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変なところに目を付けるなよ

夏季休校まで残り数日という時に王家から手紙が届いた。


なので休みを返上し、ネロとリンを連れて、陛下に対面する。


「早速だが、実はこれが届いてな」

「それは?」


陛下からグラスに、グラスから俺に手渡される。


「一言で言えば、アジニア皇国からの招待状だ」


『ニュクス』が言っていたのはこの事か……


「……(また、めんどくさいものを突き付けてきたな)」


これを受けとるということは俺がアジニア皇国まで出向かなければいけなくなる。


なにせあちらは戦国真っただ中だ、誰が好き好んでいきたいと思うのか。


(何か先延ばしにする方法はないか)


頭の中でいろいろと巡らせていると、一つの考えが浮かんでくる。


「せっかくのご招待ですが、これはお受けできません」

「ほぅ、なぜ?」

「実はある考察を行っており、その結果が出るまで動けないのです」


今行っているスキルの研究がある、それを使い、この招待を断ろうとする。


「ほぅ、研究か、どんな内容だ」

(アーツ)に関する研究です」


すると宰相、グラス、陛下の頭の上に『?』がでたのが理解できた。


「なぜそんな、研究を?」

「お言葉ですが、(アーツ)は武術をたしなむものであれば、誰もがその恩恵を理解できます、ですが、その実態を正確に把握している者はおりません」


魔法使いは魔法を強くするために研究するが、騎士や戦士はそうじゃない。


自身の力を強めるために鍛えはするが、(アーツ)の研究などする奴は皆無だ。


「もし仮に、ごく一部だけが使える強烈な(アーツ)をほかの者が使えるようになったら、グロウス王国はさらに力をつけることができると信じておりますゆえ」

「………その研究結果はいつ出る?」


有用性は十分できただろう。


「おそらく、夏季休校が終わるまでにはある程度の結果は出るでしょう」


夏季休校が終われば、秋はゼブルス領の収穫時期で忙しくて行くのは無理、冬季休校は雪の中を通る危険性を訴えることができるのでそれもなんと拒否できる、年明けは新年際、次はノストニアの生誕祭。つまりはこの夏季休校さえ乗り切ってしまえば一年は拒否できる。


「では、再び学園が再開するときにバアルの研究結果を発表してもらうぞ」


(…………は?)


おもわず陛下の顔を見上げる。


その顔は俺がどのような考えをしているのかを見抜いて面白がっている顔だった。


「グラス、夏季休校が終われば、ある程度の結果が出ると聞いたな?」

「はい、私の耳にもしかと」


内心で舌打ちする。


「ですが、ある程度の結果です、そこのところをお間違えないようにお願いします」

「ああ、わかっている、若手の中で最も注目されているバアルのある程度(・・・・)だろう」


ここで成果を出せば問題なし、だが結果に満足しなかった場合は評判を落とすことになる。


「(はぁ~)わかりました、研究に尽力いたします」

「うむ、小国とはいえ、国からの要請を断るんだ、それなりの成果を期待しているぞ」


最後に釘を刺されて謁見が終わる。










謁見が終わるとグラス殿に呼び止められてとある部屋に案内される。


そしてその部屋には当然のように陛下が居座っている。


「さて、バアル殿、少しだけ意見を聞きたい」


すると、とある紙を取り出す。


「これは?」

「アジニア皇国の戦歴だ」


使節団を送った直後から裏の騎士団は動き出していたみたいだ。


「連戦連勝ですね」


規模の小さい戦から大がかりな戦の戦歴が書かれている。


「ああ、そのため、国土が三割増加したのを確認している」


領地に関しては元が小国ってのもあるけど………それより連戦連勝というの凄まじい。


「これはジュウという武器の恩恵だと、我々は捕らえている」

「でしょうね、訓練してない農兵でもジュウを持たせて横に並べるだけで、十分な武力となりますから」


日本に行われた鉄砲三弾撃ちはかなり強烈だったと聞いたことがある。


「そこでだ、グロウス王国もジュウというものの開発をするべきだという声が上がっているんだ」

「………はい?」


思わず返事が遅れた。


「どこですか、そんな声を上げているバカは」

「……エルド殿下が自分の部下に言い聞かせている」


思わず手を目に当てて空を仰ぐ。


「失敬、これは失言でした。ですが、なぜエルド殿下が知っているんですか?」

「アジニア皇国の使節団の中にエルド殿下の派閥貴族が加わっていたんだ」

「それでジュウのことを知ったと?」


グラスは頷き肯定する。


「はっきり言います、現時点でジュウを作る必要はないと断言させてもらいます」

「根拠は?」

「とある伝手でジュウと火薬を手に入れました、それの威力を推し量るためいくつかの実験を行ったところ、銃を優先するんじゃなく魔法を優先する方がいいという結果が出ました」


ジュウでは軽い土嚢や数メートル幅の水を貫くことはできなかったと報告する。


「なるほど」

「厄介なのは、ろくに訓練していない兵士をある程度武力を持たせることができて、さらにはあまりにも早いため見ることが難しいという二点のみです」


前世の世界なら銃という兵器が強いのはわかる、だがここは異世界だ。


すぐさま土嚢を作り出すこともできれば、宙に浮く水の塊すらも生み出せる。


さらにはエルドの腕輪のように自動で障壁を張る魔道具を準備できたのなら、もはやジュウの無力が可能だ。


なので本当に富国強兵にしたいのなら魔法を強くするべきなのだ。


「なるほど貴重な意見を出してくれて感謝する」

「いえいえ………それとまだ話を続けた方がいいですか?」


俺は窓際で陛下と楽しく話しているネロを見る。


「そうだな、問題ない範囲で頼めるか」

「了解です、では」


それから裏の騎士団で明かせる活動報告。


国内の情勢についてわかりきっている部分をお互い、おどけながら話し合った。

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