………あ(怒)
それから半年、何事もなく普通の日常が過ぎていった。
「寒いな」
すっかり空気も冷え冬になっていた。
幸いこの地域には雪がそこまで降らないので道を歩くのに苦労は無い。
「……こたつが恋しいでござる」
横では護衛のリンが寒さに震えていた。
「低いテーブルに布を掛けたあれか?」
「そうでござる、さらに言えば中に豆炭がはいってとてもあったかいんでござる」
知っている。
「それで今回は何しにイドラ商会に?」
「何でも少しトラブルが起きたようでな」
俺は手紙を見せる。
中には早急に来てほしいと書かれていた。
「何があったんでござろう?」
「それを知るために今向かっている」
「バアル様、ようこそ、ようこそお越しくださいました」
出てきた総支配人は今にも泣きそうな顔で近寄ってくる。
「それでどうした?」
「実は…」
総支配人は豪華な手紙、書状と言ってもいいものを見せてくる。
「……なるほど」
簡潔に言うと国からの営業停止勧告だ。
「どうしましょうか、バアル様」
「とりあえず書類通り営業を止めろ、俺が状況を確認してくる」
総支配人に全店に営業停止させるように通達させる。
「リン、戻るぞ急用ができた」
俺はリンを連れて屋敷に戻る。
「父上、俺は王都に向かいます」
すぐさま執務室に入ると居眠りしている父上を叩き起こす。
「わは?!きゅ、急にどうした?!」
「俺のイドラ商会が国から営業停止にされそうなので急いで原因を突き詰めに行きます」
用件だけ簡潔に話し、すぐさま王都に行く準備をする。
「バアル殿、王都に行ったあとはどうするのだ?」
「事情を知っていそうな人に話を聞きに行く」
馬車を全速力で飛ばし、三日で王都に到着する。
「どちらへ向かいますか?」
「とりあえず、屋敷に向かってくれ」
王都にあるゼブルス邸に行き手紙をしたためる。
溶けたろうそくを手紙に垂らし、上からゼブルス家の家紋を刻む。
「これをエルド殿下に届けてくれ」
「かしこまりました」
それから二日後、俺たちは返事が合うたので直接王城に赴く。
「やぁ、待っていたよバアル」
案内された部屋にはすでにエルド殿下がいた。
「で、例の物は?」
エルド殿下は俺が持ってきたものが待ちきれないそうだ。
「ええ、準備はしてきていますよ、ですがその前にイドラ商会の営業停止について知っていることをお教え願いたい」
現物を出すその前に本題を聞く。
「ああ、あれか。簡単に言うと意見書を出したのに要望通り作ってもらえない貴族と教会、それと魔術師ギルドが圧力をかけてイドラ商会を営業停止にしたんだよ」
ほほぅ……
「王家もそんなことをしたくなかったんだが、あまりにも教会と貴族どもの圧力がひどくてね」
「なるほど、なるほど……では約束の魔道具『守護の腕輪』です」
俺は依頼されていた腕輪を殿下に渡す。
「それの使い方ですが」
使い方も教える。
「ただ腕に嵌めるだけ、これだけです」
後は勝手に魔力が吸引されて自動で発動してくれる
「それだけ?」
「ええ、それとオンにしたい場合は、赤い宝石が見えるように、オフにしたいときは青い宝石が見えるようにしてください」
もちろんオンオフ機能も付けているので安心だ。
「実演をしたいのですが……さすがにここで行うのは」
ということでエルド殿下と護衛と共に訓練場に来る。
「では実演してみましょう」
護衛の一人に魔道具を嵌めて、その護衛に矢を放つ。
すると兵士の近くに魔障壁が張られ矢を防ぐ。
「ほかにも剣も防ぐこともできますよ」
ということで護衛はまた的になる。
(……青ざめている)
俺は防いでくれるのを知っているが護衛はまだ信用できてないから怖いのだろう。
キィン
剣が振り下ろされると魔障壁が張られて防ぐ。
「このように剣でも矢でも防ぐことができます」
「……すごいな」
殿下はこの腕輪をいたくきにいったようだ。
「それでこの魔道具の料金についてなのですが」
「ああ、言い値で払う」
「ありがとうございます、端数は切り捨てて金貨20枚となります」
するとエルド殿下は固まる。
「少々高くないか?」
「残念ながらこれは特注品です、市販品よりも値がかなり張ることになるので」
市販品はどれだけ高くても金貨1枚もしないのだ。
だがこれは特注品それ相応の値段はする。
「……それもそうか」
納得していただいたようなので金銭を支払ってもらう。
「では俺はこれで……あ、あと言い忘れていましたが」
「なんだ?」
「危険な土地に行くなら1週間以内に行くことをお勧めします」
「なぜ?」
「その魔道具が使えるのはあと1週間のみとなりますので」




