調査結果と予測
「バアルさま、これが調査結果です」
部屋に戻ってくるとリンが調査したステータス一覧を差し出してくる。
「…意外に集まったな」
武術学部の三分の一ほどの情報が載っている。
「まぁ、普通に測ろうとしたらお金が掛かりますから」
「ただって言った瞬間にほぼすべての生徒が押し寄せてきたからね、それで遅くなったんだよ」
自身のステータスがただで測れるんだ、利用しない手はないだろう。
二人が遅くなった理由を把握する。
「じゃあ早速」
俺は早速、名前とステータスを打ち込み始める。
「にしてもあれは、大丈夫なのかな?」
「大丈夫ですよ、イグニア様も強引なところはありますが義理堅いので」
「まぁそうだよね、にしても今年の進級生のなかにユニークスキル持ちがいたんだね」
「ええ、結構有名なんですけどね」
「ユニークスキルだとイグニア殿下が有名すぎるからね」
「アークも結構有名ですよ、ノストニアの先王に通行許可をもらっていますから」
「それじゃあ大丈夫そうだね」
どうやらアークがイグニアと模擬戦している原因は二人にあるようだ。
話の続きを聞いていると部活全体にステータスのチェックをしていると偶然アークたちが通りかかって、彼らもステータスチェックをしたらしく。
さらに偶然にもその場にイグニア殿下が居合わせて、ユニークスキル持ちと模擬戦をしたいといったのが元凶みたいだ。
「そういえばリンさんは従魔がいるんだよね?」
「ええ、まだ連携の授業に入っていないので屋敷にいますが」
「できれば従魔のデータも取ってみたいんだけど、いいかな?」
「では学園に、連れて来た時に立ち寄りますね」
「よろしく頼むよ」
二人がしゃべっているとアプリに通知が来る。
『一つ質問です』
『なんだ?』
『ステータスの具体的な定義を教えてください』
アプリに書かれた言葉を見て固まる。
(ステータスの具体的な定義)
ステータスが何の数値を現しているのか。
(そういえば調べたことはなかったな)
一応は筋力、耐久力、器用さ、敏捷性、知能と神から説明を受けたがどういったメカニズムで決まっているのかはまだ不明。
『一応は―――』
ひとまず神からの説明通りに教える。
『意外です、マスターならすでに何の数値化か把握していると思っていました』
『うるさい、それで何かわかったか?』
『はい』
そこには五角形のステータス表示がされる。
『まずはスキルレベルごとに分け、それぞれある技を使用できるものとできないものに分類、それらのステータスを確認しましたところ、見事当たりを引き当てました』
表示される表を見て理解した。
結論から言うと技は最低限のスキルレベルを持ち、さらに一定以上のステータスが必要ということが判明したのだ。
『ですが、稀に基準を満たしていても技を使用できない者もいます、それらに関しての研究も必要になると考えます』
確かに数名は基準を満たしても技の使用ができないようだ。
「今後はそれらも考えていかないとな」
「ん?」
ちょうど使い勝手のいい研究員もいることだし。
それから夏季休校に入るまでフルク先輩に動いてもらい、『武術』学部全員の情報を得ることに成功した。
そして夏季休校に入る前にそれぞれ中間試験を行うことになる。
もちろん学部ごとに試験内容は違う。
『武術』は実戦形式の試験。
『魔術』も同じく実戦形式の試験。
『経済』は筆記形式の試験。
そのほかの学部もそれぞれの形で試験を行っている。
そして結果だが、『不可』『可』『良』『優』『秀』という形で返され、点数などは発表されない。
代わりに『不可』になった生徒のみ各校舎に発表されてしまう。
これは貴族、平民関係なくだ。
平民が発表されても誰も気にも留めないが、貴族となれば話は違う。
普通の貴族なら『不可』なんてものは取らないので、周囲からは『出来損ない』のレッテルを張られてしまう。
これが嫡男となるとさらにひどいことになるだろう。
(まぁそれ以前に『不可』を取る貴族なんて進級などできるわけもないがな)
最初の試験は誰も『不可』を取ることもなく終わった。




