情報ぐらい確認してから行動しろよ!
俺は宿から急いで逃げていくあのお姉さんを見送る。
「にしても、思い切って宣戦布告しましたね」
宿の傍で控えていたラインハルトが話しかけてくる。
「はっ、最初はあっちがやってきたんだ。俺は反撃しているに過ぎないよ」
私は急ぎ王都に戻り報告を上げる。
「――――とのことです」
私の報告にこの場にいる全員が苦虫をつぶしたような顔をしている。
「わかった」
その声と共に私は部屋の隅に移る。
「それでどうしましょうか陛下」
「ふむ、厄介なことになったの」
「ゼブルス家のガキが、こざかしい真似をしおって!」
「陛下、ここは教会に協力してもらい、ゼブルス家を異教徒として排斥するのはどうでしょうか?」
「どうおもう?枢機卿」
「残念ながら難しいですね、今年に清めを行いゼブルス家の嫡子は神の祝福を得ました。そんな少年を異教徒として排斥することは」
「できないと申すか」
嘘だ、やろうと思えばできるはずだ。だが枢機卿が今年清めを行った少年を排斥してしまえば嫌な噂が立ってしまい立場が危うくなる。なのでやらないができないになるのだ。
「では食料の輸出に規制しましょう、そうすればいずれは音を上げるでしょう」
するとほかの貴族から失笑が漏れる。
「残念ですがそれも難しいかと、ゼブルス領は国でも有数の農業地です。逆に向こうが食料を絞り込めば王都での物価が上がってしまいます」
「それに魔道具はあと二日ですべて止まってしまう」
ここにいる全員がイドラ商会の魔道具の恩恵を受けている。
一人は農地には適してなく、食料が足りてないのだが大規模な冷蔵庫をいくつも買い込み、領地の食糧を保存していたり。
一人は雪が厳しい地域で、多くの領民が暖房機の恩恵に受けている。
一人は領地で飲み水が少なく、イドラ商会の浄水器をつかって飲み水を確保している。
このように少なからずイドラ商会、いやゼブルス家の魔道具を恩恵を多くの貴族が受けている、また教会も医療のために空気清浄機や食料を保存する冷蔵庫を多く使っているほどだ。
「「「「「………」」」」」
全員が難しい顔をしている。
イドラ商会の猛進を止めたいのだが、その恩恵は受けたい。
そのために営業停止勧告をし、これ以上魔道具を売れなくして、困っているところに手を差し伸べそれなりに便宜を図ってもらうつもりだったのだが。
「やはりその根幹の道具を奪えないものか」
このすべての魔道具を使えなくする魔道具が彼らの考えを完全に裏返しにした。
会議が停止していると扉を叩く音が聞こえる。
「失礼します、ゼブルス家から手紙が届いているのですが」
「…読み上げよ」
手紙を持ってきた者に読み上げさせる。
いろいろお伺いの言葉や時候の言葉などを省くとこのような手紙となる。
『うちの魔道具が止まって困っているだろう?再開させてやってもいいぞ、だがわかっているよな?』
無論これがそのまま書いてあったわけではない、何重にも装飾されて相手を不快にさせないようになっている。
この手紙を見た貴族たちは激怒している。
「陛下、このような手紙を出したゼブルス家を見逃すのですか!!!!」
「しかり!!調子に乗っているゼブルス家を叩き潰しましょう!!!」
このように議論は熱くなり戦争にまで発達しそうな勢いだった。
「…どう考える、アスラ」
この陛下は会議で一言もしゃべってないグラキエス家に助言を求めた。
「残念ながらこれについては賛同できない」
「どういうことだ!?グラキエス卿?!」
「簡単に言えば、俺は今回はゼブルス家の方に回るということだ」
「…説明しろアスラ」
グラキエス卿は陛下に無礼な物言いをするが誰も責め立てない。
それだけ陛下からの信頼が厚く、さらには子供のころからの親友なのだそうだ。
「今回は陛下に非がある、と考えているだけだ」
「グラキエス卿!?」
他の貴族はアスラ様を責め立てるがそんなものお構いなしに陛下に提言する。
「まず疑問なんだが、なんでイドラ商会に営業停止を突き付けた?」
「それはこれ以上富の一極集中を行わせないためだ!!」
「…本当にそれだけか?」
「……魔道具作成を国営にするつもりだったのだ」
「はぁ~、なんとなくわかった。営業停止に追い込んで食えなくなった職人を囲い込もうと考えたんだな?」
「…いかにも」
その言葉に呆れた様子を見せる。
「まずはそこから違う、あの商会で魔道具を作っているのは一人だ」
「おお!!グラキエス家は把握されているのですか!!」
「どなたですか!?」
「なんだ知らんのか、今話題に出ているバアルだ」
「は?????????????」




