あっけなさ
「はぁ!」
「ふぅ!」
それからは普通の日常が過ぎていき、とある日にリンと共に訓練している。
ギィイン!
俺は叩き潰す要領でバベルを振るうが、リンは半身になり刀で受け止めたと思えば急に打ち付けた感覚がなくなる。
ヒュン
刀がバベルとの衝突を溜めに使ったため、しなりながら頬の薄皮を切る。
(デコピンのような溜めを作ってんのかよ!)
残念ながらただの身体強化のみでは避けることはできなかった。
そこからはほぼ一方的にやられていくことになる。
「はぁはぁはぁ」
「まだまだ無駄が多いですね」
水を飲むと、いつも通りにリンのアドバイスが入る。
「確かにバアル様のユニークスキルを使えば、一撃に重きを置くのも分かります」
リンの言う通り、俺はヒット&アウェイの戦法が得意だ。
「『飛雷身』からの攻撃がバアル様の中で成り立っています、ですが収穫祭のあのレイスのような敵が出てきたらどうします?」
「まぁそこはゴリ押しで?」
「ではその相手が私なら?」
確かにリンは本気を出せば俺の『飛雷身』に対応することはできるな。
「その時のためにバアル様は重い一撃に頼らない戦い方を習得しなければいけません」
「そうなんだけどな」
俺のメイン武器がハルバード型なのでどうしても重い一撃に重きを置かざるを得ない。
そんな中で連撃を意識するとなると、相当な難易度になるのだ。
パチパチパチ
拍手の方に視線を向けると、俺達と同じく訓練用の衣装に着替えたネロがいた。
「もしよろしければ私も参加させてもらえませんか」
「リン、頼む」
「わかりました」
と言うことでリンとネロの模擬戦が始まる。
「まずは条件として、共に木製の訓練用の武器をしよう、魔法は無し、ユニークスキルは使用不可、スキルに関しては問題なし、異論は?」
「「ない」です」
「では、はじめ!」
俺の言葉と共に、二人は動き出した。
私は眼前のネロに突撃していく。
「ふぅ!!」
あちらも同じく近づいてくる。
そしてネロが間合いを読んで切りかかってくる。
ヒュン
ブン
振るわれた剣を避けて、確実に当たる位置を確かめる。
「すごい」
何やら感嘆の声が聞こえてくる。
元々風薙流は見切りに重点を置いている流派であって、目にはかなりの自信がある。
「風柳」
「!?」
刀を抜き、剣を受け、一切の手ごたえを感じさせずに受け流す。
ネロは身を乗り切っての攻撃だったので体勢を崩し、隙を晒す。
「やばっ」
フォン
胴に木刀を放つと簡単に吹き飛ぶ。
「…え?」
「そこまでだ」
ネロが吹き飛んだことにより模擬戦が終了した。
「お前案外弱いな」
「っぐ!?」
思ったことを言うと軽く傷ついている。
「お前、よくそれで卒業できたな?」
「言い訳させてもらえば、私は自前の剣を使った時こそ私の実力です」
悔しそうに言う。
「自前の武器が使えない時もあるだろうに」
「ぐっ」
とりあえず、ネロはリンよりも弱いということが判明した。
「俺が何も指示してない時はラインハルトに稽古をつけてもらえ」
「…はい」
館に戻る際に訓練場の担当者にネロとラインハルトと顔合わせを頼んでおく。
「そう言えば、ほかのみんなは?」
「クラリス様ならセレナの案内で図書館に、あとの三人ならルウィムさん達が指導しているはずです」
「じゃあ先にカルス達の方を見てみるとしよう」
ネロを訓練場に置いて、リンと共に三人の様子を見に行く。




