表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
335/470

新たな可能性

「本当にネロは王室なんですか?」

「真実はどうあれ、陛下が認めたらそうなるだろうな」


正確な出自なんて時が過ぎればどうでもいい、大事なのはその資質を持っているかだ。


現に前世の歴史で何度も革命が起こっているのが証拠だ。


「必要なのは資格と資質だけだ、これさえあれば、あとはどうでもいい」

「それをあなたが言いますか?」


現貴族の俺がそう言っても信じる奴はそう居ないだろう。


「ですが、なぜ今になって隠し子がいるなんてことが……」


リンが俺に雇われてから王子はエルドとイグニア、それと王女三名のみと聞いている。


いや、はずだったか。


「しかし、今更出てきても意味がないと思うがな」


既にエルドもイグニアも西と東、宮廷の文官と武官を取り込みに掛かっている。


その勢力はかなりの物だ。


「では仮にバアル様がネロ殿に協力したら第三の勢力になるのでは?」

「なくはないが…………」


既に俺はグラキエス家との密約で、一応は保険を掛けている。


今更新しい勢力として台頭してもうまみは低い。


「それに……」

「??それに?」

「いや何でもない」


思わず言いかけた言葉を飲み込む。












夜、寝つきが悪いので夜風に当たる。







「………なぜ、今頃になってネロが出現した?」


それは王宮での政治闘争が激しくて隠し切れなくなったから。


「では、なぜゼブルス家に助けを求めてきた?」


陣営的に現陛下に近しくて、表向きでも両殿下から距離を置いているので匿いやすいから。


「なぜ襲撃された?」


それは暗殺者が言っていた通り、継承位争いに参加できる可能性があるから。


「それが本当にできるのか?」


……ゼブルス家、引いては南部の貴族陣を取り込めば劣勢にはなるが、一応は勢力とみなされる。


「それができると思うのか?出自がはっきりとしていないんだぞ?」


リンにも言ったが、陛下が自分の出自を認めてさえしまえばできなくはない、できなくはないが。





「現実的じゃない」

 現実的じゃない






月を見ながら自分の中で自問自答する。


そこからどうやってもネロが新王に慣れる可能性は数%程度と言わざるを得ない。


「………ではなぜ、陛下はネロから王位継承権をはく奪しないんだ?」


そうすればネロはこうして暗殺者などから狙われる必要はない。


「可能性があるとしたらどうだ?」


既にある程度の勢力がネロにあると仮定する。


「……いや、ないな」


それならばゼブルス家に来る必要もない。


中立のゼブルス家に頼るより、自前の勢力圏にいた方が信用できるに決まっている。


「はぁ~~」


アジニア皇国の時もそうだが、情報の欠如が多すぎて真実があまりにも見えてこない。


「はぁ~どうすっかな」


コンコン


すると扉からノックされる。


「だれですか?」

「私だバアル」

「父上?」


部屋にやってきたのは父上だった。


「どうしたのですか?」

「いやな、窓から夜風に当たっているお前が見えてな、眠れないんだろう?」

「ええ、まぁ」

「それも仕方ない、もしまだ眠るつもりがないなら執務室に来なさい」


なんだろう、今だけは父上が大人びて見える。









ところ変わって父上と執務室に移動する。


「それで?寝れないから子守唄を聞かせるというわけではないですよね」

「辛辣だね、ネロ殿下のことが気になって寝れないって、素直に言ってくれてもいいのに」


そう言うと、執務室の引き出しから、ある物を取り出す。


「バアル、私の見ている前でこれをすべて見ろ、そして最後には私の目の前で燃やすんだ」


取り出したのは一つの手帳だ。


「……拝見させてもらいます」

















パタン


「………なるほど、そう言うことですか」

「ああ、何も全員がアーサーの味方であるわけではないからな」


手帳にはネロのことが記されてあった。


「なぜこのような形で、保管してあるのですか、普通に燃やしてしまえばバレる心配はゼロに近いと思うのですか?」

「真実はどこかに残さなくてはならない、すべてを闇には葬らせてはならないからだ」


確かにこの事実は残しておかねばならない。


手帳を父上に返す。


「父上、お聞きしたい、今後ゼブルス家がどのような方針を取っていくのかを」

「………我々は民を守ることこそ生きる(さだめ)、起こりうる災禍を総て撥ね退ける盾であらねばならない」


そういい、暖炉に手帳をくべて机に座る。


「理解しました、民のことを第一に考える方針に私も従います」

「民のために生きると誓いはしないんだな」

「誓いを立てるほど、まだ私はこの世界のことを知りません」

「…………ではいずれ、そう思える時が来るのを祈っているよ」


父上の言葉が本当にそう願っているのだと理解できた。












ギィン


「今日はまた、少し荒々しいですね」


今日も今日とてリンに武術の指導をしてもらっている。


「……すまん、少しだけイラついていた」

「ご当主さまから伝えられた、()ですか」


思わず固まる。


「なぜ知っている」

「まずは謝罪を、あの日、夜中に誰かがバアル様の部屋に来たのは知っていました」

「それで?」

「以前の襲撃があったので警戒を強めて魔道具を最大限に使用していました、そしたら」

「聞こえたわけか?」

「はい、ですが肝心の部分は筆でやり取りしておいでらしいので内容は分かりません、ですが、なにやらただならぬ事情があるは理解できました」


そういい、リンは心配そうな表情をする。


「忘れないでください、私はいつでもバアルの味方です」

「はは……ありがとな」


そう言うと再び俺たちは稽古に励む。


この後人物紹介をして、第六章は終了となります。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ