強制みたいなもの?」

「そうじゃないが、文面を見る限りはかなりの根回しをされてそうだ」


発表の際に陛下と会って、意気投合としたと書かれている。


「まぁ相談してみるか」














数日後、農業大臣の任務で王都に来た父上に相談する。


「なるほどマナレイ学園からか」


屋敷で今までの経緯を説明すると、うなる声が聞こえる。


「う~ん、本当は残ってほしいけど、状況がな~~」

「どういうことですか?」


父上の口ぶりだと、行かなくてはいけない事情があるみたいだ。


「実はな―――」


王宮内で様々な部署がゼブルス家に圧力を掛け始めたのが確認された。


目的は中立派閥から勢力をそぎ落とし、圧力の影響を嫌がる貴族を取り込むこと。


「もちろん、バアルの逆鱗に触れない程度にだ」


ゼブルス家の逆鱗に触れたら食料の圧迫の他に魔道具の使用停止が待っている。


だがそれが鬱陶しいと感じる奴らもいる。


「東部と西部の境界線にいる領主に圧力を掛け、それぞれの派閥に囲い込みたいが」


魔道具停止できる時点で仕掛けることができない。


「だからバアルが危ないんだ」

「……暗殺ですか」


それで厄介な俺を排除(暗殺)しようとする動きがみられるわけか。


「それで少しの間、雲隠れとしてマナレイ学院に行けと」

「あと五年で両殿下は成人する、そうすれば本格的に政争が始まる、それまでに両派閥は規模を拡大しようとする」


そうなれば苛烈な手段を使うことも多くなる、だが苛烈な手段を取ろうにも南部に手を出せばゼブルス家が止める。


それをさせないために俺を排除する。


もし仮にそれが出来なくてもためらわせることができる。


「母上と二人はどうしていますか?」

「そっちは大丈夫だ、三人には常時100人の騎士を待機させているし、暗部の方も総動員している、さらには例の騎士団にも協力を頼んだから、万全だ」


そこまですれば襲撃などには対応できるだろう。


まぁ少しやりすぎな気がしなくもないけど…


「と言うことで少しの間バアルには不在になってもらい、それぞれ取り込み活動に専念できるようにしてもらう」

「中立派閥は多少縮小するが、取り込みに精を出している間は平和な時間が流れていくわけですか」

「ああ、それに他国と伝手を作るのもいいだろう?」


すると意味深な顔になる。


(中立派閥の縮小は本来、阻止すべきだ。だがそれをせず一時的にでも平穏な時間を確保する。これだけだったら南部貴族が削られるデメリットと俺の安全を確保するメリットしかない)


だがこれではデメリットの方が多すぎる、メリットも一時的に休学でもして領地に引きこもれば済む話だ。


となるとデメリットを起こす価値があることがなければいけない。


「………」

「………あ、そういうことですか」

「さて、分かったところでマナレイ学院の研究室の一覧を調べておきなさい」


父上との話し合いで方針が決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ