ようやくの終わり
最後の兵士のステータスをチェックし、書類を渡し終える。それから村を出ると誰もいないであろう山の頂上に移動する。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~、あ゛ーーおわったー!!!!!!!!!!」
大声で叫ぶと自然と笑いに代わる。
それほどまでにつらかったのだ。
丸々一月を費やし、ようやくすべての兵士のステータスチェックが終わった。
後はそれぞれが記入し終わり、それを役人が回収し、届けられるというわけだ。
(ほんとう、なんどあの王様の顔を殴りたくなったか!!)
少し前まで陛下の顔を思い浮かべた、だけで自然と周囲に放電が巻き起こるほどだった。
「まぁ!でも、この後も……あるんだよな………」
頭の中で整理するとこれは一番高い山であっただけど、ほかにも十分高い山はある。
「続々届く、調査書を打ち込むのか……」
ステータスに関してはモノクルを使用した段階ですぐさま打ち込み、簡単な聴取に関しては音声録音をし、すべて『ニュクス』が文面にしてくれたから問題ないんだが。
紙となると話は違う。
「さて、何メートルの紙の山が出来上がっていることか」
考えるとどんどん億劫になっていく。
「はぁ~帰るか」
とりあえず館に向かって飛ぶ。
「さて、バアル様」
ゼブルス邸に戻ると、額に青筋を浮かべているリンに出迎えられた。
そのあと自室に戻り、詰め寄られているわけなんだが。
「仕方ない、置いていったのは悪いと思っているが、そうでもしないと到底間に合わない」
「ですが、護衛としては到底受け入れられない案だと分かっていますよね?」
リンからしたら絶対に諫めらければいけない案だったのもまた事実。
「だが、な、これは王命に近いことなんだ、それだったらほんの少し危険でも行うべきだろう?」
「その説明をエリーゼ様の前で出来ますか?」
うん、無理だろうな。
母上はたとえ陛下の言葉でも自分の家族に危害があるのなら突っぱねる。
「一応は私とセレナで留守をごまかしましたが、次に何かあれば、私たちは協力しませんが、いいですか?」
「ああ了解だ」
今回は何とか説得し協力してくれたが、もう同じことはできないだろう。
「それで、実験のほうはどうなっていますか?」
「ああ、それなんだが」
ノーパソを開き『ニュクス』とコンタクトを取る。
「ごく一部の技を除いては条件を制定することには成功したようなんだ」
『ニュクス』の編集したデータには
『【スラッシュ】:剣術スキル、刀術スキル
必要MP3
【動作:鋭い斬撃を繰り出す】
【効果:斬撃の強化】
基準:各スキルレベル5以上
STR10以上
VIT10以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【クラッシュ】:斧術スキル
必要MP3
【動作:力強い振り下ろし】
【効果:衝撃力の強化】
基準:斧術スキル5以上
STR14以上
※上位スキルの場合はスキルレベル一でも可
』
『【スイング】:槍術スキル、槌術スキル、杖術スキル
必要MP3
【動作:横薙ぎの一撃】
【効果:薙ぎ払いの威力上昇】
基準:各スキルレベル5以上
STR10以上
DEX10以上
※上位スキルの場合はスキルレベル一でも可
』
『【ラッシュ】:格闘術スキル
必要MP2
【動作:なし※殴る時に発動するため】
【効果:殴りや蹴りの衝撃力上昇】
基準:格闘術スキル5以上
STR10以上
VIT10以上
AGE10以上
※上位スキルの場合はスキルレベル一でも可
』
『【二連速射】:弓術スキル
必要MP3
【動作:無意識下で素早く矢を番える】
【効果:二本目の矢の自動装填】
基準:弓術スキル5以上
DEX10以上
INT10以上
※上位スキルの場合はスキルレベル一でも可
』
『【デュアルスラッシュ】:剣術スキル
必要MP7
【動作:最初の一撃から瞬時に返しの一撃を繰り出す】
【効果:瞬時に二度の斬撃を繰り出す】
基準:剣術スキル10以上
STR17以上
DEX15以上
AGE20以上
※上位スキルの場合はスキルレベル一でも可
』
『【ブレイク】:斧術スキル
必要MP6
【動作:自身で振り下ろす】
【効果:衝撃の強化に加えて、弱い箇所に分散させる】
基準:斧術スキルレベル12以上
STR20以上
DEX17以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【剛打】:槌術スキル
必要MP8
【動作:自分で振り下ろす】
【効果:硬いものであればあるほど内部に衝撃が広がる】
基準:各スキルレベル13以上
STR18以上
DEX22以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【エッジストライク】:槍術スキル
必要MP8
【動作:素早く突きを繰り出す】
【効果:刺突の威力上昇】
基準:槍術スキルレベル15以上
DEX19以上
AGE24以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【乱打】:杖術スキル
必要MP11
【動作:連続殴打】
【効果:一定動作を無意識下で再現する】
基準:杖術スキルレベル15以上
STR15以上
DEX20以上
AGE18以上
INT25以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【アローエンチャント】:弓術スキル
必要MP13
【動作:なし】
【効果:番えた矢に様々な属性を付与する】
基準:各スキルレベル5以上
DEX17以上
INT27以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【居合】:刀術スキル
必要MP3
【動作:鞘に納めた状態から素早い一撃】
【効果:無防備状態から瞬時に一撃を繰り出せる】
基準:各スキルレベル5以上
DEX18以上
AGE25以上
INT15以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
『【拳砲】:格闘術スキル
必要MP10
【動作:自動で構えを取り、空気を殴る】
【効果:拳の衝撃波を飛ばす】
基準:格闘スキルレベル15以上
STR20以上
DEX18以上
AGE22以上
※上位スキルの場合はスキルレベル1でも可
』
代表的に武系初期スキルで最初に覚える二つを挙げてみたが、このように技はそれぞれによって必要なステータス値やスキルレベルが変動していることが確認された。
(俺達みたいにレベルアップの恩恵を最大限受けているならまだわかるが、そんなことを普通はしていない、なので高度な技になればなるほど使い手が限られてい来る)
なにせ普通に戦闘を繰り返し、レベルアップをするのならSTR、VIT、AGI関連が良く伸びやすく、DEXやINTが伸びにくくなる。
これにより、本来必要なステータスを満たすことができず、技が使えないという現状が起きるわけだ。
「とはいえ、現時点ではだ、あとから続々とくる書類を見てさらに精査しないとどうなるかは不明だがな」
と言うことで本当にどのような形になるかは、書類が届き終わってからとなる。
「それにだ、リン、お前が使っている『風柳』も謎が残る」
「私のですか?」
以前、リンに聞いたら翠風流という刀術の流派でのみ伝承される技らしく。
技がスキルレベルとステータスに依存すると仮定したら、矛盾が起きてしまう。
「まぁこういうのはもっと時間をかけて調べないとな」
コンコンコン
扉がノックされるので話は中断される。
「失礼します、書類が届きました」
文官の一人が1メートルはある書類の束を運んでくる。
「……ついに来たか」
「あの、手伝いましょうか?」
「いや、これは俺がやらないといけない」
なにせ、すべてをこのノーパソに打ち込まなければいけなくて、さらに問題なのがこれ一台と言うことで一人でやらなくてはいけない。
「他のみんなに伝えろ。俺はこれが全部終わるまで、全員に休暇をやる」
「了解しました」
と言うことで、ここから第二の地獄が始まる。




