知識の独占
「それと、セレナ」
「は~い?」
部屋から持ってきたつまみを頬張りながらセレナが返事をする。
「これからスキルのことを無暗に吹聴するなよ」
「へ?」
「これから国は本格的にスキルや技について研究する、つまり知識を金にできるようになるということだ」
「じゃあ、私のゲーム知識も売れるの?」
「そういうことだ、だから」
セレナの傍に寄り囁く。
「俺が王家の数倍の値段でその知識を買い取ろうと思うんだが」
セレナは固まって動かない。
「王家が一つのスキルに銀貨一枚を出すなら、俺は銀貨3枚を、大銀貨数枚を出せば、その倍を、金貨を出せば、またその倍をだ」
悪い話じゃないだろう?
「そ、そうですね!じゃ、じゃあお願いします!」
なにやら顔が赤いが、気にせず話しを付ける。
「俺が要求するのは希少な技の条件、それと俺以外にその情報を漏らさないことこの二つだ」
「それだけ」
「ああ、それだけ、もちろんクラリスにもだ」
セレナとしゃべりながらクラリスにも目を向ける。
(婚約関係でも線引きはしておかなければいけない)
「でも…」
「セレナ、このことはバアルが正しいわよ」
クラリスも同じ立ち位置だったら、俺に漏らさないようにする。
「わかりました」
セレナも納得してくれたようで何より。
「にしてもスキルや技なんて真っ先に調べるのが普通じゃないの?」
セレナが質問してくる。
「それが普通じゃないんだよ」
「そうなの?」
スキルや技といったものは常識なのだ。
「理由は二つ、まず一つは調べるのが難解だからだ」
スキルはモノクルや教会の水晶を使えば、まぁ数値は分かる。
だが上位のスキルに派生する際の条件はなどは不明。
それを割り出すには多くの人数を調べて、どんな経験をしたかなど調査を大々的に行わなければいけない。
もちろん、技も同じ理由だ。
(正直、セレナの知識が無ければ、今回の発表もかなり微妙なものになっていただろうし)
俺が発表した、技の取得条件はセレナのものと同じだが、見つけた過程は出ちあげている。
「調べようと思えばできなくもないが、多大な費用と時間がかかる」
「え、でも」
「今回はお前の知識のおかげでかなりの短縮できたんだ」
少し背の低いセレナの頭を撫でる。
これがもし、ゲームみたいにアナウンスなどがあるなら使えるようになった瞬間を見聞し条件を精査しやすいが、現実にはそんなものが無い。
それを説明してやる。
「そっか」
「で、二つ目の理由だが、ただ単に気にする奴が少ないってだけ」
この世界では大々的に情報など出回らない。
だから強い技などもそこまで広がらないのが理由だ。
例えば遠くの人と連絡とれる手段があって、そこで強力な技の存在を知ったりしたら、調べるなどするだろう。
だが通常は遠距離で連絡手段など、まだ確立されていない。
だから技を知るのは周りの存在だけとなり、ただ聞くだけで済むからだ。
「わかったか?」
「う~んと、テレビで見たパフォーマンスとかは真似てみたくなるけど、そもそも見たことがないのなら真似したいと思わないってこと?」
変なたとえだが、合っているっちゃ合っている。
ちなみにだがクラリスとリンはテレビの存在を知らないので何とも言えない顔になっている。
「ということで、まず調べようとは思わないんだ」
「なるほど~~」
本当に理解しているのか?
そう思いながら屋敷に到着する。
何事もなく普通の日常を過ごしていたのだが、とある日に学園長に呼び出された。
「失礼します」
中に入ると、学園長が待っていた。
「よく来た、ソファにでも掛けてくれ」
学園長に言われて腰掛ける。
「それで、お話とは何ですか?」
「実は古い友人からこれが届いてな」
テーブルの上に手紙が置かれる。
「拝見します」
承諾を貰い、手紙を開く。
「???クメニギスから手紙ですか?」




