調べごとは統計を取らねば意味がない
11/01~11/10まで毎日二話投稿いたします。
読み飛ばしにご注意を。
今度は自作したノートパソコンを持って部室に入る。
「それはなんだい?」
「資料の整理に便利な魔道具です」
ということで早速、資料を総てパソコンに打ち込み、データ収集を行う。
「そんな魔道具があるのか?」
「ええ、それと」
『亜空庫』を開き『鑑定のモノクル』を取り出す。
「リン、先輩について行って、ステータスの情報も集めてきてくれ」
今日は武術の鍛錬が早く終わったらしく、リンもこの部屋にいた。
「いいのですか?」
「そうですよ、もし万が一壊れたとして、僕には弁償できるお金はないですし」
「そこは大丈夫だ、リンなら万が一も起きない」
するとリンは頭を下げ、礼をする。
「それに一回で銀貨一枚を取る教会とは違いこっちはタダで計ってやるんだ、十分協力的になってくれるはず」
全員がタダで計ってもらえるなら計ってもらうはず。
「ではフルク先輩、リン頼む」
「了解です」
「こっちこそありがとう、貴重なモノクルを貸してくれて」
二人は部屋を出る。
「さて」
パソコン内の一つのアプリを開く。
『ハロー、調子はどうだい?』
文字を打ち込む。
『問題ありません、マスター』
すると返事が返ってくる。
俺が開いたのは人工知能アプリケーション『ニュクス』だ。
『本日はどのようなご用件でしょうか?』
『技についての統計を取ってみた項目を絞り分布図を取ってみてくれ』
『了解しました』
この人工知能、まぁいわゆるAI『ニュクス』は俺の工房の生産体制と防衛設備の権限を与えている。
もちろん、ほかにも些細な情報処理や、現在使われている通信機の会話ログも記録させている。
『一つ報告ですマスター、裏の騎士団に新たな情報が加わりました、なにやらマスター絡みなのでご注意くださいませ』
「……まじかよ」
アジニア皇国みたいなことはごめんだぞ。
そしてなぜ裏の騎士団の情報を得られているかと言うと、実は通信機のすべてに盗聴器を仕込んでいるのだ。これにより裏の騎士団や黒霧の館のやり取りは筒抜けになっている。
『現時点の情報の集計完了、結果から申しますと現時点の統計データのみでは統計は確認されませんでした』
ということは完全にわからなくなった。
『現時点でのどのような条件だと考える?』
限定的とはいえ、人工AIを積んでいるんだ、こういった質問にも答えれる。
『不明、仮にステータスの情報が集まったとしても傾向が見えない可能性は十分にあります』
ということでデータが集まってからでしか、統計が取れないという。
ひとまずフルク先輩が採取したデータをすべて打ち込む。
約三分の一を打ち込むのだが。
『残念ですが、これ以上行っても意味がありません、新しい項目でもない限り』
という返信が帰って来る。
(まぁ、そうだよね)
映し出された分布図はまとまりがなく満遍なく広がっていた。
(まぁこれだけなら身長、体格、体重、性別には、技の使用基準などがあるわけではないとしか、わからないな)
集められたデータの結果、これらの項目が『関係ない』とわかるだけだった。
「となるとあの二人のデータ待ちだな」
それから結構な時間がたつのだが二人はいまだに帰ってこなかった。
(遅い)
まさか、学園内で襲われたなんてあるはずもないので心配はないのだが。
あまりにも遅いのでこちらから出ることにした。




