絶対的な相性
「何が起きてるの!?」
「落ち着け、とりあえず高度を落とせ」
クロネは冷静に眼前の森に入れと言うが、当然そんな暇なく。
バリバチバチ、ブジュン!
「侵入しておいて、逃げられると思っているのか?」
光ったと思ったら、突然目の前から声が聞こえる。
「はっ!?な!?ぐえっ!」
ガシッ
戸惑っていると、首と左手首をつかまれる。
ビリビリビリ
そしてつかんだ手からは電流が流れてきており、しびれてくる。
(やばっ!?)
この状態で飛ぶことを維持できるわけもなく、私とクロネにかけている浮遊が解けていき、森に落下していく。
何重にも枝を突き抜けて地面に衝突する。
「がはっ」
事前に高度を落としておいたことと浮遊が完全に解けてないおかげでそこまでダメージはないが、いまだにしびれが残っている。
「さて、素直に吐いてくれるなら俺も何もせずに済むが?」
地面に衝突する際に手を放し、先ほどみたいに雷になって移動したからか、相手に傷はついていない。
「ふつう、ここまで追ってくる?」
警戒しながら立ち上がる。
「ここで逃したらメンツがつぶれるだろう」
「あはは、貴族だね~」
話しているうちにしびれが取れてきた。
「じゃあ、そのメンツを完全に潰してあげるよ」
気づかれないように腕を彼のほうにむける。
「上がれ!」
「おっ?!」
少年はそのまま宙に上がっていく。
「んで、落ちろ」
十分な高さになったら解除する。
十分な高さから落とされるのであればほんの少しでもダメージはあるはずだ。
「こんなもんか『飛雷身』」
何かをつぶやいたと思ったら、一瞬で光りその場から姿を消していた。
「さて、これ以外に何をしてくれるのかな?」
「!?」
斜め後ろから聞こえた声に驚き、振り向く。
「なんで!?」
「さぁなんでだろうな?」
「っその余裕がいつまで続くかな!『封魔結界』」
一切の魔法を禁じる、結界を生み出す。
「どう!これで雷移動できないでしょ!」
さきほどの消える方法、以前一瞬で移動したことから時空魔法の一種と予想し、結界を敷く。
「そして私はこの結界内でもさっきのことが使えるのよ!!」
再び、手を少年に向けて持ち上げる。
「はぁ~『飛雷身』」
「なんで!?」
再び彼は消える。
今度は真横から首に手を添えてくる。
「もう終わりか?」
「っ!?」
一応護身用につけていた、短剣を抜き切りかかる。
「どうやらその様子だと『所有者』の段階か」
「何を言っているの?」
短剣を受け止められるとそのまま、組み倒される。
「うぐっ」
背中を足で押さえつけられて、片腕を拘束されている。
「お前が使っているのは魔道具だろう?」
「だから何の話?」
「それはお前がっと」
腕の拘束が解かれて、背中においてある足の感覚が消える。
「すまん遅くなった」
「クロネ!」
どうやらクロネが攻撃したことにより、少年が離れた。
「それにしてもここまでやられるとはな………やれるか?」
「ええ、どうやら逃げるのも無理みたいだしね」
クロネが私の前に出て、剣を構える。
「二対一か、そっちの実力はわからないけど、問題ないだろう」
そういうといつの間にか手の平には何やら古びたハルバートを握っている。
「じゃあ行くぞ」
少年は律義に告げてくれる。
「はぁ!」
二人がぶつかり合うとそのまま連撃の応酬になる。
ギィン!
だが徐々にクロネが押されていく。
「遅いし、軽い、そこまで強くもないんだな」
「っ」
クロネも言い返したいみたいだが、できない。
少年の一撃は二つの剣でないと防ぐことはできなく、さらにはクロネのスピードが負けていることからクロネの攻撃は容易に避けられ、避けられないタイミングでカウンターを入れられる。
「忘れないでよね」
私も周囲にある岩や倒木を持ち上げて少年にぶつけようとする。
「いい連携だな」
「それはありがとう!」
ぶつけはできなかったが体勢が崩れた。
クロネが返答と同時に渾身の一撃を入れる。
「っふぅ!」
そのまま押し込めると思った瞬間に二人を中心に大規模な放電が起こる。
ドサッ
「クロネ!?」
「あとはお前だけだ」
何事もなかったかのようにハルバートを肩に担ぎ近寄ってくる。
「はぁ~降参です、取引しませんか?」
両腕を上げて戦意がないことを伝える。
「なんだ続けないのか?」
「ええ、クロネが倒されたので、私に勝ち目はないです」
既にクロネが来る前はボコボコにされたし。
こうなると何とかいい条件を出して見逃してもらうしかない。
「それで、取引ってのは?」
「今回の誘拐に関してすべて話します、ほかにも今持っているお金もすべて払います、だから私とクロネを見逃して。ほかにもあなたの依頼を一つ無料で聞くから」
「ほぅ」
相手は乗り気になった。
「どう見逃してくれる?」
「そうだな―――――」




