新たなアルカナ
「では渡しましたよ」
「あの……私を便利に使うのはやめてもらっていいですか?」
数日後、あの場の全員を昏倒させてゼブルス領に帰ってくると、急いでルナに連絡を取り急いでゼブルス領まで出張してもらった。
「それにしてもなんでこんなことに?」
「ネロを誘拐しようとしていた奴らを返り討ちにしただけだよ、そうグラスに伝えてくれ」
「!?了解です」
ルナは重大さがわかったのか急いで馬車に全員を載せて出発する。
ゼブルス領のとある場所で、俺はあの二人と再び会う。
「うまくいった~?」
「ああ」
当然フィアナとクロネだ。
ネロを誘拐しようとした日に何があったかというと。
この二人を寝返らせ、依頼主をはめた、それだけだ。
「けどセレナちゃんかなり怒っていたよ?」
セレナに関してはすまないと思う。
寝返らせたはいいがリアリティを出すために本当の演技をしなければいけなかった。
なので、本当に攫われたかのようにクロネに寝込みを襲わせて意識がある状態で薬品につけた布を嗅がせて眠らしたのだ。
その後、拘束し道中で起きても問題ないようにして依頼の場所に向かう。
現に何度か目覚め、暴れようとしたら薬品を何度も嗅がせて眠らせた。
その二人の後ろをリンと俺で追いかけて、居場所を特定、それから一網打尽という計画だった。
「いや~ありがたい、有り金全部なくなったけどあいつらからの金ももらえたし、無事に生きれている万々歳だね!」
「そうだね、俺に敵対しない限りは」
「も、もちろん、もうバアル様には敵対しないよ?」
「そうか?ちなみにフィアナとクロネ、確かエルフ誘拐の最重要人物だった名前だな」
そういうと二人は青ざめる。
「もちろん、もうしないよな?」
「はい、神に誓って」
胸の前で十字を組み、祈りのポーズをする。
「俺が使い道がないと思う時まで敵対はしないでやるよ」
アルムには悪いが使い道がある以上は今のところは放置する。
そういうと安堵の息を出す。
「それで、お前たちはこれからどうする?」
「一応、東方諸国を目指します、そこならかなり大儲けできそうだし」
どういう仕事かは聞かない。
「何で北から南に来たんだ?」
「簡単、少し真ん中で調達するものがあってさ、王都によってそのまま流れでここに、あとはさらに南に行って船だね」
「なるほどな」
ルートとしては理にかなっている。
「そういえば確か、一つ依頼を無料で受けるって言っていたな?」
「は、はい」
俺が大層危険な依頼をするんじゃないかと二人は身構える。
「じゃあ、東方諸国に言ったらアジニア皇国現皇帝について調べてほしい」
すると二人は顔を見わせる。
「それだけ?」
「ああ、俺の手勢はそっち方面に行くことはできない、もちろんいろんな伝手があるが、入ってくる情報は多いほうがいい」
「わっかりました~」
ということで二人は依頼を請け負ってくれた。
「少し話がある」
この場を離れようする二人を引き留める。
「なんですか?」
嫌そうな顔をして二人は振り向く。
「フィアナ、少しだけ来い」
「ここで話してはもらえないのですか?」
「ああ、お前の魔道具についてだ」
するとフィアナの顔つきが少しだけ変わる。
ほんの少しだけ移動する。
「さて、お前の魔道具だ」
「これですか?」
そういうと一つの首飾りを取り出す。
だが
「それじゃない、知ってて言っているのか?」
「……」
「その足枷だ」
すると観念したのか裾を上げて右足首についている足枷を見せてくれる。
「なんでわかったんですか?」
「ある気配があったからな、それよりもお前はこれが何か知っているか?」
「知ってますよ」
そういうと同時にモノクルで鑑定する。
―――――
刑死者の足枷
★×8
『XII吊るし人』
アルカナシリーズの一つ。彼の者は逆転した世界で何を見るか、裏の理を見て、何を理解するのか。修行、忍耐、努力、試練、すべてを終えた先にはさらなる高みが待ち受けるだろう。この足枷はそのための道しるべとなる。
―――――
やはり思った通りアルカナシリーズの一つだ。
「勝手に鑑定するのは犯罪じゃないかな」
「それよりも、お前は俺に何か感じるか?」
「??何も感じないけど」
つまりは『所持者』の段階だとほかのアルカナシリーズを感じることはできないようだ。
「もういいかな?」
「ああ、確かめたいことは確かめた」
そして二人は南に向けて歩を進めていく。




