呪いの短剣
次にセレナ対カルスとなる。
「負けても恨むなよ」
「はっ、年下に負けるほど弱くわないわよ」
お互いに挑発しあう。
「魔法は無し、セレナの魔剣とカルスのユニークスキルは使用可能、あとは剣術のみ、これでいいな?」
二人とも条件に異論はないようだ。
「始め」
「『輝晶剣』」
「『闇糸』」
セレナとカルスは予想通りの動きをする。
セレナの周りには三つの剣が浮かんでおり、カルスの指から十本の紫色の糸が出ている。
「飛べ」
セレナのひとことで周囲に飛んでいる剣がカルスに向かっていく。
カルスもそれに冷静に対処していた。
腕を振るい、糸を剣に絡みつかせる。
「絞」
糸に絡まれたことにより、空中で止まった状態になる。
「セレナさん、勝たせてもらいます」
剣を止めるとカルスがセレナに向かっていく。
「まぁそうなるわな」
セレナはいまだに『輝晶剣』という遠距離での攻撃を残している。
対してカルスは最も範囲がある『闇糸』でも中距離での攻撃しかできない。
となると早急に距離を詰めたいはず。
「セレナは引くのかしら?」
「一番無難ではあるな」
クラリスの予想だと、セレナは距離を取り、安全を確保してから再び『輝晶剣』で攻撃すると読むのだが。
「はぁ!」
「「「「え?」」」」
何を思ったのかセレナはカルスと同様に距離を詰め始めた。
「ラインハルト、剣術ではカルスのほうが上手だよな?」
「そのはずですが」
ラインハルトも戸惑っている。
「俺の勝ちだ!」
「それはどうかしら」
するとセレナは一つの短剣を取り出す。
「……あれって」
モノクルを取り出し、鑑定してみる。
―――――
崩闇の短剣
★×6
【崩壊の闇】
剣を持つものよ用心せよ、この剣に魅入られれば次の崩壊はその身に降り注がれる。
―――――
「『崩壊の闇』!」
すると、短剣から以前見た闇が出現し、カルスに向かって伸びていく。
「やべ!?『飛雷身』」
すぐさまカルスの近くに飛ぶと、襟首をつかみ、カルスを攻撃範囲外まで投げ出す。
「え?」
「バカが」
すぐさまもう一度飛ぶと、セレナの腕をつかみ短剣を奪い取る。
「終了だ!セレナの反則負け」
「なんで!?」
「当たりまえだ、なんて危険なものを使ってやがる!!」
これで切られていたら、カルスは真っ二つになっていただろう。
「さて理由を聞こうか」
もはや慣れたという風にセレナは眼前で正座している。
「何か問題がありましたか?」
「……本気で言っているのか?」
「はい」
「これを使えばカルスが死ぬと考えなかったのか?」
「勝負ですよね?ならその最中で死ぬのは仕方ないことでは?」
セレナを観察していると本心から言っているのがわかる。
「カルスが死んで、悲しいとか思わないのか?」
「そりゃ悲しいですよ、弟みたいに思っていますから」
ここにいる全員が恐怖を覚えるだろう。
セレナが完全に狂っているとしか思えない。
「お前は両親でも模擬戦で殺そうとするのか?」
「何言っているんですか、するわけないじゃないですか」
「……お前はカルスを殺そうとしたんだぞ」
「あれ?勝負ですよね?ならば仕方ないのでは?」
セレナの言っていることが支離滅裂だ。
(まて、そういえば鑑定結果になんて書いてあった?)
『剣を持つものよ用心せよ、この剣に魅入られれば次の崩壊はその身に降り注がれる。』
一つの考えが頭に浮かんでくる。
「リン、セレナに浄化を掛けろ」
「!わかりました」
リンのユニコーンリングが輝くとその光がセレナに向かっていく。
「あれ、私……うぷっ」
セレナは何かに気付くと、その場で嘔吐する。




