表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/470

ネロの扱い

「軍馬の餌に訓練用武器、けがの際に必要な医療物資、食糧に給金……全部で金貨100枚か」

「はい、第四軍団は数こそ第二や第三軍団に劣りますがその分、軍馬などにかかる経費がありますから、妥当だと判断します」

「……問題ない、近くの町村に草原の貸し出しについて、周知しておけよ」

「わかりました」


その後も食料に関する文官、輸出入に関する文官、第六軍団とのやり取りを担当する文官。


これ等が立て続けに訪問してくるのでかなりの時間が取られる。


『のぅ』

「ん?なんだ?」

『あそこからとてもおいしい匂いが漂ってくるのだが』


イピリアが窓から見ていたのは俺の工房だ。


「いずれ教えてやるよ」

『いやじゃ、今教えろ』


イピリアがおいしいと感じるもの、それは魔力しかないだろう。


「……教えてほしければ大人しくしていろ」

『なんじゃ?訳アリか?』

「ああ、あそこに俺の重要なものがあるんだよ」


なにせ俺が今の地位に立つために必要なものを作っている場所だ。


あれが無ければここまでの地位にはなれないだろう。


『なるほどのぅ、とりあえずは我慢するかのぅ』


イピリアは納得してくれたのかとりあえずは大人しくしてくれる。


しばらくするとノックされる。


「誰だ?」

『リンです、ご当主様がお呼びになっておりますよ』

「……分かった」











幾つかの書類を持って父上の部屋に向かう。


コンコンコン


「バアルです、呼んでいるとのことでしたが」

「入れ」

「失礼します」


中に入ると父上と母上、それとネロがいた。


「???なんの要件ですか?」

「ネロの件だ」


俺の視線がネロに向く。


「結果だけ言おう、ネロはゼブルス家で雇うことになった」

「正気ですか?」


どう考えても訳アリだ、そんな人物を雇うことなど俺ならしない。


「もちろん正気だ。バアルならある程度察しているだろうけど、ネロはある理由を持っている」

「ただそれを話すことはできないわ」


両親は知っているようだが、俺には話さない。


「……いいでしょう、ネロの出自、事情は一切聞きません」

「よろしい」

「それで、ネロは第何軍に所属させるつもりですか?」

「そこなんだが、ネロは少々事情があるのでな、お前の護衛騎士にしようと思っているのだが」

「お断りです」


思わず食い気味で答える。


「仮にネロが父上の隠し子で罪滅ぼしで雇うつもりだったとしてもです」

「…あなた」

「いや!?いるわけないだろう!?」


何やら母上が父上を責め立てる。


おそらく昔に何かあったのだろう。


「俺の専属護衛となるのなら、俺の仕事の時にずっとそばにいることになります」

「うむ」

「……俺の仕事には書類仕事もあるんですよ、重要な書類を見られたらどうするんですか!!!」


能天気な父上に少しだけいら立ちを覚える。


「なるほど、ではネロは移動中の護衛のみを仕事にするとしたらどうだ」


そうなれば室内とかでの書類仕事を見られずに済むという。


「ふざけているんですか?」


外でも重要な情報のやり取りはあるに決まっている!!


「はっきり言いましょう、事情を知らない俺からすれば、ネロは信用できないんですよ」

「いや、何もそこまではっきりと」

「逆です、父上は甘すぎます!」


俺からしたらよくわからない存在を懐に入れるなんてごめんこうむりたい。


「ご子息様の考えもごもっともですね」


するとネロ自身が立ち上がった。


「それでしたら、提案があります」


俺達の視線がネロに集まる。


「私を小間使いと同様にお使いください」

「…続けろ」

「はい、私は声がかかるまではこの屋敷の護衛として過ごし、必要な際のみにお呼びください」

(…なるほど)


俺が動かしたいというときにだけ動ける自由な騎士で、用がない場合はこの屋敷を守護する護衛になるという。


「そうすれば秘密にしたいことなどからは私を遠ざけることができます」

「どうだバアル」

「……いいでしょう、ではそういう風にお願いします」

「うむ」

「それとこれも」


ドサッ


わきに抱えている書類総てを父上の机の上に置く。


「こ、これは?」

「俺の方に紛れ込んでいた書類です」

「いや!それならバアルがやるべきではないか!?」


父上は三十センチある書類の束に恐れおののく。


「確かに俺でも処理できそうではありましたが、それは俺の立ち位置でギリギリです、これはきちんと父上の方で処理してください」

「うむ………」


父上が気落ちしていく様を見て、すこし留飲が下がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ