想定してないわけないだろう?
俺は屋敷に帰って来る。
「…本当なのでござるか?」
「なにが?」
「バアル殿の領地以外ではイドラ商会の魔道具が使えなくなるというのは」
本当だ、正確には使えなくするんだがな。
あの時の殿下たちの表情を見て少し笑う。
『どういうことだ?!魔道具が使えなくなるとは?』
『いえ、イドラ商会が営業停止になるので魔道具を作成する場も閉じなければいけなくなります。その際にすべての魔道具の根幹を担う装置も停止させるので……ああ、私たちは使うのでゼブルス領では魔道具に支障はありませんよ』
こういうとエルドは軽く挨拶だけしてどこかへ向かっていった。
(魔道具を作れば莫大な富を得ることができる、けどそれは同時に敵も集めてしまうのは明白。そんな状態で対策をしていないわけないだろう?)
「さて、リン急いでゼブルス領に戻るぞ」
「忙しいでござるな……」
ということで俺たちは即座に馬車を出しゼブルス領に戻る。
(これから面白い展開になりそうだな)
「父上!今すぐ領内の警備を増やしてください」
「…また急になんだ?」
「………」
珍しく普通に執務をしている。
「おい、普通に仕事をしているだけだろう」
「そんなことより、急いで警備を厳重に!」
「そんなこと………」
俺は王都で何があったかを伝える。
「おいおいおいおいおいおい」
「て、ことで兵士を増やしてください、主にイドラ商会関連をお願いします」
必要な書類を父上の机に置き、サインを求める。
「わかった、わかった。ただし、完全に国との対立は避けるんだぞ」
そんなのわかっている。
「……ここがそうなのですか?」
「そうだ」
目立たない服装をした2人組がとある商家の前で話をしている。
「しかし、なんでこんな普通の商会に我々が」
「俺たちが動かされていることから相当な案件が起きているのだろう」
「……そのとおりだ」
するともう一人合流する。
「隊長、今回はどんな問題が起きたんですか?」
「……この商会のことは知っているか?」
「イドラ商会でしょう?」
「え?!あの最近有名な!?」
「……そうだ今回のターゲットはこの商会のどこかにある物だ」
「それだけでは……もっと情報は無いのですか?」
「それより!なんでイドラ商会が対象になっているんですか?」
「……国からイドラ商会に営業停止勧告が届けられたのは知ってるか?」
「え?!」
「なぜ?」
「……簡単に言うと経済闘争だ、知っての通りイドラ商会は魔道具でその富を築いた」
「有名な話ですね、若き商人たちからしたら最もあこがれている成功の話ですね」
「……ああ、でもその富を羨む者たちがいる」
「なるほど…大体の流れはわかりました、でも肝心の部分のが不明なのです」
なぜイドラ商会を対象にしたのか、が謎なのだ。国から営業停止の命令が出たなら既にできることは無いはずだ。
「……少し前に、ある情報が入ってきた」
「その情報とは?」
「……簡単に言えばイドラ商会が営業停止にされれば、ゼブルス領以外の魔道具が動かなくなるとのことだ」
「「!?!?」」
「……すでにいくつかの領地で魔道具が停止している」
「では…」
「……ああ、情報が正しかったんだ」
「国ではイドラ商会の魔道具が数多く出回っています、その魔道具が止まったとなれば」
「それに~その命令を出したのが国からの営業停止勧告だとしたら、非難ごうごうですね」
「……ああ、だから国は魔道具の根幹を担う装置を回収したいのだ」
「納得です」
三人はイドラ商会を見あげる。
「ですが、俺たちはどの魔道具なのかしりませんよ?」
「……ああ、だから知っている人物からまずは聞き出す」
「知っている人物とは?」
「……この情報を持ち込んだ人物、バアル・セラ・ゼブルス。公爵家の嫡子でイドラ商会の会長だ」
「あれ?ゼブルス家の嫡子って今年話題になっていましたよね?清めの時にユニーク持ちだとわかったって」
「……そうだ、その嫡子がその装置のことを話したのだ」
「すごい子ですね~……あれ?この問題って国が営業停止を取り消せばいいだけじゃ?」
「……国がそんなことできるわけないだろう」
「そうですね、しかも国に要請して圧力をかけたのはあの教会ですからね」
「……まぁそういうことだ、今夜、バアル・セラ・ゼブルスの屋敷に忍び込み拉致する」
三人は気を引き締めて夜まで解散となった。




