魔力供給システム
とある村~
「ふぁ~~」
一人の兵士が門を守っている。
「おい、交代だ」
「了解」
そういって中に戻ろうとすると、突然雷鳴が響き渡る。
「な、なんだ!?」
「わからん!?」
雷は門のすぐ前に落ちる。
「おい!兵舎はどこにある!」
「へ?」
雷が落ちた場所には一人の少年がおり、門番はすぐさま詰められる。
「あ、あれ」
「あれだな」
また光ったと思えば少年の姿が消えている。
「なんだったんだ?」
「さぁ?」
すると兵舎から何やら俺たちを呼んでいる声がする。
「おし、感謝する」
「いえいえ、よろしければ、ご歓待を――」
「遠慮する!」
すぐさま『飛雷身』を発動させて雲に飛び、次の村に向かう。
俺が今行っているのは、まぁ見てのまんま、『飛雷身』でゼブルス領のあちこちに飛び、それぞれの村町の兵舎を訪れて、ステータスだけを確認することだ。
兵舎を訪れるとともに、工房で印刷したアンケート用紙に必要事項を記載してもらい、それを後々ゼブルス家に届けてもらうというものだ。
もちろん、都合よく休んでいる全員が兵舎にいるわけもないので、一度赴くと、その場で読み取れる全員を読み取り、残りは順次という形で行っている。
(これで2834人、次の村には50人兵士がいるはず)
考えているうちに次の村が見えた。
それからは先ほどと同じことの繰り返しだ。
門番に兵舎の場所を聞き出し、そこで一番偉い奴を呼び簡潔に事情を説明し、その場にいる兵士を呼び集め測定する。
測定が終われば、紙を渡し、項目に記入してもらい、また次の村に飛ぶ。
ちなみに魔力だが
――――――――――
Name:バアル・セラ・ゼブルス
Race:ヒューマン
Lv:47
状態:普通
HP:812/812
MP:5024/4824+200(装備分)
STR:99
VIT:93
DEX:117
AGI:144
INT:176
《スキル》
【斧槍術:53】【水魔法:3】【風魔法:2】【雷魔法:47】【精霊魔法・雷:38】【時空魔法:20】【身体強化Ⅱ:39】【謀略:44】【思考加速:27】【魔道具製作:38】【薬学:2】【医術:9】【水泳:4】
《種族スキル》
《ユニークスキル》
【轟雷ノ天龍】
――――――――――
となっている。
毎年生誕祭に顔を出しているので、イピリアが俺にあった神樹の実を取ってきてくれるおかげだ。
そしてさらには今年の生誕祭では俺の色に近い果実が3つも余ったらしく、ここまで魔力を伸ばすことに成功した。
だがもちろん、こんなMPではすべて回りきるなんて事ができるはずもない。
(本当に千年魔樹とウルに感謝だな)
だが、ある発明品がそれを可能にした。
服の上から腕輪を撫でる。
実はこの二年で外部から魔力を供給するシステムを作り出すことに成功していた。
それにより魔道具が存在する範囲で俺は工房にある魔石との魔力のやり取りが可能になる。
もちろん当初は100MPで1MPのみしか供給できなかったのだが、とあるヒントでそれが可能になった。
(魔力に色があるってことがわかれば簡単だったな)
ヒントはエルフたちが魔力を色でとらえているところからもらった。
魔力には色が存在し、近しい色ほど親和性が強くなると判明したからこそ、この魔道具を作成することができた。
例えば赤い魔力の持ち主に青い魔力を供給しようとしても、1/100ほど供給できればいいほうだ、だがこれが緋色の魔力だった場合は1/7まで上昇することできるようになるのが判明した(クラリスの協力の元)。
現状、魔力はゼウラスト全域から無差別に集め、ある魔石蓄積している。
だがこの時、色が混ざり合って俺の色からは程遠くなっていた、だから二年前はほとんどの供給がうまくいかなかった。
だが原理を知れば何も問題ない。
いわばこの魔石から俺に流れてくる途中で俺の魔力の色に変換すればいい。
では一体何をしたのか。
答えは簡単、途中にある物を挟めば問題なかった。それは何か、簡単だ、答えは俺の髪である。
生物は周囲に漂う魔力を吸収し、自身の色に染め上げるとクラリスから聞いた。
ではどこでそれが行われているのかという疑問が沸き上がる。
ここで俺は魂なんてあやふやな物でないと仮定し、考え、植物を見て思い出した。
なぜ植物は水と二酸化炭素から炭水化物を合成できるのか、それはひとえ葉緑体という細胞小器官で体内で反応しているからだ。
もしこれと同じように生物の細胞の中に魔力を生み出す細胞小器官が備わっていたとしたらと。
そこで細胞が体から離れ、さらには生きている状態で放置し、魔力を生み出すのかと実験した。
培養液に自身の髪を浸し、そこから長く観察をした、もちろん俺は色が見えないのでクラリスにも協力してもらってだ。
すると結果はどうなったか、仮説どおり、俺と同じ色の魔力を発し始めた。
その後は髪の細胞が死亡するまで魔力を発するのを確認でき、それからの実験により、魔力をなじませた髪は単体でも一年は持ちこたえれることも判明した。
これにより魔力を供給する装置のめどが立つことになる。
まずは大量に魔力を採取した魔石から俺の髪に魔力を流す、その後、髪から発せられた魔力だけを集めて俺とおんなじ色の魔石に注入し、保存する。
その後は俺の任意のタイミングで魔力を供給する、これにより、俺は膨大な魔力の貯蔵に成功した。
数値で言うと約120万MPが貯蔵されているのが確認できている。それにより、今まででは考えられない距離を自由に行き来できるようになっている。
手順としては村に訪れている間に魔力供給装置『インフィニティ』から魔力を供給。
そして旅立つ頃には全回復といった具合だ。
(日暮れまであと少し)
月が出ていれば問題ないが、出てないときは視認できないので『飛雷身』での移動はできなくなる。
故に日の出ている時間が限度だった。
(あの村でラストか)
最後の村に赴き情報を得ると、そのままゼウラストに戻る。




